「日頃の行いが悪かったから」



そんな声があちこちからポツポツ聞こえる最悪な日。
最期の日をこんな風に見送られるなんて、いったいどんな生き方をして来たのだろうとまるで他人事のように思う。




―父親が死んだ。
その「知らせ」を聞いてこの街に帰って来てから雨が降り始め、「それ」が始まる頃には土砂降りになった。
―それでも、この自分には今日この日こそが晴れの日なのだ。多分。









A FINE DAY





小さな頃、まだ母親が生きていた頃に良く聞かされた。
晴れの日に雨が降るということは、日頃の行いが悪いのだと。
あんな悪徳親父に嫁いで来た女性が、何故あんなに綺麗で穏やかな優しい人だったのか、自分には未だに判らないのだけれど。





「黒スーツ珍しいですね、と。」

「…レノ」


ざわざわと参列者たちが帰って行く中、見慣れた部下が少し笑いながら近寄って来た。
もっとも久しくここを離れていたので、仕事で会うことはあったにせよ久しぶりだったのだが。
雨足が酷いので誰ひとり立ち止まることもせずに足早に過ぎ去ってゆくが、
彼はむしろ人の波に逆らうように逆方向の自分の方へずんずんと歩いて来て、薄く笑いながらこう言ってきた。




「…葬式に白で来いと?」

「アンタならそれくらいするかな、と思ったんだぞ、と。ねぇ新社長?」

「早速社長呼ばわりか。嫌味なら後で聞いてやる」



自分と父親の仲の悪さは有名だった。彼もそれを知っていてこんなことを言うんだろう。
やり方がかなり汚なかったのは知っている。
自分も人のことを言えたことではないが、ろくな死に方をしないだろうと思っていたら、
その通りに化物のような男に実にあっさり殺されてしまった。
―長い長い、銀色の刀を背中からブスリと突き刺されて。
そんな変わり果てた姿をこの目で見ても、眉毛ひとつ動かなかった自分ももうとっくに狂っているのだろうか。



「社長も気の毒だよなぁ。悪い人じゃなかったんだけどな、と。」

レノは、明らかに目の前の墓に入っている人物を指して社長、と呼んだ。
あの父親を悪い人じゃないとはお人好しを通り過ぎて何ておめでたいやつだ、とルーファウスは思った。



「とりあえずお前はもう仕事に戻れ。明日からは俺の管轄で動いてもらうからな」

「はいはい、と。」


別に俺は誰の下だろうが構いませんよ、と舌を出してレノはくるりと背中を向けた。



(誰でも、ね…)

(…ツォンの言うことしか聞かないくせにな)







「…」



自分以外まわりに誰もいなくなったことを確認すると、ルーファウスは傘を差したまま腰を屈めて両親の眠る墓をじっと見た。
あっさり死んだものだな、と思う。
数年前自分が暗殺を計画した時はいとも簡単に見抜いたくせに、あんな化け物に殺されるとは。
神羅のトップを守り続けるために彼は普段から異常に警戒心が強くて、食事なんかも毒見したものしか食べなかったくせに。

冷たいものがツゥ、と頬を流れるのが判った。
それは明らかに涙というものだったけれど。
泣いているのは別に悲しいからじゃない。―ただの恐怖だ。
自分の時は、こんなものじゃなくて、もっと悲惨なことになるだろうから。
浴びせられる罵声も、土砂降りの雨も、こんな、父親のそれとは比べものにならないだろう。
―だって、自分は彼以上の修羅の道を選ぶのだから。






「ルーファウス様、風邪をひきますよ」


誰もいないと思っていたけれど、良く知っている誰かがいたらしい。
振り返ると黒い傘を持ったツォンが立っていた。



(―いつの間に…)



「先日クラウドと戦った傷に触ります」

「…そう言えばそんな男と会ったな。平気だ」

「…泣いておられるのですか?」


フフ、とルーファウスは薄く笑った。



「そうだ、悲しくてな」

「…」



(そう、こう言えばお前は優しくしてくれるだろう?)



ツォンは黙ってルーファウスを抱き寄せた。
あまり喋るのが得意ではないらしい彼は、昔からいつでも自分に対しては子供をあやすような態度で、
年若い頃は何度も子供扱いするなと本気で怒って抗議したものだった。
でも、自分はもう子供じゃない。
どう言えば彼が怒るのか、悲しむのか、喜ぶのか、手に取るように判るようになったけれど。
年を追うごとに馬鹿な女のように、こういう術に長けてきて嫌になる。




「ツォン、どう思った?」

「何がですか?」

「…親父の死に様」



ツォンは一瞬黙って、ひどいですね、とボソリと言った。



「…そうか、なら覚悟しておけよ」

「…どういうことですか?」



ルーファウスは笑って、抱き寄せられたその背中に腕を回す。
今まで持っていた傘がバサリと落ちて、ツォンが慌てて自分の傘をルーファウスの頭上に差し出したのが判った。
一面の血の海。背中に突き刺さった長い銀色の刃。
―あの光景をお前は、恐ろしいと思う?





「…俺の時はもっと酷いからな」


フワリと笑った瞬間、ツォンの表情が強張るのが判った。
怒らせたかな、と呑気にルーファウスが思っていると、傘を持っていた筈の彼の手がいつのまにか自分の身体に回っていた。
黒い傘はあっさりとツォンの手を離れ、バサリと音を立てて落ちたと思ったら強風に巻かれてどこか遠くに行ってしまった。
傘に護られていたふたりの身体は豪雨により呆気なくびしょびしょになる。
そしてツォンはきっぱりと言った。




「…えぇ、覚悟してます」


「ルーファウス様の目指す道がどんな道でも、私はアナタと共に行くだけです」




ルーファウスが驚いて彼を見上げると、ツォンはいつもよりもっと真剣な顔をして、お母様と約束しましたから、と言った。




「…それだけか?」


安っぽい恋愛映画のような台詞だ、と自分でそう思った。



「…いいえ」



ツォンは少し笑ってルーファウスの口唇に軽くキスをした。
―愛していますから。








***





―おとうさんを、うらまないでね



母親が死ぬ間際に、確かそんなことを言っていた。
どうして、ルーファウスがそう言うと、母親は儚げに笑った。




―だって。


―おとうさんが死んだら、あなたひとりぼっちになるのよ…?




そう言って笑った後で、母親は部屋の隅にいたツォンを手招きして呼び寄せた。
酷く幼かったけれど、まるで映画のワンシーンのように良く覚えている。





―この子を、よろしくね





『はい』


『この命にかえても』




神妙な表情で母に誓うツォンを見て、ひとりじゃないよ、ツォンがいるもの―そう思ったことも覚えている。
良く、覚えている。







零れ落ちる涙を、ツォンが優しく舐め取った。
そのまま口唇をゆっくりと塞がれて、優しいキスに頭の芯が痺れそうになる。
こんな風に、どれだけこの男に甘やかされてきたのだろう。



「お前は泣いていると優しいから好きだよ…」

「泣いていらっしゃる時だけですか…?」

「それは悪かった。訂正しよう」


ルーファウスは笑って、甘いキスに応えて口唇を開いた。







泣いているのは、悲しいからじゃない。
ただの恐怖と、それから。
―歓喜?



―やっと死んでくれた。
どんなにこの日を待ったか判らない。
どんなにか夢見ただろう、彼の手にあったものをそっくりそのまま、自分のものにするこの日のことを。
彼の持っているものが欲しかった。どうしてだか判らないけれど、たまらなく欲しかった。
単に貪欲だったのかも知れない。
とにかくやはり、今日この日こそ晴れの日なのだ。


それでも。
父の変わり果てた姿を見た時からどうしてもひとつだけ、胸に燻る炎のように後悔していることがある。

―あんな化け物に殺されるくらいなら、あの時本当に、自分の手で殺しておけば良かった。




最初考えてたのと全然違う話になったよ…自分で書いてて笑いが止まりませんw(オィ)
三代目の葬式みたいな感じにしたかったんですが…(@なると)(三代目に失礼すぎ!!)
なんかあらゆる点で矛盾してますがあんまり気にしないでください(無理)
当初は、アレクシスばりのプレジデントカイン伯爵ばりのルーで、(@ゆきかおり)
俺はアンタの呪縛から逃れる!」的ありきたりなアレを書くつもりだったんだけどw
でもプレジデントにアレクシスは無理でした…(当然)
ましてやルーときたら、プレジデントがせひろすに殺られて喜びまくっていただけじゃなく、
あの子数年前に
プレジデント暗殺を画策してたことまで発覚したから…(遠い目)
暗殺まで計画しといて、カタージュを親不孝者呼ばわりな社長萌え…!!
まぁこの小説では、あえてワザと殺さなかったかのような設定にしておきます…ハハ…(渇笑)(必殺捏造)
つーかなんかこれツォンルーですらないじゃんw
むしろ何かプレジデント×ルーじゃん!!(複雑な表情)
つかもしかして
葬式話書くって時点でプレジデント×ルーになるのは目に見えていたのでは…(今頃気付いたんかい!)
AC見る限り社長は海馬と同じで非ィ科学的だ!というタイプのようなので、せひろすのことは化け物呼ばわりw
つーかなんかルー様黒いけどあんまり気にしないで下さい。
だって暗殺…(まだ言ってる)
しかもツォンさんは
完全にリフと化してるし…_| ̄|○(サリンさんは主従萌えではありません)
やたらプレジデントの死に様(せひろすに刀をぶっ刺されたとこ)を強調してるのはギャグですんで!(そんなギャグは要らない)
>俺の時はもっと酷いからな…ここがいちばん書きたかったところw
実際ルー様あやうくロクでもない死に方(爆死)するところだったからな…!w
まぁもう私は生きていてくれただけでいいです(⊃Д`)
車椅子…(;´Д`)ハァハァそこ萌えるとこ!?)
とりあえず見る子というかNニワへ。
やっぱり敬語攻め特集買っておくべきだったよ!!!
050929


ブラウザバックプリーズ