(何度も何度も争ってきたけど、こんなことで怒るんだな、アンタ―‥)

とりあえず殴られたのがムカついたので殴り返す。
純粋に力の強さだけを問えば、たぶん自分の方が強い。





                 硝 子 の 罅







羽交い絞めにして右の頬をグーで殴る。
彼は口唇を噛み締めると今にも凶器など取り出しそうな目で自分のことを睨んだ。


「…いい目じゃねぇか。やっぱりそうじゃねえと王サマらしくねえよなぁ」
遊戯は何も答えなかったけれど、彼も殴られたのが相当腹が立ったようで、羽交い絞めにしてい
る自分の手を強引に振り解いて一瞬の隙を突いて突き飛ばすと、更にその上に圧し掛かってバク
ラの口唇を強引に塞いだ。


「…王サマ、何怒ってるわけ?」
「…あ?別に怒ってねえよ」
「殴ったじゃん」
「お前だって殴っただろ」
「それは王サマが殴ったからだろ」


口唇の中が切れたらしく血の味がした。
慣れた鉄の味だけど少し平和ボケしてしまった今は懐かしく感じる。
そんな自分が忌々しい。
チッ、と言って口唇の端の血を拭う。



「別にお前が誰と寝ようと構わねえんだよ、俺は」
「ならなんで殴んだよ!」
「…お前が誰のものか、躾けてやろうと思ってな」
「つまりそれは妬いてるってことなんじゃねえの?」
「お前は文法が理解出来ないだけだろ」



何とでも言えばいい。
俺様が他のやつと寝るのがムカつく?
俺様が他のやつの名前を呼ぶのが許せない?
俺様がアンタだけを見てないと嫌?
―怒るってことは、それを肯定してることと同じだ。
どんなに言い訳したってそれはただの独占欲に過ぎない。



「王サマァ、俺様を独占したいの?」
ヒャハハ、とバクラは笑った。

「…だってお前は俺のものだろ?」
遊戯は平然と言った。

「へぇ?初耳だな。いつから?」
「…昔から」


(…!?)


ここで言う昔とは、当然ファラオと盗賊王だった頃のことだろう。
でも冗談じゃない。
殺し合った記憶はあるけど、そんな行為に及んだ記憶はない。



「…そうかも知れねえな」

でも何となく、違うとは言い切れなくてバクラは曖昧な返事をした。



「今度はこっちが聞かせてもらおーか。なんで本田くんと寝たんだ?返答次第ではまた殴るぜ」
「…別に。退屈だったし」
「…じゃー俺が他のやつ抱いてもいいのかよ」
「勝手にすればァ?城之内でもシャチョーでも杏子でもご自由に」


ああそう、と言って遊戯は顔を顰めた。
明日あたり海馬でも襲いに行くかなァとこれみよがしに言っていたけれど無視した。
ただその顔を見てバクラは少しだけ満足した。




一方通行の憎しみは、まるで見込みのない片想いみたいで気分が悪い。
アンタの大切なモノを全部壊したい、アンタの心を傷つけたい、もう立ち上がれないくらい、
死んでも自分のことを忘れられないくらい―‥
―村が焼かれたあの時から、ただ星に祈るように願っていたのはそれだけ。
冷たすぎる夜の砂も、昼間の灼熱地獄もそれだけで生き抜いて来た。
この気持ちだけで生きていけると思っていた幼い日。



まぁもうどうだっていいけど。
どうせ進む道は決まっている。
この先にあるものは破滅で、それ以外には何も無い。
運命の歯車は回り続ける。
映画の中の時限爆弾みたいに、危機一髪で止まったりはしないのだ。
あと何年、何ヶ月、何日、何時間後にそれが来るのかは知らないけれど、それで今度こそ本当に
全てが終わるだろう。
こんな関係になってしまったのは予定外だったけれど、それで大して運命が変わるわけでもない。


さすがにこんなに気が遠くなるくらいの年月、あてのない鬼ごっこをしていると疲れたのだ。
だから指折り数えて、終わりが来るのを待ってる。
このまま時が流れて、この気持ちが砂のように流れてしまう前に。
アンタという檻から開放される日を―‥
永い永い間それだけが世界の全てだったなんて滑稽だ。
でも実際そうだったのだから仕方がない。
時は戻らないし、もう生き方なんか変えられない。
アンタの檻の中は狭すぎて、身も心も完全に狂ってしまった―‥




「とりあえず、今度他のヤツとやったらブッ殺すぞ」
「…ハイハイ、判りましたよ」

何だよ、いきなりやけに素直だな、と遊戯は目を丸くした。




だってわざわざそんなことしなくても、彼はどうせ自分のことを殺したいと思う日が来るから。
どうせ期限付きの関係なら早い方が良いと思ったのだけれど。
わざわざ自分から壊す必要もないだろう。
いつか宿主サマと見た、粉々になったワイングラスが巻き戻されてきらきらと輝くCMを思い出した。
未来は変わらない。
あのビデオを早送りしたら、あのグラスはまた元のように粉々になる。
―未来は決まっている。



だから、引き伸ばしたいとアンタが願うなら少しくらい引き伸ばしてやったっていい。
どうせもうヒビは入っているのだ。
それはこういう関係になった時からでも、彼の国が自分の村を焼いた時からでもなくて。
―最初から。生れ落ちたその時から。
この運命にはやがてこうなるようにと、小さな小さな、微かなヒビが入っていた。
いずれ粉々になるようにと。跡形も残らないようにと―‥


終点は地獄だと判っているジェットコースターにいつまで乗っていられるのか知らないけれど。
引き伸ばせば引き伸ばすだけ、その時が来た時アンタは傷つくだろうから。
たとえ高級なグラスなんかじゃなくても、100円均一のカップでも、長く使えば愛着も沸くだろう?






―傷つけばいい。













中途半端に判りにくいですな。
これは拍手に置いてた小説の本→バク部分を抜き取って書いただけ―のつもりが、なんか変な方向に話が…_| ̄|○
私は王バク←本田ですw なぜって元本バクだからw(注:本田はマジ)(あんた真田→幸赤でもそんなことを…)
ま、つまりはどうせ未来には争うべき王サマと付き合ってるのがうざくなって自分から終わらせようとしてみたけどやっぱり切れませんでした、みたいな話(判りにくすぎ)
グラスのCMはクレジットカードかなんかのCMだったと思う…。(うろ覚え)

つか私は復讐テイストが大好きなので(屑帥といい)王バクでえらく興奮していますがたぶんこれこそ期間限定だと思うんで…(いちおう言っておこう…飽きっぽいから)
でも何かそれにしたって書きたくてたまらないので、こうして別ジャンルを置く場所を作ったんですが。(バカだ…)
つか最初の小説を拍手に載せたのは、たぶんあれふたつ書けば満足するだろうと思ったから…
満足しなかったけど_| ̄|○

つーかこれは最後を「傷つけばいい。」で終わらせたいが為に書いた小説なのでかなり苦しいですね…
ま、軽く流してください。(流せない…_| ̄|○)
もっとスレた感じの荒んだ王バクが書きたいんだけどなんか私が書くとマジラブになっていけませんな…w
でも王バクも王←バクなので書き易いですw
ていうかもうその逆(攻→受テイスト)は書けない悪寒_| ̄|○

今後は王バク←本田とか、王バク+宿主サマとか書きたい…(夢だけは膨らむね!)
つかバクラたんは自分で100均のカップだと言ってるあたりが涙を誘うというか…ハハハ(渇笑)
マ、王バクは最初っから終わりが見えてるところが萌えポインツっていうか。
色々捏造話とか書いてもいいのかな?(知らんよ!)楽しみだなぁ、ウフフッ(ひとりでやってろ)


□追記
こないだのアニメで本当に時が巻き戻っていたのでビビリました…あれは何だったんだ?原作もああなの?(単行本を読め)
でも幾ら巻き戻ったところでまた同じ未来が来るというか…。私が言いたかったのはまさにそれなんだけど、それをオフィシャルでやられてもはや何とも…バクラたん!!(何)


□更に追記
これも04年の夏くらいに書いたやつだと思います…一応凍えるその手を離してとリンクしてるみたいだけど判りにくいというか何というか…
城海の頃に本バクだったので、それが尾を引いている模様w でもいきなり本田とか出てきて判りにくいだろ!と心の底から言いたい…
時が巻き戻ってるアレ、原作でもああだったんだね…。
アニメ見た時は幾らなんでも無理があるだろと思ったんだけど、原作はぜんぜんそんなことなかった。流石カズキ。(そこか)
つか期間限定とか言ってるけど、これ書いてから1年経ってもまだ萌えている件について_| ̄|○
しかも私が書くとマジラブになるとか言ってるけどこれでもマジラブ度を6割くらいは抑えている件について_| ̄|○
つかこの時期に書いた小説は、遊戯王の一人称が「」じゃなくて「オレ」ってことを見事に忘れてるけどあんまり気にしないで下さい(結構気になるよ!)

050830


ブラウザバックプリーズ