雨が降り続いて太陽が見えなくても
君に差し出す傘さえあれば
雨と傘とボクとキミ
「…それで、治るんですか?」
「今のところは、何とも…」
順調に行きすぎてるような気がしたのは予感だったのだろうか。
立海大付属というテニスの強豪校のいちばん上まで上り詰めて。
これからという時の発病。
大会に出られないだけならまだしも、いつ治るかすら定かじゃないなんて。
家に向かいながら、とりあえず部活は辞めてしまおうか、とか考える。
こんな病気の部長がいたって皆に迷惑だし、いつ戻れるかも判らないし。
自分がいなくても真田や柳が立派に部を引っ張って行ってくれるだろう。
何よりも皆がテニスをしている時に自分は病院のベッドの上なんて考えるだけで気でも狂いそうだった。
こんなことになるならいっそあのいちばん大切なものを切ってしまいたいと思う。
自分の心に同調するように、ずっと怪しかった天気が遂に雨に変わった。
ポツポツと微かに降り出した雨は次第に勢いを増し、周りの人たちはパタパタとコンビニや軒下に駆け込んでいる。
けれど幸村はとてもそんな気にはなれなかった。
(あーあ…どこまでもツイてないなぁ)
(これが薄幸の美少年ってやつかなぁ)
家の近くまで来ても、家族や友人、部のみんなに検査結果を報告するのが憂鬱で、幸村はその辺をぐるぐる回った。
雨を無視して帰って来たので頭から靴の先までびしょ濡れで、どっちにしたって母親に色々言われるだろう。
(傘を買うお金が無かったってことにしよう…)
観念して、家の方に向かってくるりと踵を返すと、玄関の前に誰かがちょこんと座り込んでいるのが見えた。
(…?)
小走りで近づいてみるとそれはひとつ下の後輩の切原であるようだ。
彼はこの雨の中ずっと待っていたのかそれとも傘の差し方が悪いのか、傘など何の役にも立っていないというくらいには濡れ鼠だった。
「…赤也!」
それでも彼は自分の姿を見つけると、ぱあ、と笑顔になって走って寄って来た。
「どうしたの?こんな雨の中…凄い濡れてるじゃない」
「部長こそびしょびしょ…俺の傘使って下さいッス」
切原はそう言って自分が差していた真っ赤な折りたたみ傘を差し出した。
ここはもう自分の家の前で、今更傘ひとつあったところで何もいいことは無い感じだったけれど、
折角なので幸村はその傘を手に取ると、単純に自分の方が背が高いので、切原を引き寄せて傘の中に入れた。
「で、どうしたの??何か緊急のことでも…」
病気のことも忘れて幸村はまくし立てた。
切原はふるふると首を振って、今日検査の結果が出るって言ってたから…と小声で言った。
「本当はみんな行くって言ってたんだけど…俺がひとりで行かせて下さいって副部長にお願いしたんス」
「…真田、何て言ってた?」
「『確かにその方がいいかもな』って…」
「…」
(「悪い結果」の時のことを配慮して赤也ひとりをよこしたってわけ…)
「うんありがとう、でもね赤也、やっぱり俺入院しなくちゃいけないって言われたよ」
「…そうですか」
その可能性の方を予想していたのか、切原はあまり驚きこそしなかったようだけれど。
あからさまに悲しそうな顔をして下を向かれると、幸村は自分のことなのに胸が締め付けられるような思いがした。
「それって、いつまで…」
「…わかんない」
「…」
「それで俺、テニス部は辞めようかと思って…」
下を向いていた切原は、え、と言って顔を上げた。
「いつ戻って来れるかも判らないからさ…」
「そんな…」
「部長の仕事何にも出来なくなっちゃうし…。何より立海の部長がこんなんじゃあ、ね」
切原は、今にも泣きそうな顔でだめです、と首を振った。
「赤也…」
「先輩たちも皆そう言うと思います」
「でも…」
「諦めるなって言ったのは部長っス!」
切原が急に大声を出したので、幸村はびっくりして危うく傘を落としそうになった。
「俺が部に入ったばっかりのころ、部長たち3人に手も足も出なかったころ…
でも諦めなければ絶対そのうち勝てるって、そう言ってくれたのは部長ッス…」
切原は掠れた途切れそうな声で言葉を紡いだ。
「…赤也」
「…辞めないでください。部長が辞めるなら俺も辞めるッス」
「それはダメだよ」
「…じゃあ辞めないでください」
びしょ濡れだったので、切原の頬を流れるそれが雨なのか涙なのか良く判らなかった。
寒いのか彼の手は小刻みに震えていて、幸村はその手を握って、寒い?と尋ねた。
「…はぐらかさないで下さいッス」
「判った、部は辞めないよ」
「…本当スか?」
「うん」
良かったッス、と言って切原は少し笑った。
「それよりいつから待ってたの?家で待っててくれれば良かったのに…」
「そんな!恐れ多いっス!!」
「何言ってるの。とりあえずオフロ入って行きなよ。このまま赤也を帰したら赤也の方が熱でも出そうだよ。もうすぐ夕食時だし、良かったらゴハンも。」
「ええっ!?」
そんな!と尻込みする切原の手を引いて玄関のドアを開ける。
(諦めるな…ね)
(そうだね、死ぬわけじゃないし…)
(それに…)
(…今辞めたらこの子とお別れってことだもんね)
母親に差し出されたタオルを赤面して受け取る切原を見ながら、幸村はさっきまで背負っていたものが少し軽くなったのを感じた。
アニプリで赤也たん神尾につっかかったりしてたけど、淋しいねんあの子。(イキナリ)
部長と和気藹々やってる不動峰が羨ましかったねん…(遠い目)
だって不動峰ってアレじゃん…「橘さん!」「橘さん!」「アハハよせよお前ら」(キラキラ)←S霖さんの不動峰イメージ
だから橘サンにあんな…(オイオイ!)ま、橘サンはバカ澤の彼氏(黙れ異端人)
あの子は淋しいだけなのよ、ってことで。
今のあの子家なき子か親なき子みたいなもんだから…(どんなだよ!)
あー赤也たんは可愛いなぁハァハァ(黙れ)
「キミに差し出す傘さえあれば」って折りたたみ傘(子供向け?)のCMで言ってるアレです。
日曜の朝とかに良く見れるよ!(知らん)
アレを聞いて、ステキだなぁと思ってこの話を思いついた。
つかこの話、赤也たんがゆっきーに傘を差し出すシーンが書きたくて書いたんだけど、心なしかそのシーンはイマイチ霞んでるかんじw
ちなみにこの話ではゆっきーと赤也まだデキてないよ!
幸村が切ってしまいたいとか考えてる「いちばん大切なもの」はこの時点ではまだテニスですよ!
でも真田はふたりが両想いだと気付いているという…(真田そんなに鋭くないから!)
ゆっきーと赤也はまさしく荷物半分こっていうか…ハァハァ
跡宍は逆に荷物が2倍になった感が否めないけどw(もう跡宍はいいから)
やっぱり幸赤は、くっつきそうでくっつかないうちに入院しちゃったってのも凄くアリだと思う。
ゆっきーは自分で薄幸の美少年とか言ってるけど_| ̄|○
あの子結構強かだから自分の顔が綺麗なことくらいわかっているよ!
いっそ真田くらいの顔だったら病気にならなかったかなぁ、とか思うかも知れない…(お前は真田ファンに殺されるべき)
ちなみに私も傘を差してても差すだけ無駄ではってくらいびしょびしょになるタイプです。(お前のことなどどうでもいい)
赤也もぜったいそうだと思う(根拠の無い自信)
でも幾ら何でも赤い傘はないよね…_| ̄|○ だってあの子は赤が似合うから…(ボソボソ)
そう言えば次こそ明るい話を書くとか言ってたくせに…
マ、いいか(´∀`)(よくない)
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