―欲しいものがあるのでしょう?―

―己の手を血で汚して、誰を犠牲にして、どんな手を使っても―

―欲しいものがあるのでしょう?―






雨が降る

雨が降る

血の雨が降る



手を伸ばしてその雨を受けているのも自分だけれど
その雨を降らせたのも紛れもなく自分。



―だって 神サマが囁くから。


血の雨を降らせろ、って。
それがお前の使命だ、って。






『―切原さん』



その足を止めたのは、彼が呼ぶから。
そっちは駄目だと、彼が手を引くから。
傷つける為の武器も棘も、ぜんぶ自分から捨ててしまった。








修羅雪姫2






瞳を開けると見慣れた風景が見えた。
白い四角い天井、真ん中の照明、ベッドの上で寝息を立てる猫。
―恋人の部屋だ。



「…オハヨ」


ふと隣の越前と目が合うと、素っ気ない朝の挨拶が降りてきた。
昨夜の行為なんかまるで無かったかのように。―彼はいつもそう。



「…うん」


こちらも寝起きが悪いので自分の横にいる相手に挨拶というよりはただの返事を返す。



「…懐かしい夢見た」
「ふぅん」

独り言のように口にすると、越前は何の興味もないような返事をした。
切原が再び眠気に襲われてぼんやりと瞳を閉じると、越前の手が伸びてきて布団を捲り上げた。


「…ちょっと。そこまで言ったなら話しなよ。」

「…話してもいいけど、信じないと思うけど」

「信じる?夢の話でしょ?」


くす、と切原は笑った。



「…越前はさ、神サマの声を聞いたことある?」

「……は?」


越前は大きな瞳を限界まで見開いた。


「…何それ、ギャグ?」

こんなギャグがあるかよ、と切原は笑った。



「…無いよ。」

寝惚けてるな、と思いながらも真面目に返事を返す。
自分は抽象的なものは信じないし、カタチのないものの声など聞こえたこともない。

―仮に聞こえたとしても、それは自分の声だ。
昇り詰める為の強力な自己暗示。




「…俺はあるよ」


切原はぼんやりと言った。



「試合に夢中になるとさ、必ず聞こえンの。」


「血を見せろ、血の雨を降らせろ、って。それがお前の使命だ、って。」


「俺は今までずっと―‥その声に導かれてここまで来たんだ」




越前は何と答えるのだろう、と切原は恋人の顔をじっと見つめた。
大袈裟かも知れないけれど、嘘ではない。
幸村でも真田でも他の誰でもなくて―今までの自分にとっての道標はあの声だけだった。


(…困らせたみたいだな)

越前が黙っているので、切原はふわりと笑った。
普段はあまり見せない笑い方に、相当眠いんだな、と越前は思わず関係のないことを思った。





「…でも、もう聞こえない」


切原は枕を抱きかかえて、ふと真面目な顔になった。


「どうしてだと思う?」


越前はさっぱり検討もつかなかったので、首をすくめて降参、とポーズを取った。
切原はまたふわりと笑った。
ゾクリ、と越前の背中に何かが走る。





「―だって、お前が呼ぶから。」



切原は酷く真面目な顔で言った。




「お前が呼ぶから―‥神サマの声はもう聞こえない」




そこまで言い切ってしまうと、重くて重くて仕方がなかった瞼をまた閉じる。
いちばんのヒミツを告白してしまって、胸がすうっと軽くなるのが判った。
次に目が覚めたら、もうこんなこと忘れてしまっているだろう。

瞼は重力に忠実に塞がれ、長い睫毛がそれを覆う。
それからほどなくして、微かな寝息が聞こえてきた。
越前はその様子をただ黙って見ていたが、完全に切原が眠っているのを確認してから口唇を開く。




「…アンタ、何か勘違いしてるみたいだけど」

「…俺は別に、あのままのアンタを否定したりなんかしてない」

「だからそれはありえないよ―‥」




眠っている彼の髪の毛に指を絡める。
心底気持ち良さそうに眠るその頬に軽くキスをした。




「…俺は、ただアンタに触れたかっただけで」

「アンタを救いたいなんて大それたこと、考えてたわけじゃない」

「…アンタは自分の声に惑わされてただけで、自分の手でそれを断ち切ったんだ」





いつもいつだって、彼が笑うと気が触れそうな気持ちになった。
今だって何だか涙が出てきそうだけれど、嬉しいのか悲しいのか切ないのかすらも判らない。



神サマの声なんか聞こえない。いちども聞こえたことなんかない。
―俺に響くのはアンタの声だけだよ。







2と言っても1の方となんら関係はありませんwってかまず2ってのがありえない
えーと…。
これ、元は城海ですΣd(゚∀` )(えーーーーーーー!?)
城海の時最後に出そうと思ってた「神サマの声」っていう本のネタw
結局この本は出なくて、タイトルとテーマだけ引っこ抜いてサイゼロで本を出したことはあるんですが(全然違う話だけど)、
これはもうそっくりそのまま、当時書こうと思ってた城海をそのままリョ赤にしただけw(オイ)
電波度は流石にかなり低くなってますがw
まんまリョ赤でイケるよなーって前から思ってて、何回か書こうとしたんですが、
元があまりにもアレな話だったので(海馬でギリ、みたいなw)なかなかうまくリョ赤っぽくならなくて挫折してたんですよ。
でも昨日書いてみたら風邪で頭がおかしかったせいか結構リョ赤っぽくなったんじゃねーの?(@あっくん)と思ったのでUPしてみましたw
つーか元が城海とか台無しな話をしてすみませんw(お前は城海をなんだと)
感想とかあればうれしいですw

□追記
城海をまんま流用したリョ赤。
しかもこれ城海の時はわずか一場面にすぎなかったんだよなーw
とりあえず赤也で書くよか海馬で書いた方が映えたのは間違いないw(オイ)
ある意味もういちどチャレンジしたいテーマではある。(海馬で書くかはおいておいて)
何か城海の時は私も何度も何度もこんな声が聞こえたような気がするけど(病気!病気!!)、
ホントあれは自分の声だったんだろうなーと思いますw(それで終わりかよ!)
061008



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