「恋次…キサマ、未だに一護に手を出しておらんそうだな?」
―ある日の午後。
大勢の死神たちが談笑する食堂で、突然目の前に現れたルキアがダン!!!!と味噌汁をぶちまけそうな勢いで恋次の前にトレイを叩きつけてこう言ったので、デザートのみたらし団子にかぶりつこうとしていた恋次の手は完全に止まった。
「ハ…?」
「一護が生殺しだと嘆いておったぞ。付き合って三ヵ月だか半年だか知らぬが…さっさと…さっさと犯せ!!!」
ルキアらしからぬ下品な物言いと大声に、恋次は慌てて口を塞いだ。
「ちょ…たしかに俺と一護はまだ健全なお付き合いだけどさ♪なんでオマエがそんなキレてんだよ」
「♪…じゃないわ莫迦者ーーー!!!!!」
カラのトレイで殴り飛ばされて、恋次の脳裏に火花が散った。
「あやつ…あやつ私に何て言ったと思う!!???」
「え?」
「『ルキアは恋次と経験あるのか?』―とか言ったのだぞ!?真顔で!!!真顔でだぞ!!!(二回言った)本気で聞いてきたんだぞ!!!?これについてどう思う!???」
「どうって……ないよな……」
「当っっったり前だ莫迦者ーーーー!!!」
ルキアが腰の袖白雪に手を掛けようとしたので、恋次は慌ててその腕を押さえ付けた。
「とりあえず私は殴った、殴ったね!!!生まれて初めてあんなに誰かを殴ったね!!!殴り足りなかったからぐるぐる縄で縛り付けて、もうコンでも浦原でも石田でも(略)誰でもいいから誰かこやつを犯せ!!…と書き置きを残してこっちに来たのだぞ!!!」
「…」
仮にも幼なじみのこの少女は、そんなにも自分と誤解されるのは嫌だったのか…と思いつつ、流石に一護の安否が心配になった。まぁ彼のことだから自分以外に指一本でも触らせたりはしないだろうけれど。
「でもさ、そんなに急がなくても。一護はまだガキだし」
「一護もキサマに言われたくはないだろう」
「…。そりゃ俺だって一護とシタイけど。なんつーか、俺には勿体ないっていうかさ…付き合ってるってのも…ほんとに付き合ってんのかなぁってゆうか…俺の夢とかじゃねぇのかなとか…。それにあいつちっこくて、ちょっと抱き締めただけでも壊れそうで…それなのにあのカラダを俺のものにするなんて…(以下省略)」
「キサマの意見は手温くて吐き気がする」
「…」
この幼なじみはこんなにも冷たかっただろうか、と恋次はぼんやり思った。
「とにかくさっさと既成事実を作れ。キサマと関係があるなどと思われては末代までの恥だからな!!!!」
ルキアは大きな瞳を極限まで吊り上げて、ご飯と味噌汁を鬼の早さでかき込むと早々に席を立ってしまった。
そこまで言わなくてもいいのに…と少々傷つきつつ、恋次はどうしたものかと溜息をついた。
*
「犯せよ。」
「あぁ、犯せ。今日にでもな」
「どう考えても犯すべきよね〜」
「…みんな、言い方が美しくないよ。でもまぁ、僕も賛成かな」
仕事が終わってから酒場にいた死神たちにうっかり打ち明けてしまったところ、皆口を揃えてそう言った。
「真面目に考えてくれてます…?」
恋次はちら、と先輩たちの顔を見て聞いた。修兵に一角に乱菊―そして弓親、皆が皆ベロベロに酔っている。
まぁ、こんなメンツに真面目に相談した自分も馬鹿だったかも知れない。
「馬鹿ねぇ、あんた。私が一護なら耐えらんな〜い。女ってのはねェ、奪われたい生き物なのよぉ〜♪」
「一護は女じゃないし!!だいたい乱菊さんと俺の一護を一緒にしないで下さいよ!!」
「アンタ、アタシが遊んでるとでも言いたいワケ!??」
「いや決してそうゆうわけでは…。でも一護はほんとに…」
恋次はぼんやりと恋人のことを思い出しながら言った。
「その、ちょっとキスして舌入れても目ェ潤ませちゃったりするから…。そんなの見てたら抱くなんて…考えただけでほんと、俺の方がイきそうで…」
「「「「…。(ヘタレ…)」」」」
「それ演技じゃね?(ズバッ)」
「しっ…失礼な!!一護を侮辱したら一角さんでも許しませんよ!!!」
「まぁ、そのへんは置いてといて。で、付き合ってどのくらいだったっけ?」
「えと、四月くらい…?」
「良く我慢出来るわね、アンタ」
「我慢っていうか…、俺今まで一護が眩しすぎて、逆にそういうこと考えてなかったんですよね。確かにしたかったけど、それ以上にそんなこと考えるだけで一護が汚れそうで…」
「「「「…。(重症だ…)」」」」
「じゃあアンタ、いったいいつ抱くつもりなのよ?」
「うーん…確かに…(悩)」
「黒崎から迫ってきたりしねぇわけ?」
「そりゃあ…」
「で、どうしたんだ?」
「ほっぺにチューして、『おまえがもうちょっと大人になったらな…』って言ってます♪」
「「「…。」」」
「ヘタレのくせに生意気な口を聞くなーーーー!!!(#゜д゜)=○)゜Д)^^^^^^゜」
「乱菊さん、殴らないで下さいよ!!」
―話し合い(?)は無茶苦茶だった。
「じゃあアンタ、泊まりに行った時とかどーしてんのよ?」
「え、抱いて寝てますけど(はぁと)」
「「「「…。(むごん)」」」」
「じゃあ一角さんはいつ弓親さんに手出したんですかァ?」
「そんなん覚えてねぇよ。ずっーーーーと前のことだしな。もしかしたら今の一護より年下だったかもな」
「もうっ一角ってば!!そんなことバラさなくったっていいのに!!!(照)」
「「「…。」」」
「黒崎って幾つだったっけ?」
「十六になったばっかだろ?」
「一角さんなんか詳しいですね…」
「一護の歳を知ってるくらいで妬くな!!!そのくらいうちの隊長だって知ってらぁ!!」
「でもさ、一護ってばコーコーセイでしょ?あの子モテるからいつ彼女出来ちゃってもおかしくないし。あっちのコーコーセイなんて、日替わりで相手変えちゃうみたいな世界でしょ?」
「そーだよな。女じゃなくても茶渡とか石田とかいるしな」
「浦原サンとかも、危険だよね〜」
「朽木ルキアと…って選択肢もアリかもな」
「…」
「ね、恋次。真面目な話、とっとと抱いちゃった方がいいって。折角あんなカワイイ子があんたみたいなへっぽこを好きになってくれたんだからさ。一回ヤっちゃえば、あとはあんたなしじゃ生きていけないカラダにしてやればいいのよ」
真顔で諭して来る乱菊を見て、恋次は女って怖い生き物だなぁと思った。
「そういえばおまえ、好きになった当初もここでさんざん言ってたよなァ」
「そうそう、一護たちが帰った日からね…。『俺は天使に出会ってしまったのかも…』とかすごい真顔でさぁ。いっそソレ本人に言えばいいのに、ってその場にいた誰もが思ってたわよ」
「みんな流石に呆れてたよね〜」
「まさか両想いになるとは誰も思わねぇよな〜」
「…(ひでぇ…)」
段々論点すらもズレてきた頃、ガラリと酒場のドアが開いてその場の空気が一瞬ひやりと硬直するのが判った。
―ある日の午後。
大勢の死神たちが談笑する食堂で、突然目の前に現れたルキアがダン!!!!と味噌汁をぶちまけそうな勢いで恋次の前にトレイを叩きつけてこう言ったので、デザートのみたらし団子にかぶりつこうとしていた恋次の手は完全に止まった。
「ハ…?」
「一護が生殺しだと嘆いておったぞ。付き合って三ヵ月だか半年だか知らぬが…さっさと…さっさと犯せ!!!」
ルキアらしからぬ下品な物言いと大声に、恋次は慌てて口を塞いだ。
「ちょ…たしかに俺と一護はまだ健全なお付き合いだけどさ♪なんでオマエがそんなキレてんだよ」
「♪…じゃないわ莫迦者ーーー!!!!!」
カラのトレイで殴り飛ばされて、恋次の脳裏に火花が散った。
「あやつ…あやつ私に何て言ったと思う!!???」
「え?」
「『ルキアは恋次と経験あるのか?』―とか言ったのだぞ!?真顔で!!!真顔でだぞ!!!(二回言った)本気で聞いてきたんだぞ!!!?これについてどう思う!???」
「どうって……ないよな……」
「当っっったり前だ莫迦者ーーーー!!!」
ルキアが腰の袖白雪に手を掛けようとしたので、恋次は慌ててその腕を押さえ付けた。
「とりあえず私は殴った、殴ったね!!!生まれて初めてあんなに誰かを殴ったね!!!殴り足りなかったからぐるぐる縄で縛り付けて、もうコンでも浦原でも石田でも(略)誰でもいいから誰かこやつを犯せ!!…と書き置きを残してこっちに来たのだぞ!!!」
「…」
仮にも幼なじみのこの少女は、そんなにも自分と誤解されるのは嫌だったのか…と思いつつ、流石に一護の安否が心配になった。まぁ彼のことだから自分以外に指一本でも触らせたりはしないだろうけれど。
「でもさ、そんなに急がなくても。一護はまだガキだし」
「一護もキサマに言われたくはないだろう」
「…。そりゃ俺だって一護とシタイけど。なんつーか、俺には勿体ないっていうかさ…付き合ってるってのも…ほんとに付き合ってんのかなぁってゆうか…俺の夢とかじゃねぇのかなとか…。それにあいつちっこくて、ちょっと抱き締めただけでも壊れそうで…それなのにあのカラダを俺のものにするなんて…(以下省略)」
「キサマの意見は手温くて吐き気がする」
「…」
この幼なじみはこんなにも冷たかっただろうか、と恋次はぼんやり思った。
「とにかくさっさと既成事実を作れ。キサマと関係があるなどと思われては末代までの恥だからな!!!!」
ルキアは大きな瞳を極限まで吊り上げて、ご飯と味噌汁を鬼の早さでかき込むと早々に席を立ってしまった。
そこまで言わなくてもいいのに…と少々傷つきつつ、恋次はどうしたものかと溜息をついた。
*
「犯せよ。」
「あぁ、犯せ。今日にでもな」
「どう考えても犯すべきよね〜」
「…みんな、言い方が美しくないよ。でもまぁ、僕も賛成かな」
仕事が終わってから酒場にいた死神たちにうっかり打ち明けてしまったところ、皆口を揃えてそう言った。
「真面目に考えてくれてます…?」
恋次はちら、と先輩たちの顔を見て聞いた。修兵に一角に乱菊―そして弓親、皆が皆ベロベロに酔っている。
まぁ、こんなメンツに真面目に相談した自分も馬鹿だったかも知れない。
「馬鹿ねぇ、あんた。私が一護なら耐えらんな〜い。女ってのはねェ、奪われたい生き物なのよぉ〜♪」
「一護は女じゃないし!!だいたい乱菊さんと俺の一護を一緒にしないで下さいよ!!」
「アンタ、アタシが遊んでるとでも言いたいワケ!??」
「いや決してそうゆうわけでは…。でも一護はほんとに…」
恋次はぼんやりと恋人のことを思い出しながら言った。
「その、ちょっとキスして舌入れても目ェ潤ませちゃったりするから…。そんなの見てたら抱くなんて…考えただけでほんと、俺の方がイきそうで…」
「「「「…。(ヘタレ…)」」」」
「それ演技じゃね?(ズバッ)」
「しっ…失礼な!!一護を侮辱したら一角さんでも許しませんよ!!!」
「まぁ、そのへんは置いてといて。で、付き合ってどのくらいだったっけ?」
「えと、四月くらい…?」
「良く我慢出来るわね、アンタ」
「我慢っていうか…、俺今まで一護が眩しすぎて、逆にそういうこと考えてなかったんですよね。確かにしたかったけど、それ以上にそんなこと考えるだけで一護が汚れそうで…」
「「「「…。(重症だ…)」」」」
「じゃあアンタ、いったいいつ抱くつもりなのよ?」
「うーん…確かに…(悩)」
「黒崎から迫ってきたりしねぇわけ?」
「そりゃあ…」
「で、どうしたんだ?」
「ほっぺにチューして、『おまえがもうちょっと大人になったらな…』って言ってます♪」
「「「…。」」」
「ヘタレのくせに生意気な口を聞くなーーーー!!!(#゜д゜)=○)゜Д)^^^^^^゜」
「乱菊さん、殴らないで下さいよ!!」
―話し合い(?)は無茶苦茶だった。
「じゃあアンタ、泊まりに行った時とかどーしてんのよ?」
「え、抱いて寝てますけど(はぁと)」
「「「「…。(むごん)」」」」
「じゃあ一角さんはいつ弓親さんに手出したんですかァ?」
「そんなん覚えてねぇよ。ずっーーーーと前のことだしな。もしかしたら今の一護より年下だったかもな」
「もうっ一角ってば!!そんなことバラさなくったっていいのに!!!(照)」
「「「…。」」」
「黒崎って幾つだったっけ?」
「十六になったばっかだろ?」
「一角さんなんか詳しいですね…」
「一護の歳を知ってるくらいで妬くな!!!そのくらいうちの隊長だって知ってらぁ!!」
「でもさ、一護ってばコーコーセイでしょ?あの子モテるからいつ彼女出来ちゃってもおかしくないし。あっちのコーコーセイなんて、日替わりで相手変えちゃうみたいな世界でしょ?」
「そーだよな。女じゃなくても茶渡とか石田とかいるしな」
「浦原サンとかも、危険だよね〜」
「朽木ルキアと…って選択肢もアリかもな」
「…」
「ね、恋次。真面目な話、とっとと抱いちゃった方がいいって。折角あんなカワイイ子があんたみたいなへっぽこを好きになってくれたんだからさ。一回ヤっちゃえば、あとはあんたなしじゃ生きていけないカラダにしてやればいいのよ」
真顔で諭して来る乱菊を見て、恋次は女って怖い生き物だなぁと思った。
「そういえばおまえ、好きになった当初もここでさんざん言ってたよなァ」
「そうそう、一護たちが帰った日からね…。『俺は天使に出会ってしまったのかも…』とかすごい真顔でさぁ。いっそソレ本人に言えばいいのに、ってその場にいた誰もが思ってたわよ」
「みんな流石に呆れてたよね〜」
「まさか両想いになるとは誰も思わねぇよな〜」
「…(ひでぇ…)」
段々論点すらもズレてきた頃、ガラリと酒場のドアが開いてその場の空気が一瞬ひやりと硬直するのが判った。
「―恋次、ここにいたのか」
酒場などには滅多に姿を見せない彼―‥六番隊隊長の朽木白哉が入ってきたのだからそれも当然だろう。
「朽木隊長も飲みませんかぁ〜?」
「…隊長?どーしたんですか?俺、どっか計算間違ってました?」
恋次は思わず今日提出した書類のことを思い出して尋ねたが、白哉は恋次も―もちろん乱菊の誘い文句も無視して用件のみを簡潔に口にした。
「…貴様に客が来ているから連れて来てやったのだ」
白哉がそう言い終わるか終わらないかというところで、彼の後ろにいた一護がひょこっと顔を覗かせた。
「恋次!!!…とみんなも。」
「一護ぉ????」
恋次が素っ頓狂な声を上げると、一護はえへへ、と笑って言った。
「連休だからせっかく遊びに来たのに、隊舎に行ったら白哉しかいねぇんだもん。でも白哉が一緒に恋次探してくれたんだぜ?」
「…丁度手が空いていたのでな」
「…。(え、ナニその隊長らしからぬ優しさ…)」
(ホラ!!早くも朽木隊長を誘惑してるわよ!!!)
(今日こそ決めないとな、恋次!!!)
後ろから皆にコソコソとつつかれて恋次は冷や汗が出てきた。
「そりゃあわざわざどうも…。じゃあ皆さん、大事なかの…じゃなくて客が来たので俺はこのへんで…」
「「「「…。」」」」
「―待て、恋次」
白哉の隣にいた一護の腕を引いて歩き出そうとしたら、唐突に白哉に呼び止められた。
なんとなく嫌な予感がして振り返る。
「隊長、まだ何か?」
「…貴様が要らぬのなら私が貰うぞ?」
表情ひとつ変えないでそんなことを言われたら、流石に危機感を覚えた。
「―!!結構です!!!じゃあ失礼します!!!!!」
思わず反射的に隣の一護を抱き上げて鬼の早さで酒場をあとにした。
「あいつの瞬歩あんなに速かったっけ…?」
「…やれば出来るじゃない♪」
乱菊は満足そうに言って、ごくりと酒を仰いだ。
*
(なんで知ってんだ隊長…よもや盗み聞き…!?つかルキアの野郎、隊長にまでチクったんじゃあ…)
(つーか要らないわけねぇだろーーー!!!隊長に取られるくらいならマジで俺が今夜喰ってやるーーー!!!)
「恋次…恥ずかしいんだけど…」
ぜぇぜぇ言いながら自宅の近くまで帰って来たら、一護が小さな声で言った。
「…え、あぁ、悪い。」
慌てて、抱き上げたままだったカラダを下ろしてやる。ルキアと同じくらい軽いからまったく苦にならなくて、ついつい抱いたままで移動してきてしまったのだ。
「仕事、忙しい?ごめんな連絡もせずに来て…」
「そんなことねぇよ。おまえこそ連休潰して来てくれて嬉しい」
一護の細い手を取って指を絡めた。
恋人と手を繋ぐなんて何年ぶりだろう、と思って幸せな気持ちになった。
ふと仲間たちの言葉を思い出して、こんなことで幸せいっぱいになってるからいけないのだろうか…とぼんやり思った。
「恋次んち、はじめてだなー‥」
「そうだな、いっつもおまえんちだもんな。…あのさ一護、やっぱそのつもりで泊まりに来たの?」
「…ん。いちお連休三日あるし。つか、するまで帰んないから!!」
一護は家出でもしてきたみたいに言い放って、絡めた指に力を込めた。どうやら一大決心して来たらしい。
「聞くけど…そんなに俺とシタイ?」
「シタイよ。ってゆーより恋次がしたがらないから心配なだけ…」
一護はちょっと俯いて、指は絡めたままで反対側の腕で恋次のそれに絡み付いた。
「ひょっとして俺がオンナノコじゃないからそーゆう気になんないのかなぁ…とか」
「ばかなこと言うなよ、そんなことあるわけねーだろ。俺はそのまんまの一護が好きなの。」
「ほんとに?だって一緒に寝てもへーぜんとしてるし…」
「いや俺はご老体だから性欲とか衰え気味で…っていやいやそうじゃなくて。おまえのこと欲しくないわけねぇだろ?でも、何となく手ェ出すの怖くて。こんなこと言うの恥ずかしいけど、おまえ…俺の聖域っていうかさ…」
ボソボソとさっき話していた内容を要約して口に出したら、一護はケラケラ笑った。
「ほんとばかだな恋次は。そんなこと初めて言われた」
「…笑うなよ、益々恥ずかしいだろ!!」
一護はごめんごめん、と言って、立ち止まってから更にそういえば―と付け加えた。
「さっき白哉に『淋しいならこの私が可愛がってやろうか?』とか口説かれて…」
「えぇっ!???もうすでに!!!??あの隊長がそんなセクハラ発言を!!???」
恋次は当然ながら大袈裟に声を上げた。
「そ、それだけはぜったい駄目!!!ヤるぞ、今すぐ!!!!」
恋次はがばっと一護をもう一度抱き上げると、もうすぐ着くというのに猛ダッシュの瞬歩で家へ向かった。
(…もちろん、嘘だけど。ばーか、現役コーコーセイなめんなよー)
一護は恋次の腕の中で口唇の端だけでこっそり笑った。
…まぁ、織姫とたつきに相談したら意気揚々と教えてくれた手なのだが。つくづく女子高生は怖い。
恋次が白哉に本気でカマかけられたことなど気付いている筈もなく、一護は流石に白哉に悪かったなぁ、とか何となく思って笑いをこらえた。
「そいや一護、昼間ルキアに縛られなかった?」
「ああ、うん。あんなん自力で解けたけど。とりあえずコンにも石田にも浦原さんにも絶対犯されたくねーよな(笑)」
「ったくルキアのヤツ…」
「…犯されるなら恋次がいいや」
ぼんやり言ったら、恋次はちょっと顔を傾けて軽くキスをした。
「…いいかた悪いけど、スグ犯してやるよ」
「優しくシテ…とか言った方がいいの?」
思わず本気で聞いたら、バカ、と恋次は笑った。
「俺はいつもおまえには優しいだろ?」
「…そか。」
あっさり納得して、この手はいったいどんな風に自分に触れるのだろう―とか想像したら、一護はまた笑い出しそうになった。
―長い夜の幕が上がる、茜色の夕焼けを見ながら。