真っ白な夢の中で気が付くと、いつも自分は玉座に座っていた。一応王なのだから当然なのかも知れない。まぁ王とか言ったって別に大層なものではなく、自分の中だけでの話だ。―つまり自分が王なのはあの子にとってのみで―あの子限定の話だ。随分と小国の王様だな、と思うけれど―あの子だけの王様というのは、それはそれで悪くない気もする。
「…いちご」
こちらに着くと当然彼も判るらしく、少女のようにうきうきと踵を鳴らして―とは言ってもいつも彼はフヨフヨと浮いて己の足で歩いたりはしないが―飼い主が帰宅した時の犬猫みたいに尻尾を振って(もちろん尻尾なんてものはついていないからただの例え話だが)近くまで来ると、そこらへんに掛かったビロードのカーテンの裾をきゅっと掴んでちらちらとこちらを見ている。呼ぶまでそれ以上寄って来ないのはこの子なりに王である自分に従っているつもりなのだろうか。―かわいいなぁと思う。
「…おいで」
そう呼ぶと彼はふわふわとこちらに向かって来た。そばに寄ってきたこの子を抱き上げて膝に乗せると、白い虚はとても嬉しそうに笑って自分の首に腕を回した。ふわふわした手触りのいい銀色の髪を撫でて、金色の瞳を縁取る睫毛にキスを落とす。そのまま小さな口唇を塞ぐと―口唇を開いて少しずつ奥に侵入した。
深いキスで少しずつ目がとろんとして来るのを見計らって―耳や首に少しずつキスを散らしていく。
「…あッ」
今までこんな経験など(知識も)あるはずもないこの子は最初はまるでなにをされているのか判っていないようだったけれど(まぁ多分今もあんまり良くは判っていないと思うけれど)、最近ではかわいい声を上げてくれる。人間が相手だったらとてもありえないような反応もこの子だったら妙に神聖でとても良かったけれど、やはりちゃんと感じてくれるのは嬉しい。
上の着物をはだけて小さな突起に舌を這わせたら、虚はビクンと身体を震わせた。誰に似たのか(―自分?)恐ろしく敏感なカラダで―この白い肌に所有の証を刻むのが一護は何よりも好きだった。
「我慢しないで、もっと声出していいんだぜ」
頭を撫でて耳元で囁くと白い虚はふるふると首を振った。恥ずかしいと言いたいようだ。
「照れ屋さんだな。まぁそのうちイヤでも出るだろうけど」
ゆっくり身体を愛撫しながら、高まったソコにも手を伸ばして先端を指の腹でくるくると撫でた。
「ホラ、おまえの蜜でトロトロになってる」
「―ぁ、…さわんな、いで…」
「触ってほしいだろ?もっと…」
「―ッ!」
こういう経験の少ないこの子はまだ我慢だとかコントロールだとか全く出来なくて、すぐにイかせることが出来る。
「イき方もかわいいな」
「はっ…も…へんなことゆわないで…」
「まぁおまえはこっちの方が好きだもんな」
後ろの蕾を撫でてやりながら耳元で言ってやると虚は真っ白な頬を染めた。色が白いのでとにかく赤い色がこのうえなく引き立つ。桃色の頬も、泣きはらした瞳も、赫いキスの痕も、ちいさな蕾も―全部。
最初は当然とても泣かせてしまったのだが―あの時のうさぎみたいな目もそれはそれは可愛かったと思っている自分はひどい男だろうか。
「もっ…もう…イチイチへんなことゆわないでってば!」
「反抗的なお姫様だな」
ちょっと笑って蕾を開いてやると虚はビクッとした。
「い、ちご…まって、」
「大丈夫、ゆっくりするから…」
キスをしながらゆっくりと侵入する準備をする。身体全体を愛撫して溢れた蜜で慣らして―‥十分受け入れられるように。
「や、あッ―」
いわゆる騎乗位というやつなのだから多少キツくても重力のおかげで―この子が意識せず力を抜いた瞬間に一気に奥まで辿り着くことが出来る。
―騎馬とは良く言ったものだ、と少しおかしい。まぁ乗っているのはこの子の方だが。
「あッ―!いち、ごッ…ぉ…」
通路を一気に貫いた瞬間に名前を呼んで必死でしがみつかれるのが可愛くて、額や瞼にキスを落とした。
「…大丈夫?」
「ッ…」
はぁ、と息をして虚は涙目で頷いたけれど、しんどそうだったので頭を撫でながら落ち着くまで待ってやる。落ち着いたら少しずつ揺らしてやるのだが―
「もうめんどくさいな(笑)」
一旦結合を解いてしまうと、息の上がった虚を抱き上げた。虚が「せっかく入ったのに!」という目で睨んだけれど気にしない。
重いカーテンを開くと今までの自分の人生ではとてもご縁のなかったゴージャスなベッドがある。ここは王である自分の部屋なのか、昔の王様のそれのようなやたらと豪華なものが取り揃えてあり―自分には不似合いな気がして違和感を感じないでもないが―大きなベッドはこの子を連れ込むには丁度いいので割と気に入っていた。
ちなみに隣はこの子の部屋になっているようで、こちらは砂糖菓子みたいなパステルカラーの―少女のそれのような小さい部屋になっている。ベッドもちんまりと小さくて―この子にはちょうどいいサイズではあるのだが、いつでもこちらの大きなベッドを使っていいよと言っても、この虚は自分がこの世界にいる時にしかここには立ち入らない。
ここでもきっと自分の忠義に忠実なつもりなのだ、きっと。―多少基準がヘンだが、彼なりに仕えているつもりなのだろう。
「…かわいいな、おまえは」
「いちご…」
大きなベッドに下ろしてやって舐めるように上から見つめてやると虚は恥ずかしそうに瞳を逸らした。―いい反応だ。
まぁ全部自分が教えたのだから当然だ。この子は自分のものなのだから、多少好み通りに育てたっていいだろう。
あの玉座で抱くのもロマンがあって確かにいいのだけれど―やっぱり自分は普通の男子高校生なのでこうしてベッドで好きなように抱いて啼かせたいと思ってしまう。
「俺のなかにこんなにカワイイ部分があったなんてな(笑)」
「―?」
「ああ、いいよわかんなくて」
金の瞳がまるでわからない、という色をしていたのでまた頭を撫でて言い聞かせた。
「おまえはそのまんまでいて」
「―そのまま…?」
「まぁ全然変わるなとは言わねーからさ。そのままのおまえが好きなんだ」
「すき・・・・・」
「これもわかんなくていいよ」
指を絡めて軽く額にキスをしてやると、白い虚は上目遣いでチラリと自分を見た。
「いちご…つづき、は…?」
「悪い悪い、いまシテやるから。中途半端なとこだったもんな、ごめんな」
責任を取るとばかりに抱き締めて―果物のような口唇をペロリと舐めてから軽くキスをした。
「…うん。おまえをこんなやらしいカラダにした責任は取るよ」
「せきにん??(←意味わからない)」
「ああ。―そのうち絶対、こっから出してやるから」
―出してやるから。
*
「…こっから出たら、みんな殺っていいの?」
終わった後で抱いて眠ろうとしていたら、白い虚にそんなことを聞かれた。こういうところは相変わらずだなぁと苦笑する。
「残念ながらそれはだめ。」
「じゃあ出てもつまんない…」
「そう言うなよ。デートとか、色々出来るんだから」
「でーと?(←意味わからない)」
「どっちにしろ、俺の肉体で出たんじゃ何のイミもないから…少なくとも俺とは別人ってことになるし、あんな殺戮霊力持って出れるかわかんないぜ?」
「えー‥じゃあ俺いちごじゃなくなっちゃうの?…それはちょっとヤダ」
そう言われると、こちらもちょっと嬉しい。この子は自分の一部であることにそれなりに誇りを持っていてくれるんだなぁ、と感じる。
「気持ちはわかるけど、おまえも朝目ェ覚めた時に俺があっちに帰っちゃってたらいやだろ?ここから出ればずっと一緒にいれるから。」
「ずっと…?」
「そうずっと。まぁどっちにしても先の話だよ。当分、王として俺の中だけに閉じ込めて独占しとくから。おまえは俺だけのものだからな」
「そーだよ…俺はいちごのためだけに生まれたいちごのためだけのチカラだよ…?」
「微妙にそーゆうイミじゃねーんだけど、まぁ今はそれでいいや(笑)」
抱き締めてキスをして、またそっと誓う。
―そういつかきっと、どんなことをしてでも。
***