「失礼しまーす」

小さく声をかけて、病室のドアを開ける。
ベッドの上の綺麗な人は、すやすやと寝息を立てていた。
スリーピングビューティってこういうのを言うんだろうな、と切原は思った。

でも、このまま彼が目を開けないんじゃないかって。
―本当はそんなバカなことを考えてしまう。


切原はベッドの横の椅子に腰掛けてじっと彼の顔を見た。
あの頃―と言っても半年も経ってないけど、当然のようにこの人の隣で眠っていた頃はこんな恐怖を感じる日が来るなんて思ってもみなかった。
ただ幸福な日々に甘えて、寄り添って、それだけで生きていけると思ってた。
―なんて浅はかな子供だったんだろうと、今はただそう思う。





bittercake




「…そんなに見つめらたら困っちゃうな」
「部長ッ…起きてたんスか??」

幸村はフフっと笑った。

「赤也が来ると判るんだ。―愛の力かな?」
「そんな…寝てていいッスよ」
「…心配?」

切原は正直にコクンと頷いた。


「…俺が目を開けないんじゃないかとか思う?」
「…俺そんな顔してますか?」
「してるしてる」

幸村は他人事みたいにまた笑った。


「…俺愛されてるなぁって思うよ」
「…愛してますから」

真顔で言う切原に、幸村は軽くキスをした。


「…エッチも長いことしてないね。したい?」
「…もーやり方忘れちゃいましたよ」
「まだ1ヶ月かそこらじゃない(笑)」
「長いことって言ったの部長でしょ…」


切原は恋人のパジャマに顔を埋めた。
ツンとした病院独特の香りが鼻を刺す。


「したいっス…」
「…」
「…エッチだけじゃなくって、デートもしたいしテニスもしたいっス…」

そこまで搾り出すように言って、切原はハッとして顔を上げた。

「ごめんなさい…」
「謝らなくていいよ。赤也に想われてるのって嬉しい」

幸村はにっこり笑って、俺も怖いよ、と言った。


「赤也が離れてくのが。キミの心の隙間に俺じゃない誰かが入ってくのが…」
「離れたりしないっス!!」

思わず叫んだ切原に、幸村は口唇に人差し指を当ててシー、と言った。
切原はまたハッとして口をつぐんだ。
―そう言えばここは病院だった。

「あ…ごめんなさい…」
「謝らなくてもいいってば」


でもね、ここで寝てるとそんなことを思っちゃうんだよ、と幸村は小さな声で言った。

「でも、でも、そんなこと絶対無いッス…。俺が部長以外を好きになるなんて…」

切原は半泣きでありえません、と繰り返した。
涙が出て来るのを抑えきれない自分が情けない。

「…だからこんなことを言って赤也の気持ちを試したくなるんだ」
「意地悪っス…」
「…そうかもね」


涙腺が壊れたみたいに、涙がぼろぼろ落ちていくのを抑えることが出来なかった。
どうしてこんな病気にかかったのがこの人じゃないといけなかったのかとか、そんな考えたってしょうがないことばかり毎日毎日、気でも狂ったみたいに考えてる。

1年の冬に、今みたいに半泣きで部長が好きです、と告白した記憶がある。
この美しい人は、何でもないことみたいに微笑んで俺も赤也が好きだよ、と言った。
ダメもとの片想いが奇跡みたいに叶ったあの日。
初めて手を繋いで、ふたりで出かけて、キスして、カラダを繋いで。
なんて幼くて夢みたいで幸せな日々だったのだろうと―本当にただただそう思う。






涙の止まらない幼い恋人を腕の中に収めながら、ひょっとして自分はとてもひどいやつかな、と思う。
まぁ、多分死にはしないだろうと思うけど、もし死んだらこの幼い恋人がどんなにか悲しんで狂ってしまうだろうかとか思うと、不謹慎だけどそれも悪くないような気すらした。

(…やっぱり俺はひどいやつだよ)

泣いている恋人を目の前にしてこんなことしか考えられないなんて。


「…赤也、ホラ泣かないで。退院したらキスもエッチもデートもテニスも死ぬほどしてあげるから。
 ジャッカルとブン太が持って来てくれたケーキがあるから一緒に食べよ?ブン太お勧めのお店みたいだから、凄く美味しいよ」

大きな瞳から洪水みたいに流れる涙を拭ってやると、切原はコクンと頷いて、

「その約束、破ったら許さないっス…」
と、蚊の泣くような声で呟いた。





(部長…本当に本当に、お願いだから約束守って下さいね…)

どんなに怖くても、その日が来るのを今は信じるしかないのだ。
幸村は細くて白い指で、器用にショートケーキを切り分けて切原の口元に持って来た。
うっすらと開けた口の中に入れられたそのケーキは、酷く甘いはずなのに何故かとても苦く感じた。



なんかまた暗いんだけど…(しかもアリガチという罠) だって暗いのが書きたいんだ(え)
それより幸赤小説が全然無くて苦しんでるんですけど…もしかして幸赤超マイナーなんですか?(超謎)
私の探し方が悪いの??マジでありえないんだけど…(神妙)
いや、赤幸も好きだよ私は(w)世間は思ったよりもぜんぜん幸村攻がメジャーで、宍戸攻はあんなにマイナーなのに!
と私は妙なことで怒ってますが。(妙すぎ)そして真田受がメジャー_| ̄|○(のような気がする)
本当、なんであんなに宍戸攻は無いんだろ?ありえねー(跡宍のお前が言うな)
あークソッ…ロンゲめ…(1日1回は言ってる)クソクソッ(岳人)
話がズレた。つか私は間違っても幸村攻じゃないどころか、むしろどっちかと言えばも何も幸村受なんですが(w)
だから花のように攻めるゆっきー(超謎)ということで。(キモッ)
ま、私はすっかりリバ女に成り果てたのでそこら辺はスルーで。幸ブン(幸)とかも実は好きだけどスルーで。
ま、ブン太にはジャッカルがいるんで…。ブンジロとか好きだけど忘れるよ。(忘れられなさげ)
まあそんなことは置いておいて。(話ズレすぎだから)
よそのサイトさんの幸村の病気のこと判明した回の感想で、中学生なんて恋愛とか楽しいことだけ考えていればいい年のはずなのに
不憫でしょーがないです、(注:超うろ覚え)みたいなのがあって。私はそうかな、中学生だって辛いことがある人いっぱいいるよ、と思ったんだけど、
本当に、確かに中学生の時のことなんて楽しかったことしか思い出せなかった!!(驚愕)
まぁそんなことは置いといて、(さっきから話ズレすぎ)子供って辛いことがあると急に凄く大人びると思うんですよ。
それは間違いなく不幸なことなんですが…。そういう話が書きたかったんです。かなり不発ですが_| ̄|○
幸赤奥が深すぎ!マイナーでも強く生きてゆくよ!ファイオー!!(ノД`)(泣きながら)
つか私、ゆっきーはもう1年くらい入院してるのかと思い込んでたら(オイ)入院してまだ2週間とかだったのね…
ちなみに前回の話とは別につながってないんで、赤也たんゆっきの前で泣きまくり_| ̄|○
でも中学生だもん、泣きたいときは泣くべき。(前回と矛盾)でもまあ泣くのを必死で堪えてる赤也たんも萌えなんで(黙れ)