バスから降りたら土砂降りだった。さっきまでは降る気配もなかったのに…天気が変わりやすい季節はこれだから嫌だ。
 いつものバイクをちょっと修理に出したから、通学にバスを使ったのだが。元々天気予報なんか見ないタイプだから仕方ないけど、こんなに降っているとちょっと途方に暮れる。
 バス停には屋根があるけれど、この雨の激しさではすぐそこのコンビニまで走ってもびしょ濡れになるだろう。
 激しい天気のせいかまわりも人通りが少ない。諦めて濡れて帰るか少し待ってみるべきか…
 待つのは得意な方じゃない。別にもう濡れてもいいかと思い凌牙が足を踏み出そうとすると、パタパタと誰かが駆け寄ってくる音がして―見慣れた顔が傘を差し出した。


「りょーがっ!!」

 …まるで、お使いに来た子供みたいな顔をして。



「この時間のバスだと思ったから。朝、傘持ってかなかったんだろ?今日、オフだったから届けに来ちゃった。タイミングばっちりだったな」

 Wはちょうど間に合って嬉しいのかにっこり笑った。―馬鹿だと思うけど、普通に笑うとあんまり可愛くて天使かなにかかと思うことがある。もちろん本人は無意識なんだろうし絶対に言わないけど。
 愛しくなって、凌牙はその腕を引き寄せて抱き寄せた。らしくないかわいい真似をしたりして、なにか裏でもあるのか。


「―!」
「休みだからってらしくねーことすんなよ。…でもありがとな」

 Wは街中で抱き寄せられて真っ赤になった。まぁ街中と言っても今日は人通りもないし気にするほどでもない。

 顎を捕らえて軽く口付ける―最近のWは気持ち悪いくらい素直でかわいくて、どうも我慢できない。―きっと、本来のWはこんな感じだったんだろう。色々あってすっかり捩じ曲がってしまったようだが。(まぁ、正直あれはあれでかわいい)
 この街から自分たちが独立して切り取られてしまったような―世界に自分とWしかいないような変な錯覚に襲われた。―こんなのはただの感傷だ、もちろんそれはよくわかっているけど。



「…W」
「なに、凌牙?」
「―好きだ」


 Wの真紅の瞳を見つめながら―つい、言ってしまった。


















「…!」


 この言葉をどんなに封印していたのか―Wは知らないだろう。昔のWには重すぎる言葉だった。だからずっと、どんなに激しく―深く愛し合った夜でも凌牙はそれを口にしなかった。
 自分もWが好きだと認めるのにけっこうかかったから、どのくらい待ったのか具体的にはわからない。でも待つのは苦手なのに良く待ってやった方だと思う。


 Wはぽかぁんとして凌牙を見返した。
 自分の気持ちはもう完全にWに伝わっていると確信していて、そろそろ大丈夫だろうとは思っていた。だけど本人は今言われるなんて思ってもいなかったに違いない。
 こっちもこんなに待たされたのに今更言ってやるのも癪だったし、せっかくだから(?)もうちょっと状況を見て効果的に言ってやりたかったのに、あっさり予定が狂ってしまった。


 そもそもWは最初から―凌牙が自分を抱くのは、自分が凌牙にしたことの仕返しみたいに思っていて―もちろん、それは決して間違いではなかったけれど。
 Wが通帳なんか持ってきた時、めちゃくちゃ腹が立ったし、とてもじゃないけど許す気になんてなれなかった。ひどいことを言って、ひどい抱き方をして、たくさん泣かせてやりたくて―実際その通りにした。
 それでも続いてきたのは、Wが凌牙のことをとても好きだったからだ。仕返しでも復讐でも―Wがそれを喜んで受け入れたから。
 まぁ凌牙もWを憎悪する反面―最初からWがかわいいという気持ちはあった。そうでなかったらいくら泣かせてやりたいからといって手を出したりはしなかっただろう。
 交わるたびに泣きながら好きだと言われて、Wの過去や傷やいつでも壊れそうに脆いところを知って―情が移ったのか、血迷ったのか、単に好みだったのかは知らない。
 ただ、危なっかしくて放っておけなくて、出来るならそばで守ってやりたいと思うようになった。泣き顔ばかり見たから、笑顔が見たくなった。―それが愛だとは思いたくなかったけど、他の何でもないのは明白だった。


 相思相愛なんて夢にも思っていなかったWも、そこそこ長く付き合ってさすがに察するところがあったらしい。
 凌牙の愛を受け入れるキャパシティがまったくなかったWはとても悩んだようだ―凌牙に愛される資格は自分にはないと思っていたのだろう。
 過去のことでWはとても傷ついていたし―さらに凌牙に手を出したことで二重に苦しむはめになった。その頃のWがそういう手段を取って己の血を吐くような復讐心を昇華せざるおえなかった気持ちもわからないではないけど、凌牙とこうなったことで自分で自分の首を絞める結果になったのは罰なのだろうか。元々Wは精神的にはとても脆いし、もしかしたら心の傷が完全に癒える日なんて来ないのかも知れない。
 でも、そのくらいの罪悪感はWのような前科持ちが幸せになるための税金みたいなものなんだと思う。せめて自分の気持ちを泣かないで聞けるくらいには治してやりたかった。
 だから急かさないで時間をたくさんあげて、Wが少しずつでも愛されることに慣れて、いつか凌牙の気持ちを聞いて喜んでくれるように―たくさん愛してあげた。
 …もちろん、やらしいイミで。
 どんなにたいせつなのかあいしているのか―直接触れて教えてやることは大事だと思ったから。
 Wの傷が心だけじゃなく肉体にまで及んでいたらまた違ったのかも知れないけれど、幸いなことにWは処女でセックスにすぐ慣れてくれたのでその方法はとても良く効いて―覚悟していたほどの時間はかからなかった。



「…おまえを愛してる」

 言ってしまったものは仕方がないので、ついでに付け足した。
 Wの手から傘が滑り落ちて、豪雨が突き刺さるように身体を打つ。
 今更そんなにびっくりしなくていいと思うのだが、予想以上に不意打ちだったのだろう。


「馬鹿、傘持ってきた意味がないだろ」

 凌牙は慌てて傘を拾い上げて差してやるが、豪雨のせいで一瞬で濡れ鼠になってしまった。せっかく傘を持ってきたのにまるで意味がなくなるあたりがWらしい。…まぁ、自分のせいなのだが。
 豪雨の中でもわかるくらいWはぽろぽろと涙を零して、しゃがみ込んでしまいそうになるから慌てて腕を掴んで屋根のあるバス停に戻る。
 予想に反して思いっきり泣かせてしまった。ちょっと早かっただろうか。


「りょーが…ありがと…嬉しい…。オレも凌牙が大好き…」

 ボロボロ泣きながらも、Wは必死で返事をする。
 考えたのか考えてないのか―教科書を音読したような無難な返事だ。でも十分だった。ごめんなさいじゃなくて、ありがとうと言うのは―Wにはとても勇気がいることだったんだろう。


「良く言えたなW。それでいいんだよ」
「りょが…」
「今更泣くなよ。いきなり言って悪かったけど、言いたくなったんだよ」
「だって…」

 よしよしと髪を撫でて褒めてやる。犬猫より手間のかかるペットだったけどやっと恋人くらいまで昇格できたのだろうか。
 ここは外なのだということは判っていたけれど、どうにも耐えられなくて―濡れた身体をきつく抱いてたくさんキスを落とす。額から眉間を通って頬の傷を舐めて―そっと口唇を重ねると、相手のそこを割り開いて舌を絡めた。角度を変えて何度も繰り返していると、好きだと口に出したことに高揚したのか―うっかりムラムラしてきた。


「…なぁ、したいんだけど」
「帰ったら、好きなだけしたらいいだろ…」
「帰るまで待てねーんだけど。…その裏道行けば歓楽街だし。ラブホでもいいか?」

 すぐそこにある通りを指差す。家まで徒歩10分というところで別に遠くもないのだが、かなり濡れてしまったしなにより待てそうにない。ラブホテルならついでに(朝まで)雨宿りも出来るし。
 だけどWは性格の割には育ちがいいから、ああいういかにも非健全な場所にいい反応はしない。最近のラブホは綺麗だし値段の割に施設はゴージャスだし一流ホテル顔負けのところだってあるのだが、イメージだけが先行しているのだろう。
 本人は決してそんなつもりはないんだろうし、昔のことなんか忘れ去ったつもりでいるんだと思う。だけど、W自身も気付いていない温室育ちみたいな部分がほんの微かに残っているので―凌牙はそれを大事にしていた。残しておいてやりたかったから。


「ラブホって…」

 Wは未だに泣きながらもやはり微妙な反応をした。たぶん、Wにはセックスするためのそんな施設があること自体が不思議なんだろう。
 ちなみに凌牙は元不良だし(関係あるのかは謎だが)、ラブホテルは嫌いじゃない。そのためだけの施設ということ自体悪くないと思う。一歩足を踏み入れれば何もやましいことをしているわけでもないのに徹底した背徳感があって、どんな内装のどんな立派なところでも不釣り合いなくらい品のないものが当然のように置いてあったりして―本能丸出しみたいな感じがいい。
 だけどWがこういうタイプなので彼と付き合ってからはいつも部屋で、他の場所で抱いたことはなかった。…まぁ、浴室くらいならあるけど。


「嫌ならいいけど。あーゆーとこもたまにはいいぜ」
「…?場所が変わるとなんか変わるのか?」
「そりゃロケーション変われば全然違うって。これからはおまえにまだ教えてないこと、いっぱい教えてやるから」
「…ま、まだ教わってないことがあるのか?」

 Wは信じられないという顔をした。たぶんやらしいことを考えているに違いない。

「そりゃあるよ。今までは基本しか教えてねーから」

 あんまり変なプレイはしていないし、これは嘘ではない。
 Wはしばらく自分の想像に及ばないプレイについて考えている様子だったけど―興味が沸いたのか、…じゃあ行く、と返事をした。


「―おまえ、傘2本持ってきたのか?」
「え?だって、自分が差してきたやつと凌牙の…」
「バッカだな、一緒に入ればいいだろ」
「えぇっ…だって、この雨で相合傘じゃ濡れるぜ」
「もう濡れてるし。一緒に入った方がこんなことが出来ていいんだよ」

 Wの細い指を傘を握った自分の手に絡ませる。


「雨の日に傘別々に持ったら手が繋げねーだろ」
「そりゃそうだけど…男同士で一緒に傘持って相合傘するのか?」
「今日は人も少ないしいいだろ。この雨じゃ裏道なんかネズミもいねーよ」
「凌牙って、意外とこういうとこもあったんだな」

 そう言ってWは笑った。こういうところってどういうところなのか…たしかに人が多い時に男同士でコレをやるのはさすがに恥ずかしいし微妙に誤解されているような気もする―たぶん自分はそういうタイプではない。
 ただ、Wと手を繋いでいたかっただけなのだが―それを口に出すのは誤解されるよりよっぽど恥ずかしいのでもう否定はしないでおいた。まぁ、今日くらいこういうのもいいだろう。
 裏道を入ればもう風俗店とそういうホテルが密集している。まぁこの辺のホテルは昔ひととおり試したので、過去の知識だけどすぐに選んで入ることが出来た。連れてきておいて何だけど、Wにはあんまり見せたくない街並みだし、とっとと入ってしまった方がいい。
 平日の真昼間だし、ガラガラで人の気配はほとんどなかった。部屋も選びたい放題だ。―せっかくなのでいちばんいい部屋を選んでみた。予定外の出費だけどこういうことに金を使うのも男として悪くない瞬間だと凌牙は思っている。殆ど自己満足に近いが。


「ヤバイとこだとたまにカメラとか盗聴器あるから気を付けて見とけよ。まーここはこの辺ではマシな方だしいい値段するから大丈夫だと思うけど。あったらあったで、倍額返してもらって唾吐いて帰るけどな」
「…りょーが、こんなとこにいっぱい女連れ込んでたんだな」

 Wはちょっとむすっとした。
 昔は多少自分に女の影がちらついても泣きそうな顔をするだけだったけれど、最近は普通にヤキモチを焼いてくる。W本人は自分が変わっていることなんか気付いてもいないんだろう。
 こんなことで普通に怒るのかと意外だったけれど、こういう一面を見せてくれるようになったことは嬉しい。そのうちウザイと思うようになるかも知れないけど、ウザイのもWのかわいいところだと思う。


「怒るなよ。昔の話だろ。いっぱいってほどじゃねーよ年相応だよ。つかもうずっと、おまえだけだよ」

 こんなことをWに言い訳する日が来るとは思わなかった。
 だいたい中学の頃、グレて遊び回っていたのは元はといえば彼本人のせいだ。もちろんキッカケがそれだとしてもそういう道を選んだのは他でもない自分自身だし、Wが傷つくから口には出さないけど。


「凌牙、こういうことに金使うの好きだよな。付き合い始めた頃も、いきなりたっかい指輪買ったりして」

 Wは自分の左手の薬指に収まっている指輪に視線を落として言った。

「高いって、2万くらいじゃなかったか?」
「高いだろ!25,800円だよよく覚えてる!」
「うるせーな、オレの金をオレがどう使おうとオレの勝手だ。―それに虫避けに役に立っただろーが、安いくらいだ」
「…?」

 後半の意味は良くわからなかったようでWはそれ以上追及しなかった。
 正直首輪と虫避け代わりならそこらへんの安物でも良かったのだが―少しは値段の張るものでないとWがその重みを感じないだろうと思ったから。それに仮にも一生外すなと命令した以上、あんまり安っぽいものではテレビに映ることもあるWが可哀相な気もするし。だいぶ前のことだけど、当時にしては多少背伸びした値段のものを買ったのであと5年くらいは恥ずかしくないだろう。
 宝石店の前を通った時になんとなく思いつきでやった指輪なのだが、今思うとWを縛っておくのに悪くない方法だったのかもしれない。


「…そのくせ未だに通帳の金には手ェつけないよな」
「あれは預かってるだけでオレの金じゃない」

 いい加減諦めて受け取ってくれたらいいのに、とWは小さな声で溜息を吐いたけど聞こえていないフリをして返事はしなかった。
 あの通帳の金のことも何度も話し合ったけど、何度話してもお互いに譲らなくて並行線のままなので―最近では話題にも出なくなったような状態だ。いちおう家の金庫に預かってはあるが、なにかいい使い道でも見つけない限りそのうち忘れられそうだ。―まぁそれも死ぬまでにゆっくり考えたらいい。


「たしかに女に金使うのは嫌いじゃねーな。くれてやった感が悪くない」
「ほんとに俺様だな…てかオレは女じゃねーよ」
「オレにとっては女だ」
「そんなこと言い切るなよ…凌牙のそういうところ、横暴だ」
「横暴とかおまえにだけは言われたくねーけど。おまえだってオレのこーゆーとこが好きなんだろ。ドエムちゃんだからな」
「そ、それもあるけど…(否定せず)」


 びしょ濡れになった服を脱ぎ捨てる。Wも濡れて気持ち悪いようで脱ごうとしたが、鏡がたくさんあるので戸惑っているようだ。

「―こ、この部屋なんでこんなに鏡があるんだ?」
「オレがおまえの中に入ってるとこを、おまえが自分で見られるよーにだよ」
「そっ、そうなの?」

 そういえば放置していては乾かないなぁということに気付いて、脱ぎ捨てた服をハンガーにかける。帰る頃には(着れる程度には)乾いてくれるだろう。


「寒いか?先に風呂入ってもいいんだけど。悪いけど待てないからさっそくやるぞ」
「寒くはないけど…わっ」

 鏡が気になるのかもたもたしているので腕を引き寄せて脱がせてやる。
 今日が休みということで昨日もしたからWの身体には痕跡が残っていた。それにキスを落としながら、着ているものを乱暴に剥ぎ取る。
 ラブホの薄暗い照明の下で見るWの身体は、雨に濡れてとてもいやらしい。中身は割と純粋(?)な方だと思うのだが(勘違いかもしれない)、容姿が妙にやらしいのでこういう場所は似合うようだ。
 かつて遊馬が自分にしてくれたように―Wの手を引いて太陽の下に連れ出してやりたかった。その目標は一応達成されたんだろうか…正直わからないし、それ以前にこういう光の下の方が自分やWには似合っているのかもしれない。
 けっこう濡れたので脱がせたついでにタオルで髪とカラダを拭いて―やろうと思ったけれど、Wの肌を見ていたらさらに欲情してきてもう我慢できないのでかなり適当に最低限だけ拭いてやって、抱き上げてベッドに転がしたらWはひゃぁと猫みたいに飛び跳ねた。


「こ、このベッドなんか変…ふにゃふにゃするんだけど…」

 いちいち慣れない施設に反応するのでかわいい。こういうタイプと付き合ったことはなかった。

「ウォーターベッドだよ。中身水なの。」
「水?!なんで水がベッドに入ってんの?」
「知るかよ、発明した人に聞け。浮いてるみたいで気持ちいいからんじゃねーの?…マァあんまり、セックス向きじゃないんだけどな。」

 もう1分1秒でも惜しかったけれどWの服だけ乾かないのはさすがにかわいそうなので相手の濡れた服もハンガーにかけてやって―自分もベッドに上がった。ウォーターベッドなんて久しぶりだ。まぁ、今すぐWを抱けるならベッドなんか別になんでもいい。


「ホラ、家だとめんどくさいことしなくてもいいのは便利だろ?全部揃ってるし。掃除だって洗濯だってやんなくていいからな。いっぱい、汚してもいいぞ」
「ど…どういう意味…」
「やらしい意味に決まってるだろ。いくらでも濡らしていいから」
「り、凌牙ッ!」

 最初の頃はローションを使ったけれど、慣れてくると体液だけで十分だった。女ほどじゃないけどWは良く濡れるから。
 たくさん愛撫して焦らしてやるとすごく反応してかわいいし、いっぱい濡れて丁度良かった。


「ほら。もうこんなんなってるからすぐにでも挿れたいし濡れないとヤバイぞ」

 薄いカラダにキスを散らしながら―Wの手を取って熱くなった自身に触れさせてやると、Wは思いっきりビクッとした。


「…凌牙、なんでそんなに興奮してるの?」

 Wは恥ずかしそうに言った。今更×××触っただけで照れるなよと言いたい。育ちがいいせいなのか(関係ない気もする)、エロイ顔してる割には一向にこういうことに慣れなくていつまで経っても照れている。そのギャップがそれはそれでかわいいけど、才能の問題なのかフェラも相当数をこなしてもあんまりうまくならない。まぁ昔よりはよっぽどマシになったけど。
 キスもへったくそだし、基本的にマグロだ。まぁそのギャップがそれはそれで(以下同文)


「うるさい。なんでだと?こっちは何年も好きって言えなかったんだ」
「言いたかったのか?意外だな、凌牙、クールなのに…」

 なんだかまた誤解されている様子だがそれよりむしろ貴様も興奮しろよと言いたい。


「言えないとなると言いたくなるってのもある。…つか、ぶっちゃけヤってる時くらい言いてーだろ。おまえだってわかるよな?いつもイく時ばかみたいにりょーが好き好きって…」
「―!だって…そりゃあ…ぅん…、言いたいよな…。オレ自分の心の準備するだけで精一杯で…ごめん、凌牙…」
「…いいけど。急にモテる女みたいな態度になりやがって、ほんとおまえはムカツクやつだな」
「???」

 言いながらベッドのヘッドボードにアダルトグッズの館内販売広告があるのが目に留まって、凌牙は無言でそれをベッドの下に投げ入れた。清掃員が探し回る姿を想像すると悪いが、Wが見つけたらまぁギャアギャアうるさいだろうし面倒だ。自分とする時にこういう玩具を使ったことは一度もないし―多分現物はAVでしか見たことのないタイプだろう。
 そういえば女と付き合う時にマンネリになったらこういうものを使うこともないわけじゃなかったけれど、Wはいつ抱いてもかわいいし興奮するので必要と思ったことがなかった。自分で思っている以上にWのことが好きなのだなぁとちょっと遠い目になる。まぁそうでなかったらここまで付き合ってやれなかっただろうが。


「もう黙れよ。今日くらい好きに抱かせろ」
「…いっつも好きにしてるだろ」

 ―それはそうかもしれない。


「でも凌牙、いっつもオレが気持ちいいように抱いてくれるから。最初にした時からずっと…」
「…」
「オレすごく大事にされてたんだよな…」

 またモテる女みたいになってきたので、そろそろ本気で黙らせることにした。ヤンデレの時もりょーがりょーがと泣いてウザかったが、デレたらデレたで別の意味でウザイ。まぁWはウザイところもかわ(以下略)
 口唇を塞いで思いっきり深く吸いながら上半身に手を伸ばした。さっきまでと違ってもう室内なのだから遠慮する必要はない。


「っん―」
「―ほら、無駄口叩いてる暇はないぜ。覚悟しろよ」


 ―今度こそ死ぬほど、犯してやるから。
 そう耳元で囁いて、Wの細い身体を思いっきり抱き締めた。











*

 それから言葉通りに死ぬほど抱いた。
 はじめてから何時間くらい経ったのかもうわからない。
 そういえばせっかく鏡があるので有効活用しようと、やる前に説明した通りに背面座位で繋がっているところを映して見せてやったらWは半泣きで過剰反応してくれてとても良かった。
 こんなに反応するからこちらもますます嗜虐心が疼くのだが教えてやる気はない。


「そんなにびっくりしなくてもいいだろ。自分のどこにオレの何が入ってるのか知らなかったわけでもねぇのに。おまえは忘れてるかも知んねーけど、最初なんか撮影までしたし」

 Wは忘れてない、と首を振った。まぁそれはそうだろう。


「だって、入って、る…とこなんか、見たことなか…」

 確かに撮影と言ってもWを脱がせた後はしているところを引きで撮っただけなので、AVのようにはなっていないはずだ。音声は入っているしセックスしているのはわかるだろうが、局部はまず映っていないだろうし。


「オレとおまえが繋がってるトコ見てそんなに興奮したのか?ナカ、すげー熱くてきゅんきゅんしてる…、ちくびも×××もびんびんだし」
「や…ぁ、りょが、やめ…」

 やはりWはいじめるに限るなぁと凌牙はぼんやり思った。両想いになったからといっていじめるのをやめる気はない。(まぁ最初から両想いだったのだが)


「せっかくだから自分の感じてる顔ちゃんと見とけよ?ウチにはこんなでかい鏡ねーからな。おまえの下のお口がオレのを根本まで咥え込んでびちゃびちゃになってるとことかめったに見れねーぞ」
「や、…っ、あっ…あんまりさわんないで……」
「それでもまだ足りないみたいにヒクヒクしてるな?」

 凌牙の×××を受け入れているおかげで大きく口を開いている後孔に指を沿えて摩ってやる。確かにWのソコはすっかり発情して、お互いのものが混ざり合った粘液を垂らしながら蠢いている。こうして見ると女性器と変わらないくらいエグいのでたしかにWには刺激が強すぎるのかも知れない。指を離すと粘液がツウと糸を引いた。
 まぁ凌牙には自分しか知らない―自分の手で殆ど性器みたいになってしまったこの器官が愛しく思われた。使いすぎた女性器なんかよりはよっぽどきれいでかわいらしい。


「それ、は…りょ…がが、動いてくんないから…」
「動いて欲しいのか?動かなくてもイけそうだけどな?」

 Wの中に深く挿入したまま、性器と同じくらい発情して固く勃起している乳首をぎゅうっと摘む。
 ここもWの弱いところだから―焦らした挙句にこういう風にしてやるとひとたまりもない。


「ひっ―!あ、ぁっ、りょ、が…!」

 高い声を上げて、体液でびしょ濡れになった性器から白濁が飛び散った。
 肢体内もそれに同調して凌牙の×××をきつく締め上げながらびくびくと収縮する。激しい痙攣によって接合部からは愛液のように淫液が吹き出した。


「ホラ自分がイったとこちゃんと見たか?潮吹きみたいだったぞ」
「ぁ…目…閉じちゃってた…」

 Wは息を切らせて少し残念そうに言った。まぁイく時に目を開けているやつはあまりいない。


「りょが…も、無理…もぅ出ない…」
「出なくてもおまえはナカだけでイけるんじゃねーの?」

 よっぽど感じまくった時だけだけど、射精なしでイくこともできるやらしいカラダだ。まぁWをそんなカラダにしたのは自分だが。
 あれはあれでとても気持ちいいらしいが、やはり自然の摂理を無視しているというか本来イくべきところがイっていないのでとても疲れるらしい。Wのカラダに負担をかけるのは本意じゃないから自然にそうなった時以外無理強いはしないけど、盛り上がった時は何回もするからそのうち1,2回―という感じだろうか。


「やろうと思えば…でももぅ死にそう…」
「死なねーよ、このくらいで根ェ上げんな。最初に死ぬまで犯して欲しいって泣いたのはてめーだろーが」
「だって…あの時は、りょ…がに好かれるなん、て…思わなか…」
「だろうな。我ながら趣味が悪すぎるぜ」

 まぁ好きになってしまったからには仕方がない。


「下から出ないなら上なら出るか?おまえのこのやらしーちくびから」
「そこはもっと出ない…ひぁっ、いまさわんないでっ―あっっ」

 張り詰めたピンク色の突起をつついてやるとWは逃れようと慌てて腰を捻ったが、まだ入っている状態なので自分で動いて感じてしまっている。

「ぁ、だめだって…動っ、」
「動いてんのはオレじゃねーよおまえだよ」
「凌牙も…、いっぱい、イったのに…そ 底なしっ」
「オレはおまえを死ぬほどたくさん抱きたいだけだ。こんなんじゃ全然足りねぇんだよ」
「―!」

 そう言ってやると、感じきっている内部は更にぎゅうっと締まった。


「…まだいけるじゃねーか」
「だっ、て、りょーがが…」

 Wは既に性感でボロボロ泣いていたけれど、それを聞いた真紅の双眸はさらにぶわっと滲んだ。そうだった、まだこの手があった。もう好きなだけ言ってもいいわけだし。
 赤い瞳が水を湛えてゆらゆらしている。素直にきれいだ―やっぱりどこもかしこも良く濡れるタイプらしい。


「オレがなんだよ。オレがおまえを好きなのが不満か?」
「不満じゃな…いけど―今言うのは、ひきょ…」
「卑怯?おまえだってこの状況で言いまくってただろ」

 繋がっている時に切なげな表情で泣きながら好きだ好きだと言われたら誰だって情が沸く…と思う。愛してしまったのはそれもある―のかも知れない。


「―おまえが好きだ」
「やっ、やだっやめっ…」
「馬鹿か、やめねーよ」

 Wはボロボロ泣きながら凌牙の背にしがみ付く。いちばん最初に爪は立てるなと言ったら自分と会う時は必ず爪を整えている、そんなところもとてもけなげだ。


「―あいしてる」
「…、っ」
「あいしてるよW―」
「りょ、うが…」

 ボロボロ泣きながらもWの×××はしっかり反応して勃ち上がり、透明な体液を垂らしている。本当はとてもうれしいのだ。そのくらいはもう確信できる。
 両目をじっと見つめてやるとWは恥ずかしそうに視線を逸らした。


「…わっかりやすいオレ好みのカラダ」

 噛み付くように口付ける。
 時間の感覚が薄れて、今いったい何時頃なのかまったくわからないけれど―どうやらこの夜はもうしばらく続きそうだ。











*

「…りょーがは、なんでオレをすきになってくれたの?」

 行為のあと、ウォーターベッドのふよふよとした浮遊感を楽しんでいたWを無言で抱き寄せる。少しはじっとしてセックスの余韻を楽しめばいいのに。というか、自分の腕の中でじっとしていればいいのに。なんだかもう片時も離したくない気分になって正直戸惑う。
 WはWで、もう無理とかなんとかさんざん言っておいて元気そうだ。


「なんでって、こっちが聞きてーよ。顔は好きだけど」
「ふーん…」
「理由が欲しいか…?」
「いや、気になっただけ…こんな日が来るなんて思ってなかったから」

 返事の代わりにぎゅうっと抱きしめる。抱き枕というか、ここ数年ずっとWを抱いて寝ていたのでこうして眠らないと落ち着かない。
 Wは嬉しそうに凌牙の腕に触れて、このベッド寝心地良くて気に入ったとか、うちにも欲しいなぁとかそんなことをべらべら喋った。一瞬自宅に買ってもいいかなとか馬鹿な考えが頭を過ぎる。


「元気そうじゃねーか。風呂でも入ってくるか?時間あるから、明日でもいいけど」

 終わってから時間を確認したらまだ夜の9時くらいだった。死ぬほどやったとはいえ昼間にチェックインしたから時間はある。たっぷり眠れるだろうし、起きてからも風呂に入るくらいの時間の余裕はあるだろう。


「入ってもいいけど凌牙は?いっしょに入んねーの?」
「いいこと教えてやるよ。ここの風呂の扉、マジックミラーだから風呂から見ればただの鏡だけどこっちからは丸見えなの。久々におまえのストリップ見たいなー(棒)」
「―!そ、それじゃあ絶対いっしょじゃないと入らない…」
「オレと入ったら風呂でもっかいやることになると思うけどな。どっちがいい?」
「!」

 Wはしばらく黙って少し考えている様子だったけれど、凌牙の背中に腕を回して小さな声で言った。


「…じゃあ明日、起きてから凌牙といっしょに入る」
「明日試合じゃなかったっけ?」
「夜の部だもん。凌牙送ってくれるんだろ?てか凌牙こそ学校…あ、明日土曜か」

 浴室でやったらさっきの鏡より間近にある大きなマジックミラーに情事が映ることになるけれど、Wは気付いていないようなので黙っていた。明日になって気が変わっても、逃がしてやるつもりはない。
 というか随分図々しくなったけれど、Wを甘やかしてこうなるように仕向けたのは自分自身だ。―きっと、これで良かったんだと思う。


「凌牙がだいすき…おやすみなさい」

 そう微笑んでWは瞳を閉じた。やっと眠る気になったらしい。
 こうしていると歳よりとても幼く見える。冷静に考えるとアレだが、Wはいちばん楽しいはずの少年期をすっ飛ばして生きてきたようなものだからそれでもいいのかも知れない。…いや良くないけど、少なくとも自分の前ではこれでいいはずだ。


「オレも愛してるよ。おやすみ、W」

 深く口唇を合わせてから―凌牙はWの耳元で囁いた。











↓あとがき反転↓(読まなくてヨシ)
本当にこれで良かったのか………(ぉい)
以前書いた話とか前提で書いてるのでわかりにくい部分がいろいろ…まぁ読んでなくても読めるようにはしたつもり…時系列的にはだいぶ末期です…
ちなみに私は凌牙くんが学校一の不良☆ということに大いなる夢を抱いています(キリッ
凌牙くんは厨二なんじゃなくて、元学校一の不良☆なだけです(キリッ
でも凌牙くん受も好きだからちょっと悪ぶってただけでDOUTEI☆というのも悪くない(受の時は)
でも悪ぶってた程度では学校一の不良☆とはいえなry
ついでにフォーサーンの彼氏としての理想を凌牙くんにすごい押し付けてるので、すごいWを甘やかしてるしWのことだいすきだしもう…
こんな話を書くのは早すぎるし、なにより凌Wでもなんでもないレベルというか私ですらちょっとうーんと悩むレベルというかこれじゃない感というかまぁそれはいつもなんだけど…
でもそのうちきっと展開がとんでもないことになって、私はこんな悠長なものを書いてる場合じゃなくなると思うので…今はこれでいいんじゃないかと思うます…(神妙な表情)
ラブホってたしか昼に入ったら宿泊とは別料金のような気もするんだけど…まぁいいや。
つかものすごくよく絞らないと一晩で濡れた服は乾かな……そのへんもどうでもいいか(´ω`)
EROいらんだろって感じもするけど、こういう話はEROがないと盛り上がらない気がする(個人的意見)ので入れましたw
バス停に傘を届けにきたWに凌牙くんが好きって言うってのはハマった当初から(…と言っても1ヶ月半くらい前だけど)考えてたので書けて良かったよーな良くなかったよーな
てか私もたくさんのエロを読んで、ちんこはペニスとか陰茎とか書くよりも×××表記がいちばんエロい!(気がする)という結論に至ったのでうちも×××表記でいきます(`・ω・´)
それにしても毎回タイトルが思いつかない(ヽ'ω`)

ところでフォーサンが処女でも凌牙くんこんだけ苦労してるのに、処女じゃなかったらもっと大変なことになると思うます!介護プレイ
そんな鬱展開の時の十津川みたいな内容私には書ける気まったくしないけど、一度くらいは書いてみたい気も…むりかなー
十津川の手にはおえるかもしれないけど私の手にはおえないかんじww
辛い悲しいは金を払ってでも避ける…まぁ脆弱なだけだけど…とりあえずすでにVちゃんの回想だけつらくてタヒにそうになっているのでした(ヽ'ω`)←近況

120317


ブラウザバックプリーズ