いったいどこで捨ててきたの、俺の許可もなく。


 誰にあげたの、俺じゃないとダメなくせに。


 ―そのカラダの純潔を。











 ―はじめてじゃないことくらいわかる。
 そうでないとこうも簡単に自分で指を入れて解したり、男性器を口に入れたり出来るわけがない。

 ―ヘタクソ、とか言ってすぐやめさせたのは彼の愛撫で達するなんて嫌だったからだ。


(…イライラする)



 ―俺じゃないとダメなくせに。
 俺が気付いてないとでも思ってるの?



 さすがに殴ったりはしなかったけれど、かなり腹が立った。
 当時は付き合っていたわけでもないし、好きだと言うつもりも無ければ認めるつもりもなかったので、とりあえず無関心を装っていたけれど。


 だから今でも思う。
 もしこの時―殴ってでも問い詰めて、俺の許可もなくどこの誰と寝たんだ、俺のモノのくせにと罵っていたら―少なくとも彼が自分を傷つけることはなかったんじゃないかと…息が苦しくなるくらい今でも後悔してる。
 たとえ一歩遅くても組み敷いて犯して奪い尽くしてしまえば―‥





『…いちご、』


 ―癪に触る高い声。
 まだ強気な仮面が剥がれる前だった虚が自分の上で鮮やかに嘲笑う。


『嫌とか言っといてなんで俺で勃つの?』


 ―好きだから。
 …なんて口に出す気は勿論なかったし、一生言わないつもりだった。


 こんな形で抱かれて、勝手に入れて、そんなんでおまえは気持ちいいの?



 それでも、こんなものでもこれは記念すべき自分たちの初体験だとふと思って、気まぐれに顔を引き寄せて口唇を塞いだ。
 いきなりキスされた虚はびっくりしたのか―どう見てもどうしていいのか判らない、という顔になって―戸惑ったように金色の瞳で自分を見返した。





 そんなにきれいな―ぞっとするくらい罪のない目をしているくせに。


 本当にどこに捨ててきたの、誰にあげたの、そのカラダの純潔を。


 ―おまえは俺なのに。ぜんぶ俺なのに。


 その白い肌も、黒い爪も、金色の瞳も―俺からできてるのに。





 ‥―俺のものなのに。




























「ぃちご…」


 真夜中に小さな声で起こされて、重い瞼をあけた。


「どうした…?」

「…ん、わかんない…」


 自分を見上げる金色の瞳には微かに涙が浮かんで―知ってる、こういう時はなにか悪い夢を見た時だ。


「―泣くなよ、大丈夫だから。ほら、もっと寄って」

「うん…」


 震える指を絡めてぎゅっと握り締める。
 腕に余る小さなカラダを寝苦しいくらいに抱き締めて。
 ―あの頃得た教訓だけど、この虚にはここまでした方が効果があるのだ。



「ずっと俺が護ってやるから―‥」


 相手が寝ぼけているから何だって言える。


 どんなに深くキスをしてきつく抱き締めて―‥どんなに愛しても、こんなことで許されるなんて思ってない。
 でも彼を傷つけた罪の代価として愛してるわけじゃないから。
 階段を幾つも踏み外してそれでもこうして愛し合ったことは―あんなに泣かせて傷つけて、それでもこうして寄り添って眠る穏やかな夜が訪れていることは、涙が出るくらい嬉しいことだった。
 許されたわけじゃないけど、こうすることを許してくれていることは感謝してる。


 ―本当だよ。




























『アーロニーロだよ。』


 だいぶ顔色の良くなった虚はけろっとして答えた。
 ケガも体調も精神的にも落ち着いてきたので最初に寝た時から気になっていたことを聞いてみたのだ。
 ―あのときから…ごく最近までの彼の恋人のこと。


 自分の知らない間に虚が表に出た形跡はないし、この自分だけの世界に入って来れるのは虚の類だけだから、可能性としては破面の類か仮面の軍勢か…そうでなければ斬月か―と思ってはいたのだが。

(とりあえず斬月のオッサンじゃなくて良かった…;;)



『別に付き合ってたわけじゃねーけどな。…いや今思うと付き合ってたよーな気もするけど』

『アーロニーロって…』

『第9十刃だったかなぁ…朽木ルキアが殺ったやつだよ。』

『おまえそいつのこと好きだったの?』

『なわけないじゃん。俺がアイシテルのはいちごだけだよ。まぁ別にキライってわけでもなかったけど…』

『なんで好きでもないやつと付き合うんだよ!!』

『…だってあいつ、いちごに似てたんだもの。』

『―!』


 虚は真顔で言った。
 確かにルキアが言っていた、海燕の肉体を奪った十刃と戦って―‥この手でトドメを刺したって。
 海燕を見たことはないけれど、自分に似ているというのは死神たちの間では有名な話で―この自分でも知っていることだった。


 虚の真っ直ぐな瞳に見つめられて―自分は本気でヒドい男だと思った。



『…あと、いちごに抱かれたかったんだもん』

『…なんでそれがそいつと付き合う理由になるわけ?』

『だっていちご、ほっといたら俺に手なんか絶対出さなかったでしょ。現に最初なんかなぁんにもしなかったし。だったら俺が誘うしかないじゃん。でも経験なかったらリード出来ないし、誘う以前の問題だろ?』

『…俺とヤるためだけに経験したかったってこと?』

『結果的にはそうなるね』


 虚はなんでもないことみたいに言ったけれど、さすがにショックだった。


 彼にとって自分は神のようにすべてで―こんなにも全身全霊で愛されていることくらいずっと…初めて逢ったときから知っていたのに。


 …どうして最初から好きだって言って抱き締めてやれなかったんだろう。




『…なんでいちごが泣くの?』

『―おまえが生きてて良かった』

『…』

『まだ俺が償う余地があって…』

 ぱし、と虚は自分の手をはねのけた。


『…償いでアイされたって嬉しくない』

『おまえを愛してるっていう話と、償うって話は別だよ』

『―どうちがうの。同情じゃないって言うんなら証拠見せて』


 今の今まで拒絶し続けていたせいで自分を信じる気なんか最初から微塵もない虚は感情のない冷たい瞳で自分を見返した。
 ―あんなに変になるくらい抱いて気が狂う寸前まで啼かせても、こちらの気持ちはまるで伝わっていないらしい。


『…』


 でも同時に―それ以上の激しい嫉妬に襲われて、反射的に虚の右腕を思いっきり引き寄せて抱きすくめると―顎を捕えて激しくキスをした。


『ッ―‥いちごはすぐそうやってごまかすッ―』

『…アーロニーロってやつ』

『―?』

『俺が殺してやれば良かった』


 今までどんな敵と戦っても、必要に駆られてそうしていただけで相手を殺してやりたいなんて思ったことはいちども無かった。
 でもその時は本気で思った―その逢ったこともない十刃を、自分のこの手にかけてやりたかったって。





 ―そいつが、おれのこの子を奪った男。
 きれいなこの子のカラダを汚した最初の男。





『―!』

『おまえの処女を奪ったやつとかマジで許せない…』


 泣きながら言ったので、さすがに(違う意味で)迫力があったらしい。
 押し倒してまた奪うみたいにキスをして、虚の着物を破る勢いで毟り取った。―これではDVだ。



『証拠が見たいってんなら、生き残ってるおまえの相手を全員殺してやろうか?五体を引き裂いてアトカタも残らないよーに…』

『…もういい!!』


 自分でも病んでいるなぁと思ったくらいなのだから、虚の方はぼろぼろ泣いた。
 どんなに泣かせても罪悪感よりも、溢れ出す欲望とこの気持ちの方を判ってほしいと―あの頃は本気で思っていた。



『―ごめんね。どんなに泣かせても好きだから。おまえがどんなに泣いてももう離さないから。』


 涙を零す瞳を強引に仰がせて嫌がらせみたいに無理矢理言い聞かせた。
 そんなことを言ったらますますこの虚の涙が止まらなくなることくらい知っているのに。


『…いちごなんか死んじゃえ』

『いーよ』

『…』

『―おまえとこのまま死んでもいいよ』

『…黙れ』

『おまえがそれで俺のこと信じられるなら‥一緒に死んでもいい』


 ―恐ろしいことにほとんど本気で言っていた。


『いちごはッ―普段は前向きなくせにこーゆーことがあるとスグそんなこと言って―』


 虚はヒステリックにわんわん泣いてもうイヤだ、とか疲れ切ったみたいに言った。
 病み上がりの相手を泣かせて困らせてどうしようもないけれど―それでも自分を偽って気持ちを押し殺していた頃よりはしあわせだとすら思っていた。





 ―だっておまえは俺だから。
 そのきれいなカラダのすべては俺からできてるんだから。


 だったら、おまえのその銀の髪や細い指や薄い口唇から―そのカラダの内側の膜のその奥に至るまでぜんぶおれのもので―‥そのカラダも、ココロの奥までぜんぶ―突き破る権利は自分だけにあるはずなのだ。






























「いちご!!」


 再び揺り起こされて、目を開けた。
 金色の大きな瞳が自分を覗き込んでいる。


「…なに?今度はどーしたの…?便所??」

「バカ!!!なにじゃないよ、すごくうなされてるから心配になって…」

「…そう?」


 ほっとけばいいのにわざわざ起こすところが彼らしいなぁと思った。


「奇遇だな、おまえもさっきうなされてたぜ?(何時間前かわかんねーけど)」

「―え、全然覚えてないけど」

「うん、俺も覚えてない。ほら布団入れよ、素っ裸なんだから風邪ひくぞ」


 ぐいと腕を引き寄せて無理矢理布団の中に入れて抱き締めた。



「…ふたりしてうなされてたんだったら寝不足だよな。明日の朝(もう今日)は遅くまで寝てよーぜ?」

「いいけど、オナカすいたら起きるから」

「なに食べたいの?」

「…たまごごはん」

「OK」


 かわいいリクエストだなぁ、と眠そうな瞼にキスをして―もういちど目を閉じた。

















 これだけ時が経って愛を紡いで夜を重ねても


 まだおまえは頭からつま先まで―ぜんぶおれのものだと思っている自分は傲慢だろうか。



 ―ねぇ?

 そのココロの純潔だけは俺が貰ったって―‥そう思っててもいいんだよな?









↓あとがきは反転仕様↓(むしろ読まないことを推奨)
これはひどいwwwこれはもうだめだww(私が)
なんかもうだんだん何を書いても動じなくなってきました\(^o^)/慣れってオソロシイ!!(…)
しかも判りにくい不親切仕様ww過去バナと現在が混ざってすいません_| ̄|○
あっ痛い石を投げないで(ノД`)(いや投げry)
これもずっと書きたかった初体験話なのだがwww
内なる虚が処女じゃないってことにこんだけキレてる黒崎さんって一体www
男って処女にこだわる生き物ではないはずなのだがwww

っていうかむしろ処女にこだわるのは私なんです、すいませんwww(…)

あっ痛い石をry
俺は処女が好きすぎるwww\(^o^)/
まぁでも、男同士だったら処女にこだわって欲しいような気もしなくもないような。。。。
つか私は黒崎さんは(いい意味で)普通で健康的で後ろ暗いところがなくて強くてかっこよくて(中略)優しい男の子〜(はぁと)
…っていう夢を(すごく)見てるにも関わらず、こんな(すごく)アブない子に書いてしまうとかもうね…_| ̄|○
つまり黒崎さんへのドリームより黒白萌えが勝ったということなのか。。。(そのへんはどうでもいい)(※サリンさんは夢女ではありません)
こんだけイっちゃってたらそりゃあ内なる虚も泣くわ。(開き直ったーーΣ(´∀` ))
とりあえず処女って単語の入ったタイトルを使いたかったのでしやわせです\(^o^)/(…)
ただ、
月花処女にしたいのをやっとの思いで堪えました\(^o^)/
まだ…まだ使わないんだから!!姫はさいごのさいごまで使わないんだから!!(いつかは使うつもりなのかよ)
つーか膜はねえよ・・・・・・・・・(生物学的にも)って感じだけどもののたとえなので気にしないでNE★(…)
あの子ならもしかしたらあるかも知れないし。(無いよ!!!Σ(´∀` ))

080914


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