それは難易度を極限まで下げたときメモのようなものだった。別に、ゲームだとかそういう話ではない。難易度がどうとかいう話も実は関係ない。
―ただ単に、相手が極端に判りやすかったというただそれだけの話だ。
もっとも、恋次の判りやすさには感謝している。そもそも自分たちは男同士でましてや死神と人間だし、彼の態度でこれは両想いだと確信出来なかったら、自分はこれでも一応常識人間なつもりだし(随所から否定されそうだが)、手を出すことが出来なかったかも知れないから。
「―恋次」
現世に来ると言うので迎えに行った。
名前を呼ぶとちょっと驚いたように振り返って笑う。―いつもそうだ。
最初からその笑顔だけでまるで超能力でも得たみたいに、恋次の気持ちが判ってしまった。本人はたぶん、隠しているつもりだったんだろうけれど。
「一護、今日からな…」
嬉しそうに何か言いかけたその言葉を聞き終わる前に襟を掴んで引き寄せると口唇を塞いだ。キスは半月ぶりだろうか。こういうのを遠距離恋愛と呼んでいいものか判らないけれど、おかげでいつでも欲求不満というか…甘い時間を味わう暇もなく行為に没頭するという選択肢になりがちだ。
―まぁ、今はそれでもいいけれど。
「馬鹿、抱かれに来たんだろ?」
わざと軽く言ってやると耳まで赤くなった。そういう素直な反応が死ぬほど可愛いと思う。
「…だって、一護に触れたい」
蚊の泣くような小さな声で耳元で囁かれると、ここが野外だということも忘れて貪り尽くしたくなる。まぁ、今は死神だから最悪の場合このまま以下略とかいうことになっても構わないか、とかそんなことすら思う自分も大概だ。
「…心配しなくてもいっぱい触ってやるよ」
我ながらあんまりな台詞だ、と一護は思ったが、恋次は嬉しいらしく思いっきり抱きついてきてまた笑った。
―他にも色々、あったけれど。
やっぱりいちばん判りやすかったのはその笑顔だと思う。自分にだけ向けられたその照れたような笑顔がいちばんの告白だったんだ。
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