ずっとずっとずっとアナタを憎んで、それだけで生きていけると思ってた。






凍 え る そ の 手 を 離 し て





初めて会ったのは遠い遠い昔だった。
太陽と月みたいに正反対の境遇に生れ落ちて、当然のように敵対して死んだ。


生まれ変わり―というのとは全然違うけれど。
ただ大きすぎた怨念がモノに(この場合は千年アイテムに?)宿っただけだけれど。
理由はどうであれ、死んだあと何千年も経ってまた出会った。
―笑えることに今度はクラスメイトだった。
それは、限りなく美しく言えば運命的ということになるのだろうか。

相手は前のことなんか何にも覚えてなくて、しかも自分たちはふたりとも借り物の身体だったけれど。
どうしてそんな気になったんだろう、自分たちは何回も身体を重ねた。


―彼は、淋しいからだと言っていた。
幾ら仲間だの親友だのに囲まれていても。
自分のことすら何ひとつ判らない、借り物のカラダで。


―だから彼は自分を選んだ。
淋しいから。同じものがひとつも無かったから。
今も昔も、あの―‥忌々しいくらいにキラキラ光を浴びたものばかりに囲まれていた彼は、他の誰でもなくて自分を選んだ。
あの中で『同じ』なのは自分だけだっただから。
自分も彼も、本質は同じ、光に取り憑いた影だったから。



…じゃあ自分はどうしてなんだろう。
どうして彼と寝ていたんだろう。
自分は、彼とは違う。
別に、取り憑いた影である自分の身の上を疎んだ覚えもない。
淋しかったかと言われても、間違いなく違うとしか言いようがない。
正確に言えばそんな感情は知らなかった。
悔しいとか、憎いとか、そういうものとはまた違うものらしかった。


彼は、お前には判んねーだろーな、と言って髪を撫でた。
勿論その手を気色悪、とはねのけて、淋しいというのはどんな気持ちなんだろうと思った。
少なくとも昔の自分は、怒りと憎しみだけで生きていて、その対象は間違いなく目の前にいるこの男で。(言ってないけど)
ただ昔と同じ声で、バクラ、と名前を呼んでくるその声が何故だか酷く気持ち良かったので、別にどうでもいいと思った。
―そう、強いて言うならどうでも良かった。



本当にどうでも良かったので、いつだったか、気まぐれで本田と寝たら殴られてしまった。
なんで王サマが怒るワケ、と聞いた。
自分たちは別に恋人じゃない。むしろカラダだけの関係というのが正しい。

彼はいけしゃあしゃあと、お前は俺のものだ、とかそんなことを言った。
あの頃のまんまの暴君だと思った。


『…いつから俺が王サマのモノになったんだよ』
『昔から』

彼はキッパリと言った。

『違うのか…?』


勿論違う。
そんな行為に及んだ記憶はない。(殺し合いはした気もするが…)
どこからそんな自信が出てくるのかさっぱり謎だ。


『…そうかも知れねぇな』


…でも黙っていた。
どうせ時が来れば彼は全てを思い出す。
遅かれ早かれ自分たちは争って、どちらか片方が―もしかしたら両方かも知れないけど―奈落の闇の底に堕ちることになるのだ。



(…だってその時が来たらアンタは絶対、俺のことを許したりしない。
 あの男を殺した俺のことを許したりしない―‥)



でも自分はそれを待っているのだ。
もうずっとずっとずっと、その時が来るのを―‥
憎しみさえ風化しそうな悠久の時の中で、それでもそれだけが支えだった。
生まれ落ちてから今まで、それ以外の感情は知らない。


―でも、それでいいんだと思う。
これ以上時を重ねたら、この感情は呆気ないほどに薄れて、繋ぎとめておくだけで精一杯になりそうだった。
彼を憎んで憎んで憎んで、それだけで生きていけると、確かにそう思っていたのに。




(…俺もアンタを許さないから、アンタも俺を許さないで)




お願いだからその手を放して
この憎しみが完全に風化してしまう前に

たとえ奈落の闇に堕ちることになっても
その酷く冷たいその手が
それでも酷く優しかったことだけ覚えておくから






拍手に置いてた王バク小説。これが王バク初書きw
硝子の罅って小説で本田とやったら王サマがキレた云々はここから来たはず…だったんだけどイマイチ矛盾してるね(´∀`)
ま、気にしないという方向で流してくださいw(流せない)

あの男」ってのはマハードですよ!w 王サママハードに
並々ならぬ執着がw
ま、王サマは
2股3股は当たり前だし(待て)王マハ好きですw
王バクは
派手にすれ違ってるのが大前提なので。(真顔)微妙にじゃなくて、派手にw

ちなみに、このタイトルは本当は、テニスで使おうと思ってたタイトルなんだけど、
そのシリアスさからテニスではまったく使えずにここぞとばかりに王バクで使用w
これ本当は、砂時計の底っていう跡宍小説の元タイトルだったんだ…(全然合ってないよ!!Σ(´∀` ))
今まで使えなかったシリアスなネタをここぞとばかりに王バクで使いまくってるw
あーたのちいな(´∀`)(それは良かったな)


□追記
04年夏頃の初書き王バク小説。「
足りないからだ憎しみが!」(@イタチ様)の話。(違う)
ホント、憎しみっていうのは風化する感情なので油断してはいけません。(何の話)
つーか初書きでいきなり本田って…(困惑)幾ら城海の時本バクだったからって…orz
因みに今では盗賊王がマハードをぶっ殺したことを王サマは許してくれると思ってます(どんどんカオスに染まってる)
王マハは今でも好きですがw
つか闇に堕ちるのがバの人だけじゃなくてよかったです。
王サマも一緒に堕ちてくれてよかったです。(電波)(なんか都合のいいように解釈してる!Σ(´∀` ))
しかしもっと掘り下げて書けばいいものを短くてむかつきますね。もっと書くことあるだろー!(今頃キレる)
やっぱテニスの片手間でやってたから…orz(遠い目)
050830



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