「アンタ、まさか…」


「あの長髪としかしたことない、とか言わないよな…」



初めてした時に、思わずそんなことを尋ねてしまったのを覚えている。
それは酷く間抜けな質問で、彼は綺麗な顔を傾けて、もしそうだと言ったら?と笑った。








Be convinced





星痕症候群が治っても、彼はもう歩けないのかいつも車椅子に乗っていた。
でも時々、いきなり立ち上がったりするから本当に歩けないのかどうかは知らない。
思えば自分は、昔から彼のことなど何も知らなかった。
それは今でも変わらず、自分は余計なことは言わないし聞かないし、彼もまた同様なので、
いつまで経っても平行線は交わることもなく、それでも細い糸は切れることを恐れるかのように、こんな関係は続いていた。
例え暫くの間会わなくても、結局自分の携帯には必ず電話がかかって来た。
―例の如く取らないのだけれど、留守電の彼の声を聞くと何だかとても会いたくなってバイクを飛ばして彼の元へ行ってしまう。
(そうなることが)判っていてやっているのだろう、ルーファウスは(元)社長のくせにそういう娼婦のような真似がとても上手かった。





「クラウド」


柔らかい声で呼ばれる。
そう呼ばれたら、自分は彼の傍に寄って彼を抱き上げて、ベッドの上まで運ばなければならない。
たまに、わざとやってるんじゃないかとすら思うけれど、悪い気はしないので何も言わなかった。



―プライドの高い人だから。
こんなこと―例えば歩けなくなんてなったら、もっともっと落ち込んで自虐的になって、そんな姿を晒すことさえ拒むかと思っていた。
でも彼はむしろ前より堂々としていて、平気な顔で自分の名前を呼んで、自分に抱っこされても満足げな顔すらしている。
判らない、と思う。前よりもっと判らなくなった。
それでも聞くことはしなかった。
結局自分は臆病なのだ。







「…もっとヘコむかと思ってた」


ベッドサイドでタバコをふかしながら、そう一言だけ言うと、判っているのかいないのか、ルーファウスは意外か?と言った。



「…うん」

「お前は、俺のことをただのインテリぼんぼんとでも思っているかも知れないが」


彼は気分によって一人称がころころ変わるようだった。
別にどれでもいいけれど。



「…これでも挫折の多い人間でな、そういうことはあまりしなくなった」


そういうこと、って落ち込んだりとかそういうこと?―そう心の中だけで聞いた。



「16の時かな…。親父を暗殺しようとして失敗したことがあった。あの時はさんざんだったな…
 やっと手に入れた神羅も、最期の方はボロボロだったしな。結局俺は宝条のコマだったというわけだ。」


ルーファウスは楽しそうに笑った。もしかしたら本当に楽しかったのかも知れない。
それともそう振舞っているだけなのか。
何しろ、過ごした環境が違いすぎる。
生まれた時から社長の息子で、神羅の名を継ぐ為にありとあらゆること―例えば勉強や武器の扱い方、
学校では決して教えてくれないことなんかに及ぶまで―叩き込まれた彼の真意なんか判るはずもなかった。



「アンタ、何やるにもぶっとんでるよな…」


まぁそんな普通はショッキングであるはずの話を聞かされても、特に驚いたりすることはない。
なんせ初めて会った時など、彼は恐怖政治などと使い古された言葉を使ってハハハハと高笑いをしていたのだから。
クラウドは、こんな綺麗な口唇からそんな二次元の世界でしか聞いたことのない言葉が出てくるのを聞いて、
やっぱり顔が綺麗なやつは変わっている、とかどうでもいいことを思ったのを覚えている。
強烈なファーストインパクトはとても心に残って―それでも結局こんな関係になったのはとても後のことだけれど。
そもそも自分は、ルーファウスがあの後―ウェポン神羅ビル激突以降も生きていたことすら知らなかったのだ。




「…まぁ良く生きてたよ。しぶてーな…」


長い長い睫毛に口唇を落とすと、ルーファウスはくすぐったそうに笑った。
睫毛の先まで彩る見事な金の色。
自分も絹のような金髪と謳われ、仲間たちに大概美人だとか何とかからかわれたものだが、彼のそれは群を抜いていた。
この美しい神羅のトップが、あの歪んだ会社で。
他の誰かと―ツォンやレノやルード、それに宝条にセフィロス、
もしかしたらプレジデントすらも―関係を結んでいたとしても全く不思議ではなく、むしろそれが自然のような気もした。
逆に、彼があのボディガートというよりはむしろ度を超えた恋人のように付き従っている長髪の男のことだけ想って、
彼にだけ心を開いていたとしても―それはそれでありえる話であった。




「ルーファウス…。あんたは誰が好きなの?」

「…誰だと思う?」


そんなことを言われても判らなかった。
誰の名前を言われても納得出来る気がしたし、誰でもないような気もした。
ルーファウスは白い指先を伸ばして、クラウドの輪郭をなぞった。





「…今はもう…俺をその名で呼ぶのはお前だけだな…」



(…?)

(ツォンとか、普通に呼んでいた気もするけど…)

(「今は」?)

(まさか…)



「ルーファウス、それって…」

「お前は」


クラウドの言葉は、ルーファウスのいつになく強いそれに遮られた。



「あの古代種の娘のことが忘れられないのか…?」

「…」

「…そうだな…あの戦いは…失うものが多すぎた…」


―もっとも、俺が奪ったものも多いが…
そう言って彼は自嘲的に笑った。
こんな風にじゃなくって、彼はもっと幾らでも、普通に笑えるのに。
何度も見たことあるのに。その方がずっと可愛いのに。
そんな小さなことが、何故だかとても悔しかった。
彼が他の誰かと関係を持ってるとか、そんなことを考えるよりもずっと。
クラウドは衝動的にルーファウスの細い身体を抱き締めた。




「じゃあ俺にしとけよ…。俺はあんたをこうする権利があるんだろ?」


お前がそんなことを言うとはな、とルーファウスは少し笑った。




「そうだな…。お前は特別だ」


「…クラウド。お前だけだ…」



その澄んだ声は麻薬のようにクラウドの脳神経を伝って、思考回路を停止させる。
そのせいか、嘘でも何でも、とりあえず彼は満足した。
ベッドのシーツに伸びた白い指に、自分のそれを絡めて。
いったい今は何時なんだっけ、とかそんなどうでもいいことを考えながら、クラウドは改めてルーファウスの口唇を塞いだ。








―生きていたことすら、教えてくれなかったのは。
たぶん、こうなる気がしていたからだと思う。
次に目と目が合えば自分たちはこんな風に抱き合ってしまうのだと、初めて逢ったときからきっと知っていたのだ。



クラルーも脳内に色んなバージョンがあるのですが、これは初対面で神羅ビル屋上で戦ってから、
その次に会ったのはAC
っていう凄まじいタイムラグがあるバージョン。
でもそれってかえって萌えじゃないですかね…(知らんよ)
いやFF7ゲーム中から既にデキてたってのもいいけどね。
つか別にわたしはルー総受というわけではありません。(どう見てもそうだろ)
でもツォンルーでツォンレノでクラルーがうちの3本柱かも(そんな柱は心底どうでもいい)
そしてルーの本命はよもやプレジデントだったんじゃないかという恐怖に未だにとりつかれていますorz
つかルーはエリート階級のくせに挫折に弱い子ってわけじゃぜんぜん無いもんね。
むしろ全然挫折だらけだもんね。(※褒めている)すごいよルー(;´Д`)ハァハァ
しかも「
私は楽しくて仕方がない」発言ですよ!逞しいよルー(;´Д`)ハァハァ
タイトルは「確信する」という意味((; '_ゝ`)フーン)
淡々としてて萌えのカケラもない小説で正直すいません_| ̄|○
051106


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