「…」



 何か言ってやろうと思ったが、このショーの前にそんなことは余りにも無意味なことである気がしたのでやめた。




「ッあ―‥!!」




 どこからそんな声が出るのか、とかそんな月並みな疑問が、海馬の頭の中をグルグルと回っては、声になることもなく消えてゆく。




「ホラ、海馬がお前のココを見てるぜ…?」


 遊戯は、AVのようなシチュエーションに完全に酔っているのか、それとも相手を苛めて遊んでいるのか、はたまた単に見られるのが趣味なのかは判らないが、海馬にチラリと視線を送ると、見せびらかすみたいに相手の乳首をきゅっと摘んだ。
 相手は本気で感じているのか、それとも付き合ってやっているのか、むしろ単にMなのかは判らないが、演技としか思えないような甲高い声を出していちいち大袈裟に喘いでは、時折薄ら笑いを浮かべてこちらを見ている。





(…)




 このトチ狂ったショーはこともあろうか、海馬の通う高校の視聴覚室で行われていた。












 残酷なショータイム







 そもそも、たまたま来た学校の、たまたま出た授業が六限目で、その六限目がたまたま自習だったことが全ての元凶だった。
 六限目だったこともあり、ほとんどの生徒はそのまま帰るか部活などに行ってしまった結果、自習中にビデオが上演されるはずだった視聴覚室はもぬけのカラ、そのビデオデッキに面白がって城之内がAVを突っ込み、上演会が始まった。
 突っ込んだ張本人である城之内は、早々にバイトがあるなどと言って帰ってしまい、なぜかこの部屋には3人だけが残った。自分と、遊戯と、獏良了という―もっとも、今は裏の方であるようだが―色の白い優男。
 海馬がここを出て行かなかったのは、当然だがAVを見たかったとかいうわけではなく、その遊戯と獏良―‥もといバクラが脈絡もなく行為をはじめたからだ。
 いや、仮にもAVを見ていたのだから脈絡はあるのかも知れない。どっちでもいいけれど。



 ―とっくに知っていたことではあるが。
 彼らは敵対しているくせに身体の関係があり、放課後の教室や屋上なんかでヒマさえあればやっているらしい。
 もっともこれは噂話であり本当かどうかは不明だったわけだが、今日ここでめでたく真実だったと証明されたわけだ。
 それにしても、バカげたことだと海馬は思った。お互い寝首でも掻いてやるつもりなのか、単にスリルが欲しいのか、…少なくとも愛があるようには見えないが。




「王サ、マ…社長が見て、る…」



 掠れた声でバクラが遊戯の言ったことを繰り返す。くちゅっと濡れた音が音響設備の整った視聴覚室に響いた。
 遊戯は、相手の口唇の端を伝うどちらのものかも判らない液体を舐めとって、そのまま手荒く口唇を重ねた。彼らしく自分の好きなように蹂躙し貪っている感じだったが、バクラはそれが悦いのか頬を染めた。閉じた瞳の長い睫毛が整った顔を彩る。―確かに顔だけは、いかにも遊戯が好きそうな美人だった。
 正直激しく気色悪かったが、今更席を立つにも立てないというか何というか…海馬はとりあえず見ておくかという気になっていた。1円の得にもならないのだろうけれど。



「見てるからイイんだろう…?」


 遊戯は、お前の趣味に合わせてやったんだぜ、とかありがちなことを恩着せがましく言って、海馬を見てニヤリと笑った。見るからに、むしろ彼の趣味でもありそうな感じだった。




「どうだ海馬、何ならお前も参加しないか?」


 更に遊戯は意地の悪い笑みを浮かべてそんなことを言った。



「エー?」


 バクラが不満げな声を漏らした。


「オレ様王サマ以外にツッコまれるのやだなー」


 誰も貴様に突っ込むなどとは言っていない、と海馬はぼんやり思った。かと言って遊戯に突っ込むだとか、自分が彼らに突っ込まれるのもどうかという感じだった。
 海馬が何も言わないので、遊戯は肩をすくめた。じゃあ何の為に見てるか疑問だぜ、なとと言い出しそうな雰囲気だったので海馬は仕方なく口を開いた。



「…お邪魔なら去るが?」


「まさか。こんな楽しいショーはまたとないからな。それにしてもAVはともかく、コレでも眉毛ひとつ動かさないとは流石だぜ、海馬」


 遊戯は楽しそうに笑った。…本当に楽しそうだった。



「それに比べてこいつは俗っぽすぎていけないぜ。あんなAVでも興奮して強請るからな…。―ホラ」



 ソコは、遊戯の指をあっさり2本飲み込んで何となく物足りなそう感じだった。



「うるせぇ、な…誰のせいだよ…。」


 バクラは息を切らせて微かに笑った。そして局部を直視する海馬を見て、余裕すら感じられるほどニヤニヤと笑った。―彼も十分楽しそうであった。




「アンタも…こんなもんジロジロ見ンなよな…勃たなくなっても知らねえぜ…?…ァ」


「欲しくて欲しくてしょうがないくせに他の男に目移りとはしょうがないやつだな…ホラ、ちゃんと欲しいって言えよ」




 遊戯はAV男優か低俗なポルノ小説のようなことをのたまい、突っ込んだ指をもっと奥まで埋めた。AVに影響されすぎだろう、と海馬は冷静に思ったが、もしも彼らが本当に三千年前の亡霊ならAVなんて下らない娯楽に食いつくのも、セックスに夢中になるのも仕方がないような気もした。
 むしろふたりともそれなりに綺麗な顔であるから、今この情事を撮影してビデオにしたら高く売れるような気がする。きっと気のせいではない。



「さぁ…どうして欲しいんだ?」

「…」

「言わないと指だけでイっちまうかもな…」



 海馬が手元に録画出来るものがないのを後悔している間に、彼らのAVもどきは佳境にさしかかっていた。バクラはチッ、と小さく舌打ちしたが観念したように口を開く。



「…ッ…れればいいだろ、ばァーか!」


「それが人にモノを頼む態度か?」


「…入れて下さいませ」


 バクラはわざと仰々しく言うとそっぽを向いた。遊戯はその顎を掴んで強引に振り向かせると口唇を塞ぐ。―と同時にさっきまで指が入っていた部分に自身を一気に埋めた。
 バクラは大袈裟に身体を反らせて凄い声を出した。海馬は耳を塞ぎたくなったがむしろもはやどうでもいい気もした。




「ホラ…お前が愛してるのは誰だ?」


「…ぅ、サマ…」


「聞こえないぜ?もう一回」


「王、サマだって…ば!」


「…じゃあ、お前が殺したいほど憎いのは誰だ?」


「ひつこ、いぜ…それもアンタ…」


「良く出来ました…」




 彼らの言葉遊びにはもううんざりだった。(むしろ調教のように聞こえないこともないが)
 とりあえずイくところだけでも撮影しようかと、海馬は制服のポケットを漁って携帯電話を探した―‥が一歩遅かった。
 遊戯は指先を伝う精液を舐めると、目を細めて酷く満足げに呟いた。





「…いい返事だ」



「お前はオレが殺してやるよ…」









 ***




 終わった後何が始まるのか結構楽しみにしていた海馬だったが、バクラはシャツ一枚羽織っただけの状態でちょっとだけ寝かせて、とか言って寝てしまった。
 遊戯は捨てて行くわけでもなく、黙って隣に座って煙草に火をつけた。(確かにこんな状態で捨てて行って万が一にも誰か入って来たら大変なことになるが)




「貴様はコレを調教でもしてるのか…?」


「まさか。バカバカしい」



 海馬が一応聞いてみると遊戯はバカにしたように答えた。



「あぁ…アレのこと?アレはこいつの為だぜ?」


「?」


「オレが誰だか忘れないように。敵だって忘れたら困るだろ?何だか知らねーが、随分恨まれてるみたいだからな」



 遊戯は妙に自嘲的に薄く笑った。
 そう言えば、すっかり忘れていたけれど彼らのこの身体は両方とも借り物だったような気がする。無駄に懐の広そうな彼らの宿主は、こんな些細なことは気にしないのだろうか。どうでもいいけれど。



「…海馬、まだいんの?あとはオレたち、家帰ってもっかいやってその後は寝るだけだぜ?」


「…誰もそんなことは聞いていない」


「聞きたそうにしてたくせに」


「…」


「なんでこいつを抱くのか気になる?それとも、お前もこうして欲しかったりしてな?」


「…」




 遊戯はふぅっと白い煙を吐き出すと、視線を海馬に向けた。



「…オレたち、セックスしかやることがないんだよ」


「…」


「朝も昼も晩も、追われてるみたいにやってるぜ。ここ最近ずぅーっとな」


「…それならそれで構わんが、もう少しマシな相手を選んだらどうだ?」




 海馬の言葉に、遊戯はケラケラと笑った。妙にわざとらしい態度で、海馬は不快になった。




「へぇ?例えばお前とか?」


「…いい加減にしろ」


「そりゃあ愛してなければとっくにそうしてるぜ。…さすがに最近、ちょっとしんどいしな」




 海馬はほぉ、とか、ふーん、とかそういうような相槌を打ちそうになって、頭の中でその言葉をもう一度繰り返してから、ようやく意味が判った途端に驚いて振り返った。
 自分の目が1.5倍くらいの大きさに見開かれているのを感じながら遊戯を凝視していると、彼は急にしおらしい態度で自分を真っ直ぐに見つめた。






「…意外か?」



 海馬は言葉もなく、素直にコクンと縦に頷いた。遊戯はやっぱりそうか、とか言って、バクラの長い銀色の髪の毛を撫でた。猫を撫でるみたいな仕草だった。
 そして、本人にはいちども言ったことないけどな、とかそんなことを言うと切なげな表情をして微笑んだ。



「…オレに言うくらいなら本人に言ってやったらどうだ?」



 海馬は顎でバクラを指した。




「…言ってもいいけど、こいつ泣くだろうからナァ。オレと闘る時躊躇されても困るし」





 ―彼に躊躇されては、自分も躊躇してしまう。自らのこの手で、止めを刺すことを。




 遊戯はそんな内容のことを言った。
 静まり返った部屋の中央のテレビから、流しっぱなしになっていたAVの喘ぎ声だけが聞こえて来る。酷く耳障りなその声は先ほどのバクラにそっくりで、海馬はなんだか途端に嫌になった。こんな茶番劇に付き合うんじゃなかったと心から思ったことは言うまでもない。

 自分は元々愛も恋も知らないし、そんなもの知りたくもなかったが、宿敵である彼の切なげな表情を見ていたら、それもあながち間違ってはいなかったと思った。


 ―そんなに残酷なものが愛だというのなら、一生知りたくなど無い。







バは演技です。王サマも演技です。(どうなの)
つうか正直演技エロが書きたかった。(何そのジャンル)演技エロなら何でも良かった。今は反省して(以下略)
でもこれはエロじゃあないですよね。まぁ基本的に私はエロエロは書かない人なので。
しかしわたしはいつまで海馬を絡ませる気なんでしょうかね…?でも海馬の前でヤってるとこが書きたかった。(どうなの)(2回目)
最初はぜんぜん違う話だったんですが(バと王サマが面白がって海馬にAV見せて、海馬がちっとも反応しなくって結局海馬の前でやっちゃうみたいな)、
何か私海馬が日常に入り込んで来る話って妙に嫌いなので(嫌いなんかい!)強引に学校にしたら何が言いたいのか良く判らない話になってしまったw
しかも暗いのが面白いw(面白くない)今回はマジラブ抜きで書けそうだ!って喜んでたら、結局最後はマジラブ…_| ̄|○
つか王サマが
間接的とはいえあいしてるとか言ってる文章ってもしかして初!?w
しかしタイトルも変だけど、内容はもっと変ですいません。変な話…つか後味悪いw でも後味悪い話ってたまに書きたくなるw
とりあえずこれはかなり末期の頃というイメージですw
エッチでもしてないと余計なこと考えてしまうので(脳内設定)、後半になればなるほど王バクってただやってるだけになると思うw(…)
つか自分の文章があまりに稚拙なので、久々(すぎ)に段落わけをやってみたんですが、なんかもはや段落わけのルールとか忘れてるw
060206

□追記
案の定段落わけ間違ってたんで直しました…やっぱりかぎかっこの前は1マス空けないんですねw(アホ丸出し)
いや、迷ったんだけどさw(言いわけはいいから)原稿用紙じゃないと勝手が判らん…w
060207


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