―AM 2:00
何とはなしに、終わったあとふたりでテレビでやっていた深夜映画を見ていた。


テレビの中の男女は、駆け落ちの果てに遠くの寒い北の町に流れ着き、お金も食べ物も底を尽いて、最後に雪の中でお互いの手を握り合って死んでゆくところだった。



―ねぇ、こうなったことはどうかと思うけど、それでもわたししあわせだったわ
 だってずっとアナタだけ見ていられたから
 だってずっとアナタのことだけ考えていられたから
 世界がアナタだけになったみたいだったから








カケオチごっこ 1




「…こーゆーのって、どうなんだろーな」
眠くて眠くてたまらないようで、今にも頭からガクリといってしまいそうな切原が小さな声で言った。


「…切原さん、服着て寝なよ、風邪引くから」
越前はベッドの下の切原のTシャツを拾い上げると、彼の頭に被せた。


「…なー、越前はどう思う?」
切原は与えられたシャツに適当に腕を通しながら、隣にいる越前を覗き込んだ。


「どうって、別に…あんまり有意義だとは思わないけど」

越前が気の利かない返事を返すと、切原はフワリと笑って言った。


「―俺と駆け落ちしたい?」



(切原さん、完全に寝惚けてる…)

とてもじゃないけど、彼が本気でこんなことを言っているとは考えにくい。


「別に俺たちは駆け落ちする理由はな…」

ないでしょ、と言いかけて、男同士であることや、敵対するライバル校同士であること、過去の諸々の因縁…などなどが越前の頭をよぎって実はそうでもないことが発覚した。


(…なにげにけっこう、ある、な)


切原は完全に眠りかけてしまったようで、越前の肩に頭をもたれて瞳を閉じてしまった。



「…切原さん、そこまで言うならやってみる?」
「なにを…?」

切原は返事をするのがやっと、という風に何とか口を開いた。
その口唇を軽く塞いで、越前は言った。



「―カケオチごっこ」





***



「やっぱり平日のど真ん中の方がいいよね」
「…?何の話だよ?」


次の日、ふたりで遅い朝食(というか既に昼食)を食べながら越前は切り出した。
ここは越前の家。
日曜の朝だというのにふたり以外は誰もいなくて、適当に焼いたパン何枚かとジャムやマーガリンがテーブルの上にばらばらと並べられている。



「カケオチ。」
「はぁッ!!!???」
「何言ってんの、切原さんがしたいって言ったんでしょ」
「俺が!?駆け落ちしたいって言ったのか!?いつどこで何時何分何秒に!!??」
「きのー映画見てるとき」
「あーゆうべの胸クソ悪い映画か…俺寝惚けてて結末覚えてねえんだよな」
「切原さんあれ見て、越前は俺と駆け落ちしたい?って言ったんだよ」
「お、覚えてねぇ……」
「なかなかいい誘い文句だったよ」


でもまさか本気でするわけじゃないだろ?と切原が言うと越前が頷いた。

「当たり前じゃん。ごっこだよ」
「ごっこって…;」
「カケオチごっこ。楽しそうじゃん」
「…まぁ、そうかも知れねえけど…」
「お金ないけど何かそれっぽいところくらい、この辺でもちょっと電車乗ればあるでしょ」
「なんでお前はそんなにやる気なんだ…」
「俺は好きなことにはやる気を出すタイプだよ」
「…」

越前は冷蔵庫から牛乳を取り出してカップに注ぎ、眉を顰めながらも一気に飲み干した。
俺ももらおーと言って切原はパックに手を伸ばす。


「それでさ、折角だから平日にしようよ。一泊二日でさ。最低一泊はしないとね…」
「…」
「平日じゃないと意味がないでしょ。学校も部活も無断でサボらないと意味がないじゃん。家にも連絡入れるのは禁止ね」


そりゃあ、ある日突然いなくなるのが北朝鮮拉致駆け落ちなのだけれど。
土日に行ったらそれはただの新婚旅行ごっこだ。


「俺ホントに金ねえよ。電車使うんだろ?」
「まぁ電車じゃないと駆け落ちっぽくないよね。大丈夫、俺とアンタなら小学生料金で行けるよ」
「お前はともかく俺はムリだろ!!!」
「うーん、まぁ30分も電車乗れば知らない町にくらい行けるんじゃない?(適当)」
「でもどこ泊まるんだよ。金ねえよ(2回目)」
「ファミレスとかゲーセンとかマンガ喫茶とか公園とか…色々あるでしょ」
「明らかに補導されるだろ」
「一晩だから逃げ切れるんじゃない?」

俺とアンタが組めば最強だよ、と言って越前は切原に口付けた。
逃げるのにテニスの腕前は関係ないような気がする、と切原は思ったが言わなかった。


「補導なんかされたらレギュラー剥奪だろーなぁ」
「当然だね」
「…」
「そのくらいのリスクと覚悟がないと駆け落ちとは言えないでしょ」


まぁ、確かに。
越前の家族も切原の家族も、当然心配して怒るだろうけれど。
―むしろ、何よりもいちばん恐ろしいのは。


「副部長にバレたら殺されるだろうな…」
「…俺も部長にブッ殺されるのは覚悟済み。」

2日学校と部活をさぼっただけでも、あの副部長はこの世のものとは思えない恐ろしい形相で自分を殴るだろう。
その理由が関東大会決勝で自分を負かした青学のルーキーとのカケオチごっこだなんて知られたら‥―
―考えただけでも恐ろしい。


「俺もう生涯ラケットすら握らせてもらえないだろーな…」
「それは俺も…」
「でもバレるんじゃねーの?俺とお前が同時に休んでるって知られたら」
「…まぁ、アンタの部と俺の部で連絡取り合われたらほぼバレるだろうね。」

まぁそこはカケでしょ、決闘でもしてるんじゃとか思われるかもだし、と越前は言った。


「駆け落ちも決闘もそう変わんねえだろ…;」
「まぁ駆け落ち気分は盛り上がるんじゃない?」
「そりゃそうだけど…(そんなことで盛り上がっても…;)」
「それじゃあ決まりね。今週の水曜日から木曜日でいい?」
「今週かよ!!」
「水曜の朝5時にいつもの駅で待ち合わせしよ。もし行きたいところあったら考えといて」
「行きたいところもクソもないと思うが…」
「そういやアンタ起きれるの?」
「責任取ってお前が起こせよ…」
「判ったv」





***



そんなこんなでやって来た水曜日。
越前の電話で無理矢理起こされた切原は、制服を着てテニスバッグにラケットではなく私服やらお菓子やらごちゃごちゃと詰め込んだ。
なんせ何があるか判らない。貯金箱をひっくり返して出てきた500円玉を全てサイフに入れる。
母親に遠くで試合があるから、とか何とか嘘をついて後ろめたく家を飛び出す。


(なんで俺、ここまでしてんだろ…)


そんな気持ちが頭を掠めたけど考えないことにして切原は待ち合わせの駅に向かった。
考えてみれば今日自分が帰って来なければ間違いなく母親が学校に連絡を入れるだろうし、そうしたら学校や親戚を巻き込んで、嫌でもとんでもないことになりそうだ。
せめて捜索願いが出されないことを祈るのみ。
自分の家はともかく、越前の家族は1日くらい帰らなかったところで大して騒がないだろうし(多分)、最悪越前と一緒にいることさえバレなければいいのだ。

急に家出してみたくなったんッス〜とか何とか真田や警察の前で言い訳している自分の姿が目に浮かんで、切原は溜息をついた。
昨日と一昨日は、カケオチごっこのことが気になって微妙に挙動不審だった気もするし、真田はともかく柳あたりはすぐに気付きそうな気もする。
たった2日とはいえど、もし彼らや警察に全力で探されたら、あんまり逃げ切れる気がしない。
真田に殴られる程度で済めば良いが、とてもじゃないけどそんな気はしなかった。


(これでこそ駆け落ち…ってか?)



そんなことを考えているうちに駅に着いたので、トイレで私服に着替えて帽子を深めにかぶる。
約束のプラットホームでやけに荷物の少ない越前が、自分の姿を認めて微かに笑った。


「―良かった、来てくれて」


―ドキッ。

越前は何の作戦なのか、妙に切なげな表情をしてこんなことを言ったので切原は心臓が跳ね上がった。


(な、なんか本当に駆け落ちするみたいだ…。もうごっこは始まってるのか!?俺も何かそれっぽいことを言うべき??)



「…約束しただろ」


切原が俯いて結局当たり障りのないことを口にすると、越前はうん、と返事をして誰もいないのをいいことに切原の頬にキスをした。


「ここから、一番辺鄙なところに行く電車に乗ろ。」
「あんまり辺鄙だと何にもないんじゃあ…;」
「そうかも(笑)」

いいじゃん、行き当たりばったりで、と越前は笑った。









もう2度と連載はしないって…しないって…_| ̄|○
だって長くなりそうだったんだもん!とてもじゃないけど終わりそうになかったんだもん!_| ̄|○
出来れば3回とかに収めたいんですが…アハハ…

まぁそれはともかくとして。
カケオチというのは、私がむかしっっっからとても好きなテーマでありますw
(あのオリジを読んでた身内は身に覚えがあるはずw)
これはこないだ出身地でJRに乗ってる時にイキナリ思いついた話です。
中学生ってのはこういうごっこ遊びで自分たちに酔ってるんですよ。それが萌えなんですよ(意味不明)
ちなみに私は迷子ごっこをやってました 迷子になろうと試みる遊びです(意味不明)
つかリョ赤ってふたりとも子供なのが萌えー!っていっぱい言ってたけど世間はそれをショタと呼ぶ罠に今頃気付きましたw
中学校の時私も良く切羽詰って貯金箱ひっくり返してたなぁ…w(遠い目)ロクに入ってなかったけどナー
つか私は中3まで小学生料金で乗ってましたが何か?(最悪)
あー恋人な自分たちに酔ってるリョ赤もえー(意味不明)
世界に自分たちしかいないとか錯覚してるリョ赤萌えー(意味不明)
この話の親戚として、別れ話ごっことか書きたいですね。つーか、書く。(決定かよ!Σ(´∀` ))
リョ赤にしては明るい話で楽しく書けました。(いつも書いてるのっていったい…_| ̄|○)
あー明るい話の方がすきだ…つーか書いてて楽しい。
跡宍じゃこれは書けないね…だって宍戸がカケオチしようとか言ってもべっこが断るもん(キッパ)
ところでいつどこで何時何分何秒って今の子も言うんですかね…?(謎)

ま、赤也は何だかんだ言って越前の頼みは断れないんですよ…w
あのこは意外と心臓小さそうだし、前日とかはめっちゃどきどきして眠れなさそうw(赤也に夢の見すぎ)

そうそう、冒頭の映画(セリフも)は、適当に考えただけでぜんぜん実在してません(おい)
何かせめて失楽園とか(お前の中のカケオチはそれかよ!)借りて来て見ようかと思ったんですが面d(ry)
Kanonっていう本を出そうと思ってKanonをプレイするのは面倒がらないくせにね!w 
だってKanon好きなんだもん(ノД`)
どうでもいいけどドリキャスはAボタンとBボタンの配置をナントカしてください(土下座)
しょーがないんで天使禁猟区のカケオチ話でも読んでおきます(それもどうかと)

とりあえず今度こそ数ヶ月とかかからないように頑張って書きます…予定です