「―キサマノナカニハ、美シイ堕天使様ガイルラシイナ…」


 ―たとえば昔の神話みたいに、頑丈な鉄の扉のいちばん奥に隠したとしても。
 暗闇の中で光を隠せはしないのと同じように―強大なものは隠しきれはしない。
 きれいなキミには不似合いで―その小さなカラダには身に余る邪悪なチカラは、表にいるのがたとえ俺でもまるで俺の中身が透けて丸見えになってるみたいに存在感があった。
 あの子は俺の―いわゆる闘争本能だけを引っこ抜いてカタチにしたみたいなもので、人間でも死神でも―虚ですらないから。


 もっとも、だからこそキミはちょっとこの世のものじゃないくらい(事実この世のものじゃないけれど)きれいで―羽なんかないとキミは言うけど、キミの真っ白な着物の裾が空を舞うたびにいつかその背中に純白か―そうじゃなければ漆黒の翼が生えるんじゃないかって、俺は本気で思ってた。










「…なんの話?」

 現世だというのに、相手の虚にそんなことを言われて眉を顰める。別に大した相手じゃなくても、あの子のことを出されると頭に血が上った。
 だいたいいったいいつから堕天使サマなんてことになったのか―‥まぁ、ある意味適切な表現ではあるかも知れないとひそかに思った。
 あの真っ白な姿であんなにも残虐な狩り方をされたら、そんな噂が虚たちの間でまことしやかに流れてもおかしくない。死神というものを知る前だったら、どちらかといえばあの子の方が死神のイメージに近かっただろうと思う。
 本物の死神はアレだもんなぁ…と、恋次の呑気な笑顔が脳裏に浮かんだ。


「是非オ目ニカカリタイネェ…引キズリ出シテヤロウカ…」

「…やれるもんならやってみれば。俺の虚化だったら見せてやらないでもないけど。」


 万一こちらの世界で表に出られたら、自分が奥に引っ込んでしまう。もちろんそれが嫌なわけじゃないけど、そうなったら目の届くところに置いておけない。カラダが同じでは護ってやることは不可能だ。―あんな無防備な子をこっちに出すなんて考えただけでも目眩がする。戦うことが何より好きだから本人は退屈しなくて喜ぶだろうけれど、挑まれれば誰にでもひょいひょいついて行くことは安易に想像出来るのでこっちはたまったもんじゃない。
 護衛(…というよりお目付け役?)に恋次をつけるとしても、正直誰の目に晒すことも拒否したい気持ちだった。


 ‥―だから閉じこめてる。光の射さない自分の精神の檻のいちばん奥に、少しの光も漏れないように厳重に鍵を架けて。



「おまえみたいな雑魚があいつを見たら砂になって溶けちまうぜ、バーカ」

 もう塵になってしまって跡形も残っていない相手に向かって捨て台詞を吐いていたら、背後に気配を感じて振り返る。


「こんにちは、黒崎サン」

「…浦原さん」

「そんな戦い方したら宝はここにありますよ〜って言ってるようなもんですよ。まぁ、元からバレてますけど…。それにしたって本気で守りたいならもっと冷静になんなきゃ…アナタなら出来るはずなんですけどねぇ?」

「…死んでもアイツをこっちに出したくねーんだよ。…些細な可能性でも徹底的にツブしとく」

「怖いなぁ…。アタシは一度見てみたいんですけどねェ?黒崎さんがそんなに大事にしてる、もうひとりのアナタを」

「危なすぎるからアンタにだけは絶対見せねぇ。」

「どういう意味ッスか…。でも、色が違うだけじゃないんスか?凶暴ってのは聞いてますけど」

「…」

 ぱっと見は確かにそうなのだろう。凶暴なのも本当だけれど―でもそういうんじゃなくて、とにかくあの子は中身が奇跡のようにかわいすぎるのだ。―でも、そんなことをわざわざ浦原に説明してやる気にはならなかった。


「そんな、今にも殺しかねない勢いで睨まないで下さいよ。今の黒崎さんにはアタシだって勝てるかどーか…いや、逆に勝てるかな、アナタ今我を忘れてるから♪」

「…」

「そりゃあ、入れ物が同じでも『中身』が違えばもう同一人物とは言えないっスからねぇ。惚れちゃうことだってあるでしょうよ。…それがいいことかはともかく」

「―俺、あいつのことに関しては誰の意見も聞かねーし口出しさせねぇって決めてんだ。…たとえあんたの意見でもな」

「随分情熱的っスねぇ?でもまぁなんかあったら頼ってくださいね?黒崎サンには世話になってますから」

 浦原はくすりと笑って、突風のような速さの瞬歩で―‥文字通り消えてしまった。








 その日、向こうへ行ったら虚の気配がしたので、あの子に気付かれる前に殺ってしまうことにした。昼間あんなこと(…というほどのことでもないのだが)があったのでとても家から外に出す気にならなかったのだ。
 ―もうほとんど変態じみているなぁと自分で呆れた。


「オヤ…『コチラ』デ猛威ヲ振ルッテイルノハ白イホウダト聞イテイタノダガ?」

「るせーな、俺じゃ不満か?こっち来たついでに寄っただけだろーが」

 予想はしていたけれど、案の定あの子の方をご所望だった虚に殺意が湧いた。


「…俺、変態だからあいつを外に出したくねーんだよ。オマエらみたいなやつの目に晒したら俺は独占欲で狂っちまう」

 どうせ本人には聞かれていないのだからと半分くらい本当のことを言った。
 あんまり家に近づいたらあの子は気付いてしまう。なるべく家から離してしまって―それか一瞬で殺ってしまおう。
 そんなことを考えていると虚はさもおかしそうに下品な笑い声を上げた。


「黒崎一護…!キサマトモアロウモノガソンナニモ大事カ…?己ノ影ニ焦ガレルトハ滑稽ナ…」

「焦がれて悪いかよ。俺の影でもなんでも、人格がありゃあいっしょなの。大事なの。誰にも見せたくねぇの。ましてやおまえらみてーな下衆の目にかのじょを晒したい男なんかいねーよ」

 思わずムキになってベラベラと恥ずかしい言葉を使って反論していたら、後ろから聞き慣れた高い声がした。



「…いちご、どいて?」

 ―絶対に悟られないようにしたはずだったのに。

 びっくりして振り返ったら、いつもの真っ白な死覇装がはたはたと風に靡いているのを見て思わず目を疑った。
 この子が戦う時はいつもそうなのだけれど―‥ヒトで非ざる証の金色の瞳はこういう時のためにあるのだ、と思ってしまうくらい迫力がある。


「おま…なんで…」

 恥ずかしいことをベラベラ喋っていたことも忘れて目の前の相手を見つめてしまった。
 敵の霊圧はこの距離では家にいたら絶対に気付かないくらい低いものだし、自分も気付かれないように完全に霊圧を消していたつもりだった。(だからどうやって倒そうか考えていたわけだが)


「…いちご、俺のことなんだとおもってんの」

 白いもうひとりの自分は眉毛をちょっと上げて馬鹿にしたように少し笑った。
 たぶん戦う時には自分が間違っているなんて一度も考えたこともないのだろう、いつでも聖女のように堂々と殺戮を行うのだから。


「オヤオヤ…」

 望みの獲物が現れたのだから、虚はさも嬉しそうに白い虚を上から下まで舐めるようにジロジロと見た。―それを見ているだけで今すぐ相手を八つ裂きにしたいくらい腹が立った。


「貴様ガ白イ黒崎カ…黒崎ノ霊力ソレ自身トイウ…」

 虚は貴様ほどの霊力のカタマリを喰らったら、どんなにか力が得られることか…というような旨のことを言ったような気がするが正直ムカつきすぎてあまり聞いていなかった。


「てめえッ…人のかのじょジロジロ見んなよ!!」

「いちご、どけって。怪我したいの?」

「ちょ…かわいくない!せっかく俺がいるのに、たまには頼ってみたらどーだよ!」

「ヤだよ。今のいちごよりは俺がやった方が早いだろ」


 白い虚はちらりと自分に呆れた目線を向けて彼自身の斬月を掲げた。
 それに呼応するように真っ黒な布がくるくると解けて行く。はじめて戦った時から何度も見た光景だけれど、はらはらと黒い布が音もなく解けていく様は黒い羽根が舞うようにも見えた。
 ―もっともそれは自分の惚れた欲目で幻覚みたいなものなのだろう。
 でも黒い羽根の隙間から白い刀身が顔を覗かせると―魔法のようにキレイで眩しすぎて、この子が自分の邪気からできているということをいつだって忘れてしまった。
 …その殺意すら感じられない夢のように真っ白な斬魄刀から―世界中を覆い尽くせるのではないかと思うくらい真っ黒な邪気の刃が放出されるのを見るまでは―‥、だけど。
 そんな虫も殺さないようなきれいな顔をしておいて―たしかにこの子はこの世の全ての生を奪い尽くしてしまえる存在なのだと―‥そんなことは知っている。―最初から知っていた。



「シカシ噂通リ美シイ…スガタカタチハ黒崎一護トオナジハズダガ…」

 ―そうだよ、きれいなんだよ。誰に見せたってキレイって言うに決まっている。ホントは世界中の人に自慢したいくらい―こいつは美人なんだ。


「―ハジメマシテ、美シイ妖姫サマ」

「…俺は男だし、このカオはいちごの模倣だけど。」

 相手がどういうつもりで言っているのかまったくわからないのだろう、白い虚は抑揚のない声で答えた。


「おい、そんなのまともに相手にすんなよ」

「いちごはちょっと黙ってて」

「てめーちょっとはゆうこと聞けよ!」

 あーあ、と白い虚は溜め息をついて薄く笑った。


「いよいよDV夫みたいなこと言い出したな、いちご。そんなに俺が出歩くのが嫌なら家に縛り付けとけばいいだろ」

 ―そんなこと出来ないことは判っているくせに、涼しいカオしてそんなことを言う。


「とにかく、今のいちごだったらこんなザコにも勝てるかわかんないから」

「それはちょっとあんまりだろ!!」

「…好きにさせてくれるって言ったよな?」


 忘れたとは言わせないとばかりに、白い虚の高い声が少し低くなった。
 ―確かに言った。怪我をしていた時はとにかく徹底して手を出させなかったから、治ったら好きにしていいって。…そうでも言わないととても大人しくしていてくれそうにもなかったから。
 だって手負いで霊力が落ちていたことよりむしろ―包帯を巻いた白い手首であのバカでかい斬月を…持たせるのが見ちゃいられなかったのだ。
 もっとも昔、おまえには斬月重いんじゃねーの?と聞いたら―むしろ羽みたいに軽いと言われたことを覚えている。全く同じ斬魄刀を持っているのに間抜けな質問だとは思うけど。
 でも自分はいくらなんでも羽ほどに軽いと思ったことはないから、やはりこの子は己の斬魄刀と一体であるということか―そうでなければあの斬月が差別しているのだろう…。

 どちらにしてもこの子のことを自分が本当に護ってやれたのは怪我をしている間だけだったから気分が良かった。今はホラ―こうして護らせてもくれない始末だ。


「そりゃあ言ったけど…でも、」

「…だったらすっこんでろ」

 本気で睨まれたのでなんとなく気圧されてしまって、思わず言われるがままに下がった。



「―俺、」

 自分ではなく敵に言っているようだったのでとりあえず黙って聞いていた。


「昔ケガしてた時からかな…。気配だけは殆ど完璧に読めるの。その間かなり弱ってたから、たぶん本能的に?霊圧とかってゆーより、風向きとか天気とか…そうゆうのでだいたいわかる。―どこに何がいるってことくらいは。まぁ勘に近いし限界もあるけど、霊圧を探ったりするよりは長距離いけてラクだし…だいたい当たるから。」

 そんな人間離れした技が…と思ったけれど、もともとこの子は自分の霊力の塊だと思えば、確かにそういうことも可能かも知れない。―それよりなんでそんなことをわざわざ雑魚虚なんかに話して聞かせるんだよ、と言いたかったけれど、口を出すなとばかりにまた睨まれたので口をつぐんだ。


「…つまりオマエらはわざわざ死ににきてるって言ってんだよ。―俺に見つかった時点で100%逃げられないんだから」


 ―たしかにその通りだなぁ…、とか呑気に思っている間に相手は砂みたいにパラパラとそのかたちを崩してしまった。その姿を見る限りおそらくはぐちゃぐちゃになるまで斬られたのだろうけれど、その細い腕が白い斬月を振り上げたところまでしか見えなかった。


「…化ケ、モ…」

 捨て台詞を吐きながら消えていくもはや虚とも呼べないそれを冷めた瞳で見ながら、白い虚は相変わらず羽でも生えているようにふわりと着地した。―いつ斬ったのかどころかいつ地上を離れたのかすらもまったく判らなかった。(ボーっとしていたせいもあるが)
 自分も卍解すればあのくらいのスピードは出るかも知れないが、自分より力が弱い分この子はいつでもMAXのスピードが出る。
 ―この子は、強い者はもとより弱い者にも容赦がない。雑魚だからといって絶対に見逃したり手を抜いたりはしない。いつでも血に飢えて生けとし生けるものはすべて―己の手で切り刻まないと気が済まないのだから。


 ―本当は護る必要なんてない、俺のヴァルキリー。
 …それでもキミの白い指先を血で汚したくないと思ってる俺は間違ってる?



 ぽかぁんとしていると白い虚は回れ右をしてつかつかとこちらに歩いてきて自分の顔を見て真顔で言った。


「…今のやつが言ってた通り」

「…?」

「俺はバケモノだから」

「…」

「たまたまいちごのカタチをして人格があるだけ…。だいたいいちごが好きだから大人しくしてるだけで、俺のゴシュジンサマがいちごじゃなかったら虚どころかシニガミもニンゲンもみんな殺してる。―だって俺はそういうものからできてるんだから」

 自分とまったく同じ高さにある大きな瞳を見つめていたら、やっと冷静になってきた。


「…それで?」

「…いちごに執着されるほどの存在じゃない。それでもあんなザコ相手にあんなにムキになるくらい執着したいなら、ほんとに閉じ込めて鎖で繋いどけばいいだろ。どうせ人権なんかないバケモノなんだから、いちごの好きにしたらいい」

 なんだか酷く申し訳ないことをした気持ちになって、目を伏せた虚に手を伸ばした。


「…ゴメン。そーゆーんじゃないんだ。」

「なにが違うんだよ。さっきの変態発言うしろでぜんぶ聞いてたんだから。それを抜きにしても昼間のといい、今日のいちごの戦い方はサイアクだし」

「…」

 ―そのへんは反論のしようがなかった。



「…俺のせいで弱くなったりしないで」


 さっきまでとは別人みたいなか細い声で言ったと思ったら大きな金色の瞳にみるみる涙が浮かんできて、胸を撃ち抜かれたような思いがした。
 あんなに恐ろしい技を使うくせに―本当にこれだからこの子は。中身は全部真っ白でびっくりする。これでは自分が独占欲に駆られて多少変態じみた言動に出てもおかしくない。(…と正当化してみる)
 正直これではこれからも変態じみた言動に出てしまいそうだとは思ったが、とりあえずもう一度謝った。


「ほんとゴメン。俺が悪かった」

 額に軽くキスをして抱き締めた。折れそうに細い腕が自分の背中に回る。―ぎり、と黒い爪先が自分の着物を引き千切りそうな勢いで握り締めるのを見るのが好きだった。


「…なんで謝るの。謝って欲しいわけじゃない」

「そうじゃなくて…おまえを閉じ込めておきたいとか…思ったこと自体が罪だなと思って…」

「…思ってるんじゃん」

「だって…そりゃあ思うよ。」

「なら…」

「でもそういうことはしないし、…それにもう閉じ込めてるだろ?」

「…?」

 白い虚は潤んだ瞳をこちらへ向けた。


「ここ…俺の世界にさ。ホントは表にも出してやりたいけど…そしたらおまえ色んなやつに色んな意味で狙われるだろーし、なによりおまえを俺の手の届かないとこにやるのが嫌で…こんな俺の檻の中に閉じ込めてるんだ」

「そんなの…俺だって、やろうと思えば出てって…今でもいちごを乗っ取れる自信はあるよ。でも俺が望んでここにいるんだから…」

「ほんと?」

 虚は頷いた。―むしろなにか不穏な内容も聞こえたような気がするが聞かなかったことにした。


「だからいちごこそ…俺みたいな虚以下のバケモノに執着するのやめろよ。いちごだって何回も見ただろ?俺はただの邪悪なカタマリ…」

「バカ、おまえは俺から出来てるんだから、おまえが邪悪なんだとしたらむしろ邪悪なのは俺だろーが」

「…。」

「おまえは俺の中でいちばんきれいだから…虚を何千匹殺しても汚れたりしないから心配すんな」

「…いちごは頭おかしいよ」

 こちらは本気なのに頭おかしいとまで言われて多少傷ついた。この子に言われてはおしまいだと思う。


「じゃあもし俺が虚じゃなくて、誰かいちごの大事な人を殺したとしてもそんなこと言える?」

「…おまえはそんなことしねーよ」

「なんでそんなこと言い切れんの」

「…あのときだって恋次のこと殺さなかったよな?」

「だってそれは…いちごに嫌われると思ったから…」

「だから、しないって言ってるだろ?」

 俯いた顎を軽く持ち上げて濡れた金色の瞳を見つめると、虚は酷く不満げに瞳を逸らした。―戦っている時はあんなにも取り付く島もなかったのに、今はなんと他愛ないことだろう。悪いのはどう考えても自分なのになんとなく勝った、と思ってしまう。


「おまえは自分じゃわかんないだろーけど…さっきのやつを含めみんなお世辞できれいだとか言ってるわけじゃないんだぜ?おまえがかわいいから虚も破面もひっきりなしにこんなとこまで来ておまえを狙ってるし、それで俺も恋次もいっつも心配してんだよ」

 自分で言いながらなんだか微妙に違う気もしたがまぁいいことにする。


「…そんなのわかんない」

「だから、わかんなくていいから…」

 小さな頭をぎぅと抱き締めて耳元で聞いてみる。


「…今でも俺より強い気でいる?」

「当たり前だろ。いちごは俺のチカラ半分も使ってないじゃん」


 この世界の中でいちばん強いのは間違いなく自分だと思っているのだろう、虚は呆れた声を出した。でもこういう子供っぽい自信ですら可愛く見えるから確かに頭がおかしい気もする…。

「…相手が誰でも…たとえばすげー強いやつでも、おまえのカラダに指一本触れさせないで勝てる?」

「勝てるよ」

「…いい子。俺に護らせてくれないんなら絶対に負けんなよ」

 桜色の口唇にちゅっ、と軽く口付ける。もちろん大事なこの子を護る権利を放棄したわけではなくて、とりあえずは建前だけど。…それに表に出ている時はいつでも護っているつもりだし。


「じゃあ、帰ろうか」

 抱き締めたままの相手をそのまま抱き上げて、瞬歩で家に向かおうとしたらまた不満げな声が響いた。

「待てよ。なんでいちごはいっつも俺を歩かせてくんないの」

「…抱いてたいから。離したくないから。…だけど?」

「…。」

「離したら羽とか生えて飛んでっちまう気がするんだよな…」

「まさか俺がじゃないよね?」

「おまえがだよ」

「…生えるとしたらなんかこう怪物とかのアレじゃないの?言っとくけど都合良く羽だけ生えるとか思ってないよね?もしそんな日が来たらたぶん俺、いちごの原型すら留めてないからね?」

「仮にそうだとしてもおまえなら綺麗なんだろうな〜」

「いちご、ホントに頭おかしいよ。ナニを勘違いしてるのか知らないけど何度も言うように俺はバケモノだからね?」

 白い虚は心底呆れたように言って首に腕を巻いた。



 ―端的に結論のみを言えば確かにそうなんだろう。でもそう言ってしまうには―自分の贔屓目を抜きにしても、この子はあんまりにもきれいだった。

 つやつや光る黒い爪を時々少し悲しげな目で見ていることも知っている。
 世界でいちばんきれいなのは他でもないキミなのに。―そうやっている悲しい横顔ですらどんなに美しいかキミはまるで知らないんだろう。
 子供みたいに鏡を見つめる透明な金色の瞳を見ていたら、もしかして彼を汚しているのはこの自分じゃないのかとすら思うけれど。
 ―細い指先を、色素のない髪や口唇やその肢体を。
 どれだけ犯してもキミは変わらない―透き通ったその全身の色が表す通り、どこまでも雪のように真っ白だ。
 さっき言った言葉にウソはひとつもなくて―どれだけの生を奪ってどれだけ血を浴びても―この子は少しも汚れたりしないんだろう。(俺がどんなにこの白い指を血で染めたくないと願ったとしても)



 …だからもぅ悲しまないで。
 このせかいでいちばん、キミだけが綺麗だよ。

 ―愛しい俺の妖姫サマ。







↓あとがきは反転仕様↓(むしろ読まないことを推奨)
コレ、浦原の伏線とか要らなくない?(言いたいことはそれだけか)
はっきり言って私は病んでるので、内容のことは忘れてください。(…)
黒崎さんはこんなアブない子じゃないと何度言えば…!!(ノ∀`)
っていうか妖姫サマって言わせたかっただk…あっ痛い石を投げないで・゜・(ノД`)・゜・(…)
黒崎さんはジャンヌダルクか戦神で女神様だけど(ツッコミ拒否)、白い子は戦乙女でヴァルキリーでワルキューレで…(以下省略)
…僅か1年で立派に狂った自分に乾杯\(^q^)/(ヤケ)(はじめから狂っていた気もしますが。
色々矛盾してるところもあるけど、もう基地外の書くことだと思って軽く流して下さい\(^q^)/(自虐)
…あ、最後にこれだけは。
>自分も卍解すればあのくらいのスピードは出るかも知れないが、自分より力が弱い分
これは言っとくけどオヒサルだからね!!
あの子ゲームとかで
体力Dとかだからね!!
女の子たちよりもナチュラルに低いんだからね!!!(モチケツ)
…ゼェゼェ。ほんと、立派に狂った自分乙\(^q^)/(…)
そしてこれでもまだ姫を使ったうちには入らないだろうと思っている私です。(…)

ってゆーか終わり方がいつもおなz…あーゲフンゲフン!!(…)
090420


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