in my room
「今日は跡部の部屋じゃないんだね」
慈郎は大きな客室を見回して言った。
小さい頃から跡部家に何度も何度も来ている自分だけど、ここは初めて入った部屋ではないだろうか。
「余所見すんな、次は問2。宿題教えてって言ったのはお前だろ」
「…いや、いつもと違う場所だから落ち着かなくて…この部屋何か広いし綺麗だし緊張しちゃうよ〜」
「…それは俺の部屋が汚いという意味か?」
「違うよ、ここは高級感溢れすぎって言うか…」
「…俺の部屋は高級感溢れてないか?」
「ウン(きっぱり)」
「…」
3年の夏休み。
幾らエスカレーター式の氷帝学園でも、余りにも成績が悪いと高等部に上がれないことも十分ありうる。
「跡部の部屋行こうよォー。ここ落ち着かない…」
「…俺の部屋…は…宍戸が寝てんだよ」
跡部がほんの少しだけど赤くなって予想外の返事をしたので慈郎は唖然とした。
「…なにそれっ!?宍戸が来てるなら先に言ってよ!俺お邪魔虫じゃん!!」
「…いや…アイツお前と一緒で当分起きないし…ヒマだったし…」
跡部は基本的に慈郎の頼みを無下には出来ないのだ。
慈郎は溜息をついた。
「…別に宍戸がいてもいいから移動しようよ。別に触ったりしないし…」
「何だよソレッ!!お、おいジローちょっと待てって…」
教科書を抱えてすたすたと廊下に出て、迷うはずもなく跡部の部屋に向かって一直線。
「…じ、ジロー、俺が悪かった。日を改めよう」
「何焦ってんのさ?だいたいもう2時だよ。まだ寝てるのもどーかと思うけど。甘やかしすぎじゃない?」
「お前には言われたくないと思うが…」
慈郎はもう返事をしないで、問答無用とばかりにがちゃりと跡部の部屋のドアを開いた。
見慣れた跡部の豪華な特大ベッドに、宍戸が眠っていた。
出窓から入る風を長い髪に浴びて大きな高級ベッドにひとりで眠っていたので、童話か何かのお姫様みたいだった。(10mくらい離れて見れば)
「…何か、凄く大事にされてるお人形みたいだね(遠い目)」
「何言ってンんだ!?ありえねぇだろ!!」
「…そんな感じ、雰囲気が。ねぇ跡部、あの下ってもしかして裸?」
「ジロー!てめぇいつからそんな下品なことを言うようになったんだ!?あいつだな!日吉だな!?アイツの教育の賜物だな!?うぬぬぬ…ブッ殺してやる」
慈郎は日吉に手を出したら絶交!と言い捨ててベッドに寄って宍戸の顔を覗き込んだ。
「…あわわ…ジ、ジロー‥」
「布団めくってみてもいい?」
跡部は顔を青くしてブンブンと勢い良く首を振った。
勿論慈郎だって本気で布団をめくってみたいと思ったわけではなくて、今まで見たこともないくらい跡部が慌てているのが面白かっただけだけど。
「まぁ布団剥がなくても首のキスマークは良く見えてるけどね(笑)」
「そんなもん見るな!」
跡部は赤くなったり青くなったりしながら、慈郎を無理矢理ベッドのそばから引き剥がした。
「宿題しに来たんだろ!宿題!そんな勉強にならないもの見ててもしょうがないだろ!」
「跡部ってば赤くなっちゃってかわいーいv」
「…そうじゃねえだろ!!」
(起きるに起きられねぇ…!)
これだけ騒げばしょうがないけど、宍戸はしっかり目を覚ましていた。(ありえねぇだろ!!のあたりで)
しかも何やら跡部が今までになく狼狽して照れたり焦ったりしているようなので、目を開けたくてたまらなくなっていた。
(赤くなってる跡部…焦ってる跡部…どもってる跡部…俺も見たい!!)
跡部は少なくとも自分の前ではいつだって沈着冷静で、はじめてのキスだってセックスだって顔色ひとつ変えないでしれっとソツなくこなし、照れたりだとか焦ったりだとか、そういうことは全部自分の役目だった。
(クソッ…ジローめ!ひとりで跡部のオイシイとこ独り占めしやがって…)
でも自分がこのベッドから飛び起きようものなら、途端に跡部はいつもの冷静沈着な彼に戻って、いつまで寝てんだよ、そこの窓から捨てるぞ、とか言い出すことは明白だった。(実際パンツくらいしか穿いてないし)
なので宍戸はもう少し寝たふりを続けて、もう少しだけふたりの会話を聞いていることにした。
「…お前こそどうなんだ?日吉に無茶なプレイとか要求されてないか?」
跡部は苦し紛れに話題を慈郎の方へと反らそうとした。
アイツ鬼みたいな顔してるし、と続けると慈郎に睨まれた。
「日吉は俺には凄く優しいよ!」
「…ふーん」
「だいたいそんなこと聞くってことは自分の方が身に覚えがあるんじゃないの?」
「…いや…俺は…むしろどっちかっていうと宍戸の方が…」
「…」
「気分じゃないってあしらっても平気で上に乗ってくるし…」
「…で、流されちゃうんだ?」
「…」
「…跡部と宍戸って意外とお似合いだよね」
「…そうか?あまり嬉しくないが」
ホラ、問2解けたのか?と跡部が尋ねると慈郎は、うーん…とうなった。
「ホラ、余所見してんな!そんなに宍戸が気になるならそこの窓から捨ててもいいぞ」
多分死なないし、と跡部は続けた。
「…いや、あの身体を跡部が抱いてるんだなーと思って…証拠を見てしまったというか…」
「…」
「跡部もなかなか趣味が悪いよね」
「もう言わなくていい…(力なく)」
(…うぬぬ、ジローのやつ好き放題言いやがって…!!)
宍戸が人知れず怒っていると、慈郎がクスリと笑って言った。
「…ねー、何か俺も眠くなって来ちゃったよ…宍戸の隣で寝てもいい?」
「!????????」
跡部は青くなってまた全力で首を振った。
「ジ、ジロー、眠いならあんなショボいベッドじゃなくてもっといいのを用意してやるぞ!だからその…」
慈郎はくすくす笑った。
「冗談だよ、冗談。そんなに焦んなくったって…ああ面白い」
…勿論、慈郎は慌てる跡部が見たかっただけだった。
「本当、心底お邪魔みたいだから今日は帰るよ」
「そ、そうか…」
跡部はあからさまにほっとした様子で、土産を持たせてやる!何がいい?とか2学期から幾らでも放課後教えてやるぞ!とか色々言っていた。
そしてバタバタと慌しい足音が何往復した後で、ばいばーい、お邪魔しましたーという慈郎の大きな声が聞こえて来た。
どうやら本当に帰ったらしい。
それから暫くして、トントンと上品な足音が溜息と共に聞こえて来た。
跡部が部屋に戻って来たようだ。
跡部は、はー‥とまた大きな溜息をついて宍戸が寝(たふりをし)ているベッドに座った。
(跡部…)
もう目を開けてもいいかな、と思う。
(今なら桃色に染まった頬の跡部が見れるかも…!!(萌))
しかし目の前がうっすらと暗くなって、跡部はどうやら自分を覗き込んでいるようだ。
(うわ…!何なに??跡部俺を見つめてる!?(喜))
そうして何か髪の毛に微かな感触があったと思ったら、次は口唇に何か柔らかいものが当たった。
それが跡部の口唇であることは、何度もキスした宍戸にはすぐに判った。
重ねただけの軽い口付けはその割には長くて、彼はゾクゾクした。
(うわ…!いったいどうしたんだ跡部!?(喜))
「…寝たふりはよせ、宍戸」
…え。
宍戸はパチリと目を開けた。
目の前にはいつも通りのあきれたような彼の顔があった。
「…跡部…本当に綺麗な顔してんなぁ…」
宍戸はうっとりして、すぐそばにあった跡部の首に腕を回した。
跡部は思いっきり顔を顰めて、第一声がそれかよ、と言った。
「…ジローに流されすぎって言われた」
「別に『すぎ』とは言わなかっただろ」
「…やっぱり起きてやがったのか」
「お前らがうるさいんだもん。それより良く判ったな」
「今近づいてみたらお前やたらニヤニヤしてるから…。まさかとは思ったが聞かれてるとはな」
「なんだ、今気付いたんだ。良かった〜」
「……ジローのやつ、俺がお前を甘やかしすぎとも言ってたぞ」
「…俺を甘やかしてる自覚あるんだ?」
「…」
跡部は溜息をついて、くすくす笑う宍戸の口唇を再び塞いだ。
「…お前もジローも黙ってた方が可愛いぞ」
「そういやお人形とか言ってたな。ジローってば目ェ悪かったっけ?(自分で言う)」
「…たぶん、俺に大切にされてるって意味だろ…(力なく)」
宍戸は判ってるよ、と小さく笑ってからキスに応えて口唇を開いた。
彼の髪の毛を揺らす微かな風が入って来る窓とカーテンを閉めて、跡部はベッドに沈んだ。
なんというか、フォローのしようがない小説…_| ̄|○
しかもこれマンガにしたかったんですが…描ける自信が全く無かったので。(画力的に)
何かもう…ラヴすぎですかね…(知らん)
つか2時まで寝てる宍戸っていったい…_| ̄|○ そして起こさない跡部っていったい…_| ̄|○
マ、私は平気で4時とかまで寝てましたがね(オイオイ!)
ちなみに4時になると流石のうちの母親でもブチ切れて叩き起こされました(それこそ甘やかされすぎ)
懐かしいっすねー(知らん)
それにしても、跡宍恐るべし、恐るべし…!!!(ガタガタ…)
さすがの私もやりすぎた気がします。(言いたいことはそれだけか)
つか10mくらい離れて見ればって…_| ̄|○ 何も見えないやん…_| ̄|○
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