「だって」


涼しい顔で彼は言う。


「俺が後ろに決まってんだろ。受なんだから。」


その一言で押し切られてしまった。






熱情






トンネルを抜けて自転車は走る。
宍戸を後ろに乗せて自転車は走る。

跡部だって、別にきついわけじゃない。
毎日テニスで鍛えているのだ、さしてデカくもない宍戸を後ろに乗せるくらいたいしたことない。
ただ、いつも自分で荷物では持たないような自分が他人を後ろに乗せて自転車を漕いでいる、それが少しだけ屈辱的だった。


「やっぱ後ろはラクでいいなーv」


宍戸は心底楽しそうに、跡部の腰に腕を回した。
どきん。
ほんの少しだけ心臓が揺れる。


どうして。
跡部は思う。

どうしてこいつだったのか。
他の誰でもなくてどうして宍戸だったのか―‥


たいして細くもない、自分とそう細さも変わらないその腕が回されただけでどうしてドキッとしなければいけないのか。
お世辞にも顔が好みとは言えず、むしろ女ですらないのに、可愛いと思うのはどうしてなんだろう。
べたべたべたべた触られるのは好きじゃないはずなのに、その腕を振り払おうという気にもならない。


…むしろ。




「…宍戸」
「なに?」
「あんまりひっつくな」
「なんで??」

…なんでって。


「…人に見られるだろ」
「誰か来たら離す」
「……」



ああ。
くらくらしてきた。


今握っているハンドルなんか離して、後ろに乗っているこのバカをきつく抱きしめたいと思う。
そんなこともう毎日毎日毎日毎日、バカのひとつ覚えみたいに繰り返しているのに。
何度抱いても抱き締めても足りないと思う。





「…宍戸、マジで離せ」
「何だよ、跡部のケチ」
「ケチもクソもあるか。ガマン出来そうにないんだよ!」

宍戸はきょとんとして、それから声をあげて笑った。


「…何が可笑しいんだよ」
「だ、だって…」

跡部ともあろう人が俺に欲情してるなんて、とケラケラ笑いながら言う。



「ガマンなんかしなくていーよ」
だから離さない、と言うので、跡部は容赦なく自転車を止めた。

降りろ、と言わんばかりに自転車を左右に揺らす。
宍戸の足が地面に着くや否や、引き寄せて抱き締める。
人に見られるとか何とか言ったのは自分の方だけれど構っていられない。



「…跡部」
「黙ってろ」
「あとべ…」
それでも宍戸が自分の名前を呟くので、跡部は彼の口唇を塞いだ。
そんなんじゃ全然足りなくて舌を差し入れる。
小さなその口唇を強引に割り開いて、口内をひととおり貪った。
そうしてようやく口唇を離すと、宍戸はちょっと潤んだ瞳で跡部を見上げて笑った。


「お前がこんなにがっついて来るなんて珍しいな」
「…しがみついて来る方が悪い」
「だって、跡部に触れたいんだもん」
「…」
「チャリだと手も繋げないしさ」



「…オカシイな、毎日こうしてるのに」

「ずっとお前に触れていたい」

「…どうしてこんなこと思うんだろうな」


宍戸はちょっと切なそうに笑った。
そんなことは跡部だって考えたことがないわけじゃないけれど、(現にさっき考えていた)とりあえず黙っていた。
返事の代わりにきつく抱きしめてみる。
宍戸の細い髪の毛が跡部の頬に当たった。


「跡部…大好き」
宍戸は小さな声で呟いて跡部の背中に手を回した。
道の真ん中で何をやっているのだろうとか思うけれど自分でもどうしようもなかった。




自分だって、きっとこいつのことが凄く好きなんだと思う。
癪に障るので言わないけれど。


ただずっとこうしていたいと思う。
この気持ちを何ていうのか知らないけれど。
ただ好きなんだと思う。
恋とか愛とか知らないけれど、ただ好きなんだと思う。



えー‥(突っ込みきれない…←2回目)
この話最初は全然違う話だったんだけど、そっちはマンガで描いてしまったのでまた別な話にして書いてみました。
(と言っても結局私の書く跡宍なんでどっちも似たようなものな悪寒w)
「あんな阿呆にあんなに懐かれたら跡部だってかわい(以下略)」的テイストに取り憑かれているだけあって
私が書く跡宍はいつも同じパターンですなひゃひゃひゃヽ(゜∀。)ノ(気狂いがここに)
でもこのパターンしか書きません(きっぱ)
どんなに読む人の心を打たなくてもこのテイストしか書きません(そんなこと言い切られても)
このテイストが跡宍の全てです!!(熱)

つかなんでいきなりチャリで帰ってるのかとか疑問が残りますな(おい)
たぶん宍戸がチャリで来たんじゃないかと…(てきとう)
中学生のくすぐったい恋愛が書きたくてチャリを使用しました(キモいから死ね)
あー跡宍が好き…この気持ちを何ていうのか知らない…(その気持ちは萌えというんだよ!!目を覚ませ!)