HONEY BEE




「ジャッカルせんぱーい!」
「…わ!何だよ赤也降りろよ!」
「いやッス〜」


部活終了後、部室へと戻る途中で不意に切原がジャッカルの背中に飛び乗った。
この後輩のこういうじゃれつきはいつものことで、周りの部員たちも微笑ましそうに笑う。
しかし丸井ブン太はそんな後輩をハンカチを喰いちぎりそうなくらいギリギリと噛み締めて睨みつけた。


(赤也のやつ、ジャッカルは俺のだっていっつも言ってるのに…!!)



それに気付いた柳生が、丸井くん、ヤキモチやかなくても大丈夫ですよ、などと微笑んでくるがぜんぜん大丈夫じゃない。
だいたいお前の仁王はお前しか見てないからそんなことが言えるんだよ!と言い返したくなる。
ジャッカルの恋人は一応自分であるけど、彼はみんなにとても愛されているので自分はつねにハラハラしっぱなしなのだ。

(たぶん、ジャッカルも俺のことちゃんと見ててくれてると思うんだけど…)



はっと前を見るとみんなもう部室に入ってしまったようで、部室の中からしつこいくらいジャッカル先輩〜と言う切原の声が聞こえて来た。
丸井はたまらず携帯電話を取り出すと、入院中の部長である幸村の番号を探した。
幸村は、切原の恋人でもある。


『…もしもし』
コール3回くらいで、幸村の澄んだ声が受話器の向こうに響いた。
切原にはもったいないんじゃないかと思うくらい綺麗で才能のある立海テニス部の部長。


『…ブン太?どうしたの?』
用件なんか聞かなくても判ってるくせに、幸村はちょっと高めの柔らかい声で優しく用件を尋ねた。

「…ゆきむら」
何となく泣きそうになりながら、何とか名前を読んだ。


「…早く帰って来てよ。お前がいないと赤也がジャッカルにばっかりひっつくんだ」
彼は受話器の向こうでまたそれ?とクスクスと笑った。


『まだ俺が入院して1週間だよ。先が思いやられるなぁ』
「何とでも言ってよ。もう俺耐えられない…」

幸村は大げさだなぁ、ブン太は、と笑いながら言った。


「おおげさじゃないよ。これでも我慢してるんだ」
『赤也もきっと淋しいんだよ、許してあげてよ』
「…それは、判るけど」

あの後輩はこの美しい部長にべったりだったので、たぶん今死にそうに心細くて淋しいのだろう。
もちろん自分も部のみんなも、幸村のことが心配で早く元気になって欲しいとずっと思っているけど、それでも恋人である切原の気持ちには遠く及ばないに違いない。


「でもそれとこれとは別だよ。赤也にジャッカル奪われたら俺も幸村奪ってやる」
ありえないよ、と幸村はケラケラ笑った。

『だいたいそんなことしたらブン太が赤也に殺されるよ』
「……確かに」
切原が真っ赤な目でサスペンスの女みたいにナイフなど突き立ててくるところを想像して、丸井は身震いした。
とてもじゃないけど勝てる気がしない。


『大丈夫だよ、ジャッカルはブン太のこと好きだから』
「根拠はある?」
『なに、自信ないの?』
「…そうじゃないけど。じゃあさ、幸村から見て俺と赤也どっちがかわいい?」
『そんなの赤也に決まってるじゃない』
「…じゃあジャッカルもそうかも…(蒼白)」
『ジャッカルはキミに決まってるでしょ』

幸村は呆れて言った。


『ブン太だって堂々とジャッカルに甘えればいいじゃない』
「…そ、そんなの、恥ずかしいよ!」
『とにかく、あんまり気にすることないよ。てゆうかしっかりしてよね』
「…何が?」
『俺だって赤也をあんまり他の人に触らせたくないからね』
「…う、うん」

…そりゃあそうか、と丸井は思った。
いつもの愚痴を一通り言い尽くして、じゃあまた見舞い行くし、と電話を切った。
部室の横にしゃがんで、何となく部室に入りたくないなぁと思っていると、制服に着替えたジャッカルが部室から出て来てすたすたと丸井の前に立った。


「…何拗ねてるんだよ、お前」
「べつに、拗ねてないもん」
「…お前のどこが拗ねてないんだよ」

ジャッカルは溜息をついて、丸井の手を取るとぐいっと引き起こした。


「…みんな幸村の見舞い、行くって。…行くか?」
コクンと頷くと、ジャッカルはぽんと丸井の頭に手をのせた。
そんなん行くに決まってるのに。
もっと気の利いたこと言えばいいのに。
まぁそういうところが好きなんだけど。


「早く着替えて来いよ、待っててやるから」
「…赤也は?」
「もう先に行ったよ、ちょっとでもふたりきりになりたいんだろ」

やっぱりそれで拗ねてたのか、とジャッカルは言った。


「…ジャッカル、俺と赤也どっちがかわいい?」
「何だそれ…」
「どっち!?」

ジャッカルは褐色の頬を少し赤くして、そんなんお前に決まってんだろ、と言った。

「…ほんと?」
「嘘言ってどうすんだよ」

良かった〜と彼に抱きつく。


「あー‥やっぱりジャッカルのそばは安心する〜」
「…アホか」
「俺ジャッカルに捨てられたら死んじゃうよ〜」
「…バカ」

手を伸ばすとジャッカルは当然のように丸井の手を取ってくれた。


(…コイツ赤也なんかより全然子供だな)

まぁそういうところが好きなんだけど。


「…お前がそうやって拗ねるから、赤也も面白がって俺にくっついてくんだよ」
「え、そうなの!?Σ(゜Д゜;)」
「アイツはそういうヤツだろ。今幸村いなくて相当こたえてるみたいだし…」
「うぬー、バカ也めぇー‥(聞いていない)」
「ほら、早く着替えて来いよ。仁王たちももう行ったぜ」

アイツらは最初からみんなで一緒に行く気ないだろ…いっつもふたりで手ェ繋いでさっさと行っちまうし協調性ゼロ…と丸井は思ったが、とりあえず恋人の言うとおり着替えて来ることにした。


部室のドアを開けて、ふと振り返る。



「―ねぇジャッカル、俺のこと好き?」
「…何だよ急に」
「俺がジャッカルのいちばん?」

ジャッカルは暫く黙っていたけれど、あっさりと肯定の言葉を口にした。

「…そうだよ」


丸井はその言葉に酷く満足して、花のように笑って部室のドアを閉めた。




ジャブンみたいなカプは書きやすいです。(跡宍の影響)
頭の悪い受が大好きです。(跡宍の以下略←略した方が長以下略)
本当に好きです。
このテイストからは暫く逃れられそうにありません。(跡宍の以下略)
何にもできない受が好きです。(跡宍以下略)
取り柄のない受が好きです。(跡以下略)

ええと、氷帝もそうなんだけど、みんなでワイワイやってるのが中学生っぽくて好きです。
みんな仲良しなのが好きです。
だからこういうドタバタ劇場みたいな小説ばかり書いてしまいます。
ジャッカルはみんなに愛されてるといい…!
ブン太は毎日やきもち焼けばいい…!
毎日ゆっきーに電話でグチればいい…!
幸ブン(幸)好きなので…(それはもう判った)
ブン太は赤也よりも子供です。辛い思いをしてないぶん。(オイ)
赤也はいろいろと辛い思いをしてる子(決め付け)ですから…(遠い目)
↑赤也は6歳児くらいと前言っておいて、それならいったいブン太はいくつなんだ…(滝汗)
ブン赤ブンも嫌いじゃないけど、それだったらブンジロの方が好きw

つかタイトル全然合ってない_| ̄|○(ジャブンよりも幸&ブンの方が多いし…)
この言葉の響きが好きなのでこんなんに使うのも…って感じだけどあらゆるところで良く見かけるので別にいいか…と思ってこれに。
とりあえず赤也はいつ部室を出たんだ…(密室!)