ねぇ、凄く欲しいものがあるの。
 ―アナタの首よ。




メデューサの亡霊



「社長」


 その亡霊は千年リングとかいう媒体に宿っているらしいが、とても信じる気にならないのでどうでもいい。

 ―そんなバカな話は、あの男だけだと思っていた。
 透き通った声が呼ぶのは、自分の名前ではなくて、ただの代名詞。あの男と同じように触って、あの男と同じような行為を求める。

 敢えて違いを挙げるとするなら、彼は少しだけ優しかった。
 あの男よりも、ほんの少しだけ。


「社長」

 ―知ってる、全部。
 こいつはあの男と同じようにしたいのだ。彼が欲しがるものが欲しいだけ。



「遊戯はともかく…貴様は何故こんなところにいるのだ?成仏しようとは思わないのか?」
「成仏って(笑)」


 ある日そんなことを聞いたら、自称盗賊は笑った。


「オレ様」

「欲しいものがあるんだ。それを手に入れるまでは死ねねーよ」


「…ほう?興味があるな。言ってみろ」
「なに、くれるの?」


 バクラは心底おかしそうに笑いながら、勝手にぺらぺら喋った。


「でも」

「社長も知ってるだろ?オレ様の欲しいもの」


 (…)


「オレ様、王サマの首が欲しいんだ」

「…その為に生きてきた」



 欲しいものがあるの
 そのために生きてきたの




「…奇遇だな。オレもそれが欲しくて堪らないが。」


 遊戯の首、と聞いて反射的に返事をしてしまって、海馬が思わず少し後悔していると、バクラは少し首を振って駄目だぜ、と目だけで言った。


「…幾ら社長でも、アレだけは譲れない」

「アレはオレ様が壊すんだよ」


 壊れているのはお前だろう、と思ったが言わなかった。
 その為に生きてきた―それは彼の口癖。


 バクラはするりと上着を脱ぐと乱暴に海馬の口唇を塞いだ。剥き出しになった背中に広がる、紅い斑点の海。その量は明らかに過剰で、キスマークなんて可愛らしいものにはとうてい見えない。
 ―病のような、所有の印。

 『これ』はオレのものだと―‥
 そう言われているようだ、と海馬はぼんやり思った。


 海馬の視線を背中に感じて、バクラはああこれ、と言った。


「…社長を抱くとさ、王サマ滅茶苦茶怒るんだぜ。こんなのまだマシな方で、前なんか一晩中殴られたりとか(笑)」

 そう言ってバクラはふわりと笑った。ありえないくらい嬉しそうだった。


 ―知ってる、全部。
 お前でさえ気付いていないお前の気持ちすらも。
 例えようもないくらい判りやすいけど、彼は単に遊戯にあてつけているだけなのだ。彼と同じようにして、彼と同じものを欲しがって、彼のもの(つまり自分?)を奪うことに躍起になっている。

 ―もっとも、判っていないのは本人くらいだが。




「自分はお前を抱くくせによ」

「オレがお前を抱くと泣くんだぜ?」


 いつか遊戯も笑いながら言っていた。酷く楽しそうだと思ったのを覚えている。


「海馬…お前はオレのものか?」
「…ふざけるな」
「だよな、お前はそんなタマじゃないよな。」


 遊戯はウンウンと頷いて、少し薄ら笑って海馬の顔を覗き込んだ。


「…でもよ、アイツはオレのものなんだぜ?」

「オレしか見えてない、オレの為だけに生きてる、正真正銘オレだけのものだ。かわいいったらないぜ(笑)」



 気の毒だがあんな男に夢中になったのが運の尽きだ、と海馬は心の中だけでバクラに言った。
 そもそも関係を持った時点でこうなることは判っていたはずなのだ。どんなにそれから逃げて、どんなに気付かないフリをしたとしても。バクラも―‥そして遊戯も。

 それよりむしろ、こんなバカなふたりに付き合っている自分もどうかと思うが、興味があったのだ―少しだけ。
 復讐心が勝てるのかどうか。あの首を落とせるのかどうか。


 ―自分は、果たせなかったから。

 「奴」は自分の手にかかるのを拒んで、あろうことか自らの手で幕を下ろしてしまった。
 何故彼は遊戯を―‥憎むべき敵を愛したのだろう。
 自分だったら、と少し思う。自分は本当にあの義父のことを、憎んでいただけなのだろうか?



「社長」

「王サマのことなんかいいからサ、さっさと楽しもうぜ」


 心にもないくせに、盗賊はそんなことを言って海馬の首に腕を回した。
 馬鹿な奴だ、と心底思う。



「社長のカタキも、オレが討つからさ」

「…だから王サマを殺るのは、オレに譲って?」


 真剣な声だった。
 狂気を纏うその大きな瞳。見覚えがある。―自分と同じ。
 彼に残されたのはもうそれだけなのだ。バクラにとっては復讐心も恋心も、そうたいした違いはないのだろう。
 あの男のいったいどこがそんなにいいのか判らないが、確かにかわいいものだと、きつく抱きしめられながらそんな悠長なことを思った。




 ―それでも。


 この盗賊の振り落とす刀はきっとあの男に致命傷に近いものを与えるのだろう。その狂気の炎が消えない限り。
 でもその命の灯を消すことはきっと出来ない。


 (本当は結果なんて、最初から目に見えて判っているのだ。それでも見てみたいだけ。―この目で最後まで)


 ―どうしてだと思う?


 それはお前が、彼を愛してしまったから。
 復讐は果たせないのだ。
 本人は少しも気付いていないのが不幸中の幸いと言うべきか。余りにも可哀相だから黙っておいてやるけれど。





 ―ねぇ、欲しいものがあるの。




鎮魂歌(レクイエム)という剛海本?に載せたバク海(のつもり)ww
書いたのうっかり1年半くらい前かwwテラコワスww
finally王バク前提のバク海ってどんなんだろう?とか言ってるけど、
実はその後書いていたというww(どうでもいい)
しかも一部魂の奴隷っていう本で描いたこととかぶってるのーネ!(…)
まぁあれは海バクだったけど
なんかもう色々ツッコミどころがあるけど気にしないことにしよう。。。orz
これは当時〆切前にソッコー書いたので流石にちょっといじりましたw
まぁいじったところで手のつけようがない感はあったけど。。。(虚ろ)
練られてない文章はこれだから…_| ̄|○
タイトルはもちろんOCGからw
メデューサってのは神話で髪の毛が蛇で石にするあれですよw(みんな知ってる)
ちょっと調べてみたら、海神ポセイドンの愛人という時点でいかにもバって感じだけど(オィ)、
余りにも不遇で救われない子でなんかヘコんだ。。。。。orz(がくり)
とりあえずバは攻ならとても優しい子だとおもう(オイオイ)
そして剛海ですまんw(あやまるのそこかよ!)
でもサリンさん海馬受ならむしろ双海なんだよね。。。(もう帰ってくれ)
070519


ブラウザバックプリーズ