見慣れたいつもの悪夢の中で、必死で逃げる自分の姿が見える。
いつものことだ。
頭ではそう判っているのに、夢の中の自分は泣きながら全力で逃げている。



『―バクラ』


そして
この夢の諸悪の根源である筈の人物の声が聞こえる。
これもいつものこと。
するりと白い腕が伸びて来て、とても強い力で自分の手を引いてくれる。
余りにも癪だから、一度だって話したことなんてなかった。



そうして目を開けると、見慣れた顔がうっすらと見えた。
いつも通りだ、とぼんやりと思う。
―本当はぜんぜん、いつも通りなんかじゃないのに。




「おはよう、お姫様」









Sleeping beauty.






「…やっぱり起きたな」


遊戯(?)は自分の顔を覗き込んで少し笑った。



「????」


見慣れた顔なのに妙な違和感を感じて起き上がる。
カラダが鉛のように重い。
まるで何ヶ月も何年も、ずっと眠っていたようだ。


「―ッ」

「あ、無理すんなよ」


フラリと倒れかけたところを遊戯(?)が軽々と支える。


(何、コレ…)




重い腕を持ち上げて、彼の頬に触れる。
そう、殆ど同じなのにひとつだけ決定的に違う部分があった。
―黒い色素。
ふと横を見ると、大きな姿見が壁に掛けてあった。
見慣れた―自分だけど自分じゃない、懐かしい顔。




「!」

「…やっと気付いた?」

「!!!???」

「…そう、ここは3000年前のエジプトだぜ」





何それ、と言いたかったけど声が出なかった。
このカラダ―‥つまり盗賊王のそれは久しぶりすぎて自分と合っていないのかも知れない。
この王サマと盗賊王が闘っていた時、自分は遠くで高見の見物をしていただけでこのカラダに入ってはいないから、
正真正銘このカラダは3000年ぶりといったところだろう。(もっともそれすら別人のようなものだが)
というかそもそも何故このカラダは無事(という訳でもないようだが)なのだろうか?



「まぁまぁ、落ち着け」

遊戯―もとい王はバクラの肩をぽんぽんと叩いた。


「あの後まぁいろいろあって(ないけど)オレも成仏することになったんだがな。気付いたら何故か天国じゃなくてここにいたもんで、
 お前もどっかいるんじゃないかと思って探してみたら案の定、あの村の地下神殿に倒れてたから連れてきたんだぜ。」

「(…なんで)」



バクラはわけが判らなくて回りを見回した。
明らかに位の高い者専用と言った感じの豪華な部屋の大きなベッドに自分は寝かされているらしい。
宿主様と見たテレビの中でしか見たことない、天蓋とかいうのがついている豪華なベッドだ。
何度も王宮に忍び込んだのに生まれて初めて見たとは情けない。
大きな真っ白いベッドに、それとは対照的な色とりどりの花々がいっぱいに散りばめられていて、まるで自分は花の中で眠っていたようだ。



「(…何、これ)」

これか?と王は花をひとつ掴んで言った。


「お前が目を覚ました時綺麗な方がいいだろうと思ったからな。城中の花を摘んできたんだぜ」
「(…つーか、むしろこれじゃ埋葬してるみたいだろ;王サマの考えって判んねェ…)」


バクラは呆れて溜息をついた。
王は心の中で、お前が花の中で瞳を開ける様子も大層美しかったがな、とか思ったけれど起きてそうそう殴られるのも嫌なので黙っていた。


「ところで、声出ないのか?」

バクラはこくこくと大げさに頷いた。
王はまぁそのうちカラダも回復するだろ、と言ってバクラの口唇を軽く塞いだ。


「マァ、目が覚めて良かったよ」

ふわり、と彼の両腕が自分の背中に回る。



(…久々。)


悠長にそんなことを思った。
自分を抱き締めるその腕が震えているような気がしたけど、きっと気のせいだと思う。






***



―三日後。
夢かと思ってたけれど、もう三日も経ってしまった。
昨日までの二日間、王は自分を連れ歩いて、宮殿の中を案内したりだとか(何度も来たから知り尽くしているというのに)、
町を見に行ったりだとか、そんなことばかりをしてくれた。
付き合っていた(?)あの頃でさえ、こんなことしたことなかった。(というか、セックス以外した覚えが無い)
つくづく妙な気分だった。
今日は遠征があるから、とか言って朝早くから出かけてしまったけれど、
その今日になってやっと声が出るようになったので帰って来たら喜ぶかな、とかそんなことを考えている自分にぞっとする。



「盗賊王ー!」

部屋にいると、魔術師の小娘―確かマナとかいう―が訪ねて来た。
ひとりで退屈だったので丁度いいのが来た、とバクラは思った。
しかし盗賊王呼ばわりとは。
そもそも盗賊王がこんなところにいてもいいのだろうか?
王サマのことだから神官たちはうまく言いくるめてあるのだろうけれど。


「…そういえばオマエ、師匠は?」

気になったので聞いてみる。

「ししょー?ピンピンしてるけど何で?」
「あ、そ」

この世界には千年アイテムが無いらしい。
つまりはそれにまつわる争いごとも無いという訳だ。
自分が墓荒らしであることは変わりないようだが、それにしたって都合が良すぎるとバクラは思った。


(やっぱり夢なんじゃねえのか?)


「そういえばバクラ、声出るようになったの?」
「おう」
「良かったねー。なんせ1年も寝てたもんねー。もう死んでんのかと思っちゃったー」

マナはとんでもないことを言ってケラケラと笑った。


「はァ?1年??」

あれ?聞いてない?とマナは首を傾げた。


「1年て、365日?」
「寝すぎてボケたの?そうに決まってるデショ」
「王サマ1年もオレの介護してたの?」
「かいごって何??マァ、かいがいしくしてたよ。手ェ握ったりしちゃってさ。あたし夢でも見てるのかと思ってほっぺたつねっちゃった。
 王サマってどんな女でも一回やったらポイだったのに」

マナはもっとケラケラと笑ったが、バクラは幸運にも後半はまったく聞いていなかった。



(どーりで…)

腫れ物に触るみたいなんだ、とバクラは思った。
オカシイと思ったんだ。求めて来ないし、気持ち悪いくらい優しいし。

(つかあの花、1年間取り替えてたのか…?(汗))


マナはひとりでベラベラと師匠の話ばかりしていたが、マハードが血相を変えて飛んで来て強制連行される羽目になった。
自分が殺した男が目の前でピンピンしているのを見てまた妙な気分になる。
そして、入れ違いのように王が帰って来た。



「バクラ」


王サマ、とバクラが言うより先に彼は嬉しそうに自分の隣に座った。


「声出るようになったんだって?良かったな」
「…何喜んでんだよ。王サマともあろう人がみっともねぇ」


何だよ、第一声がそれか?と彼は笑った。


「…じゃあ、何て言って欲しいわけ?」
「?」
「い、言ってやってもいいぜ?」


自分はいったい何を言ってるんだろう、とバクラは思った。
耳まで赤くなっているような気がする。
王はふわりと笑って、バクラを抱きしめた。





「…逢いたかったって、言って?」


耳元で囁かれる甘い声。
催眠にでもかかったように、口唇が言われた通りの言葉を紡ぐ。





「王サマ…」

「―逢いたかった…」



―今の今まで何とも無かったのに。
舌に乗せて言葉にした途端に目の前がぼやけて、何にも見えなくなった。
それが涙だと気付くのに暫くかかった。



「オイオイ、泣くなよ」


ちょっと困惑したようにそんなことを言いながらも、彼の腕の力は尋常ではなく、
背骨が折れそうなくらいギリギリと、まるで締め上げられるように抱きしめられて息が止まりそうだ。



「王サマ…痛い」


思わず泣きながら抗議の声を上げると、王は少しくらい我慢しろと言ってバクラの口唇に噛み付くように口付けた。



「王サマ‥‥‥」



夢でも何でもいい―そう本気で思っていた。
このまま絞め殺されても、腹上死しても、後悔するどころか最高に幸せであるような気すらした。


―実に恐ろしいことに、どうやら自分はこの王サマを愛しているようだった。


……(薄ら笑い)(またか)
そろそろ究極に気まずくなってきましたねw(悠長)
遂にヒメって使っちゃった!w(…)
まぁ焼け野が原(@Cocco)でも流しながら読んでください(!!Σ(´∀` ))
知らない人は歌詞を検索して
ドン引きしましょうw(笑いごとじゃ…)
私は延々リピート再生しながら書いてました(そのうち気が狂うよアンタ)

えと、これは私の脳内のみで膨大に膨れ上がってる、ぶっちゃけパラレルの域に達していると思われるシリーズですw
冬コミの新刊とかよーしパパこれで行っちゃうぞーとか思ってたんですが、
いきなり冬コミで王バク初参戦なのにいきなりこんなぶっとんだ話を出す勇気が無いので、サイトでもちょこちょこ書くことにしましたw
王サマの成仏シーン(違)を見て、これってもしかして古代に帰ったっていう考え方も出来るんじゃ?と思ったのがキッカケで、
じゃあ隣に盗賊王もいてほしいなと。そんな感じで出来たシリーズ…orz(可哀相な脳内妄想…!)
この盗賊王が目覚めるシーンとか
10通りくらいあるしw(ありすぎ)(可哀相な人…)
これはその中のいっこですw 弱ってる盗賊と優しい王サマw(ありえな)(つか盗賊はともかく王サマが気色悪いw)
しかも花葬w(死んでないから!!)
なんか、もっとバージョン色々あるんですよ!(いいから)
生まれ変わりバージョンだとか、女の子バージョンだとか!!(もう判ったから…)
なんか、わたし益々浮いて来ましたよね…(ふと我に返る)
いいの、浮いてるのはいつも。(2回目)
まぁ、何度も言うけどこれシリィズですので…。微妙に続きがあるかも知れません。更新遅いので断言しませんが。
つか続き書くつもりであんなところでぶった切ったんですけどねw なんせ更新遅いので(以下略)
まぁどっちにしても続き物っていうよりは一話完結になると思います。(いつ止まってもいいように
つかたぶん王サマとバの人がああいう関係になったのはやっぱり現代になってからだと思うので。
ファラオと盗賊王だった頃には触れたこともなかったんじゃないかな…(って思いっきり突き飛ばされてたけどw)(@32巻)
だからファラオと盗賊王としてははぢめてなんですよ!(;´Д`)ハァハァ(…)
借り物じゃないカラダではぢめて(以下略)
(;´Д`)ハァハァ
つかそれにしたってタイトルは…さすがにアレすぎましたね(オイ)
色んなジャンルで同系列の話を書いた気がするけどズバリ書いてしまったのははじめてだ…(虚ろな目)
何か誰だよお前らってかんじだけど、私(のみ)はしやわせなのでほうっておいてあげてくださいw
いろいろツッコミどころは満載ですが(遠征なのに帰宅早すぎとかw)、ほうっておいてあげてください。(2回目)
つかそれ以前に、このサイトバの人受の方は来てるんですか?w(超謎)(お前それテニスの時も言ってた)
051030


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