「ネウロ、お花買いに行くの付き合ってくれる?」


そう声をかけられて顔を上げる。



「最近アンタが付き纏うから友達減っちゃって」


目の前の少女はあながち嘘でもなさそうなことを言って無邪気に笑った。






枯れない花




「…花屋に『謎』があるのか?」
「多分、無い。(キッパリ)」


訊かれた弥子は即答して、ぱちん、とピンで髪の毛を留めた。
…サラリ。
繊細な音を立てて少女の茶色い髪がピンに収まる。
自分も髪の毛を留めているが、それは単に頬にかかって邪魔だからで、彼女のように外見を彩る、という意味のものではない。



「さ、行こ!ネウロ!」
「…まだ行くとは言っていないぞ、ヤコ」
「『先生』の言うことが聞けない?たまにはあたしにも付き合ってよ」

いつも『謎』が喰べられるのはあたしのおかげでしょ、と少女は笑った。


「…まぁ道中『謎』が転がってるかも知れんしな」
「そうそう人が死んでたまるかっちゅーの!たまには普通に街くらい歩かせてよ!」


弥子は心底嫌そうな顔をして、玄関のドアを開けた。
自分よりずっと小さい靴にその細い脚を収める。


「…細い脚だな」

ほん少し力を入れたら粉々に砕けてしまいそうだ、とネウロは思った。


(本当に人間とは…)

こんな種族が良くぞこれだけ繁栄できたものだと思うくらい―か弱くて脆い生き物。



「そりゃーそうでしょ、こちとら可憐で儚げな女子高生よ!」
「…貴様だけではなく、人間は皆そうではないか。流石たかだか100年しか生きられないだけのことはある」
「100年しか生きられなくて悪かったね。魔人のアンタと一緒にしないでよ」


弥子は溜息をついて少し離れて隣を歩くネウロをチラリと見た。


(…そーゆう自分も、男にしてはかなり華奢だけど。)


長い手足に、さらさらと揺れる細い髪の毛。
人間離れした深い緑色の瞳を、長い睫毛が彩る。
そりゃあ、わざわざ不細工に化けたりはしないだろうけれど―かなり綺麗な顔をしていると思う。
癪に障るので、こんなことは出来れば考えたくもないのだけれど。
道行く人々が振り返るのは、決して彼の格好や髪の色が変わっているせいだけではない。


(…こんな綺麗に化けられるもんなのね)


あの巨大オウムのような真の姿を思い出して、魔人というのは途方もない、と弥子は心底思った。




「着いたよ、ネウロ」

弥子の行きつけの花屋は5分も歩けばすぐに着く。
ネウロは、道中何事もなかったのが不満らしく、少し眉を顰めた。
人間歴が短いから仕方ないのだろうけれど、面白いくらいすぐに顔に出る。
―それ以上にこの魔人は、猫をかぶるのも大得意らしいけれど。



「だからねー、そうそう何かあるわけないでしょ!それもこんな5分かそこらで…」

だいたいそんなにがっつかなくてもアンタは『謎』の気配を察知出来るんだから、と言いかけたものの、
少女は目の前に広がる色とりどりの花々に目を奪われて思わず―‥そういう話をするには心底向いていない異形の相手に語りかけてしまった。


「見て見てネウロ、綺麗でしょ??」
「…貴様は本当に何でも食べるのだな。」
「食うかっ!!!」


そう言えば、とネウロは言った。

「確か一週間前くらい前にもここに来ていなかったか?そんなに買ってどうする?」
「あのね、花だからそんなにもたないの。枯れちゃうんだよ」
「?貴様、たかだか一週間で枯れるものをわざわざ買いに来ているのか?」
「あのねぇ…アンタには判んな…」

言いかけた弥子が振り返るとネウロは既に10mくらい離れた別の棚にある何かに目を奪われているようだった。


「ネウロ、少しは人の話聞いて…(疲労)」
「ヤコ、これは何だ?そっちの花とは材質が違うようだが…」
「だから人の話を…(以下略)」


『謎』が主食なだけあって、自分の知らないものやもの珍しいものは嬉しくてたまらないらしい。
子供みたいだ、と弥子は思った。
うきうきと謎を解いている時もそうだけれど、こういう時の彼は無邪気な子供のような表情を見せる。
本当は、自分の何百倍、何千倍―もしかしたらもっと多くの時を生きている化物のくせに―‥
そもそも魔人であるということは、それ自体永遠に子供であるようなものなのかも知れない。



「…こっちは造花。偽物の花。布とかで作ってあるの。」

最近の造花は精巧だ。
真っ白な薔薇を模したそのレプリカは本物さながらの美しさを誇っている。
永遠に枯れない偽物の花はまるで彼のようだ、と弥子は思った。


「成る程、これならナマモノではないから枯れる心配は要らないということか。貴様もこっちを買ったらどうだ?」


ヤダ、と弥子は言った。


「何故?」

「…造花はあんまり好きじゃないの」

「何故?」

「…(ひつこい。)」





「…だって、つくりものだもの。」


「…」



ネウロはきょとんとして、また、どうして、とか言いそうな気配だったので弥子はこれ以上答える気がないという意思表示をするために彼にくるりと背を向けた。



(…アンタには判んないよ)


―その綺麗な目も指も髪も―ぜんぶぜんぶつくりもののアンタなんかには。
きっと一生かかっても―どんなに長く、限りなく永遠に近い時間を生きたとしても。

―ぜったいに、ぜったいに判らない。






***



「今日は、『謎』も無いのに付き合ってくれてありがと」

家の前で弥子は先ほど包んでもらったばかりの花束の中から花を一輪すっと抜き取ると、ネウロの目の前に突き出した。


「あげる。お礼」

「残念だが我が輩は『謎』以外は喰わな―」


(だから食べ物じゃないって…;)


言いかけた口唇を素早く人差し指で塞いで、無理矢理花を握らせる。





「…アンタ、嫌味なくらい似合うね」




それだけ言って、弥子は自宅のドアを開けた。




「…ヤ、コ???」


少女はぱっと振り返って、なにしおらしい声出してんの、と笑った。



(しおらしい……?)



心配しなくても今度はちゃんと『謎』にも付き合ってあげるから、と言って、バイバイとドアを閉める。
ぱたん、と音を立てて少女と自分の間は物質に遮断された。
別にこんなものをくぐり抜けるくらい自分には造作も無いことだけれど、何故か後を追う気にはならなかった。
手元に視線を移すと、少女に強引に渡された白い花がこちらを向いている。
名前は知らないが、高潔な感じのする華やかな花だ。
でもこの花も一週間もすれば枯れてしまうのだろうか。
人間は、どうしてこんなすぐに枯れてしまうものが好きなんだろう。



「っ痛―」

ぼんやりとそんなことを考えていたネウロは指先になにか鈍い痛みを感じた。
良く見てみるとその茎には鋭利な棘が沢山生えている。


「…棘があるのか。成る程、魔界植物に近いものがあるな…」


指先から流れる偽りの赫い血をネウロはぺろりと舐めた。
魔人の血はこんな色はしていない。




『…だって、つくりものだもの。』



(…つくりもの?)



少女の声が耳に響いた。



(つくりもの・・・・・・・・・・・・)






***



ぱたん、と後ろ手で玄関を閉めて、少女ははぁ、と溜息をついた。
あんな魔人にこんな妙な気持ちになるなんてどうかしてる。本当にどうかしている。



「…あの1本だけはアンタの為に買ったの」


白い白い、真っ白な『本物』の薔薇―‥
本当に、似合いすぎていて嫌がらせにもならないけれど。




あの花が枯れるところを見て、少しは何か感じればいい。
そんな感情があるのかは知らないけれど、悲しいとか思えばいい。



微妙!!しかも後味悪ッ!!
ヤコネウです…一応これでもヤコネウのつもりなんです…そういや男女カプ小説書いたの初めてのようなw
ネウロはなるたけ受ぽく書いたつもりですが、なんせ普段リバ属性なので受っぽくなってるかどうか…(自信なさげ)
ヤコが攻に徹する必要はないですが(女の子だし)、ネウロは受に徹して欲しいです(真顔)
あんな受け子は牛尾以来だ…(*´Д`)'`ァ'`ァ(ええー!?( Д)  ゚ ゚そこ牛尾と並べちゃうの!?Σ(´∀` ))
でもこの小説のヤコはなんかガン攻みたいになってて微妙w いつもの力関係がまったく逆に…_| ̄|○

つかありがちな題材だしさぞ書き易いだろー!とか思って書き始めたもののカナリ書きにくいでした_| ̄|○
私は『わかってない』ネウロが好きで、『わかってない』ネウロを書きたかったんですが、それが本当に難しかった。
あんまりネウロの感情の描写は出来ないっつーかなるたけしたくなかったんで…
でも私のようなポエム党(何それ!?Σ(´∀` ))というか雰囲気重視派には厳しかったようでこんなヘタレ小説が出来上がったという_| ̄|○
あーあー文才がないのがばればれだよ!w

つかヤコネウはかなりプラトニックなイメージ。(当たり前?)
でも女の子って、そばにいる男の子にビビるくらいすぐ惚れるから(お前は女を何だと)意外とヤコがネウロを好きになることはありえるんじゃないかと。
つか、ネウロ感情が良く判って無いから、ネウヤコにしてもヤコネウにしてもヤコ→ネウロになっちゃうんだよねw(オイ)
つーかチューくらい書こうかと思ったけどヤコネウはキスもしねーなと思ってやめましたw オデコチューかほっぺチューくらいならありえるかもだが…
つかネウロにキスの概念があるかすら…(遠い目)
ほんとヤコはネウロに白薔薇とか買ってる場合じゃないから!まーでもヤコんちはお手伝いがいるくらいだから金持ちなんじゃないかと。
まぁネウロにいちばん似合う花は白い薔薇じゃないかと(´∀`)(何の夢を見てるんだお前)
つかヤツはもう
あの華奢で綺麗なところが全部つくりものなところすらも萌えポインツっつーか萌えっつーか…(同じだよ)
あの
オウム?本体ですら受っちゅーか(真顔)ちなみに私が最初にネウロに惚れたシーンは、
一億度の業火に耐える魔界生物の我が輩に防御火壁とは片腹痛いぞ
のとこです(*´Д`)'`ァ'`ァ(*´Д`)'`ァ'`ァ(*´Д`)'`ァ'`ァ(ウゼー!)ソラで言えます(どうでもいいよ!!)はぁはぁこれだから人外は!(意味不明)
つーかネウロってオスかメスかすらわかんねーって思ってたらネウロ自分で男って言い切ってたw(妙な夢を見ないで下さい)
オスだったんかw(そりゃそうだろ)(*´Д`)'`ァ'`ァもうこれだから人外は(2回目)
なんか延々とネウロについて語ってそうなのでこの辺でw
ちなみに最近の造花はそこまで精巧でも無いし、花ってもんが一週間で枯れるのかも知りませんがあんまり気にしないでください。(オイィ!)
つか魔人の寿命が本当にそんなにクソ長いのかすらも不明ですが気に(キリがないので以下略)


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