―ほんとうはあいしてる。ずっと―‥初めて会ったときから。






 さくらんぼみたいなその口唇に夢中で口付けながら初めて甘い声でそう告げたら、きみはむしろ死刑にでもなったような顔をした。



 ―良くおぼえている。キミをえいえんに俺のものにしたあの日のこと。











愛玩の刑





 聞きたくないと耳を塞いだ両手を無理矢理ほどいて、まるで苛めているみたいに何度も好きだと言った。無理強いは好きじゃないけれどこの時ばかりは泣いて嫌がってもやめなかった。
 泣いてもダメだと知った相手は次に必死で振り解こうとしたけれど、こちらも思いっきり抱き締めて離す気など無かった。
 そもそも幾ら腕が立つといっても相手は手負いで通常時よりかなり弱っていて、ただでさえ華奢なカラダを自分のこの腕の中に収めておくことは容易かった。
 自分と同じ筈のこのカラダは―‥自分はこんなに細くて、力を入れたら壊れそうに脆かっただろうかとぼんやり思った。

 ―逃がすものか。本体であるこの自分から逃れられるわけがないと思い知ればいい。


『うそつき…!!』

 今の自分では逃げられないと悟ったのか、白い虚は遠慮を知らない量の涙を零しながら―搾り出すように非難の言葉を吐いた。
 人形みたいに大きな瞳から、つくりものかと思うくらい大粒の涙が頬を伝って―‥もうずいぶん長いこと泣いた記憶なんてなかったから、目の前の彼は本当に自分なのかと―この自分の中にこんなに素直に涙を零せる部分があったのかとぎょっとしてしまった。


(すげぇかわいい…)

 磁石かなにかに引き寄せられるみたいに反射的に口唇を塞いだ。重ねた口唇は微かに震えていて…本気でそそられて目が回った。
 こんなにきつく抱き締めていても足りなくて―‥そのカラダを自分のものにしたいと心底思った。
 自分と同じ顔に欲情するなんて正気じゃないとずっと思っていた。でも本当はずっと本気だった。―初めて寝た時からずっと。


『…なんで…キス…するの?』

 息の上がった掠れた声で虚はどうにかそう尋ねた。本気でわからない、しんじられないという目をしていた。


『すきだから。かわいいと思ったから。惚れてたら、かわいい、キスしたい、…俺のものにしたい、って…思うのは普通だろ?』

『…。』

『…おまえこそなんで泣くんだよ』

『だっていちごがウソつくから…』

 ぜんぜん、まったく信じる気にもなれませんと虚の顔には書いてあったけれど、こちらだってこんな状況でうそなんかつくわけない。―そもそも自分は嘘でこんなことは言わない。彼だって知っているはずなのに。


『俺が信じられない…?じゃあカラダに教えてやるよ…。ほんとにずっと我慢してたんだぜ?俺―‥』

 確かに、ずっと我慢はしていた。
 意識のない彼に泣きながら名前を呼ばれている間中、ただ抱いているというのは拷問のようだったのだ。
 今のこいつはかろうじて熱が下がったばかりだ―とどこか頭の隅の方では判っていた。せめてもう少し回復してから―と思う気持ちもちゃんとあったのだけれど、この状況で我慢出来るほど我慢強くもなかった。


 相手の返事も聞かずに着せていた自分の死覇装を開いて、雪のような白い肌に咲く桜色の突起をぺろりと舐めてから―口に含んだ。

『やっ―』

 虚の口からいつもの悲鳴のような声とは違った―耳につく甘い声が洩れた。


『や、だっ…やめて…いちご…』

 セックスを怖がるようなタイプじゃないくせに、いつもと違う―と思ったのだろうか、思わず自分を押しのけたその両手ががたがた震えていて―‥理性の糸がぶちんと切れそうになるくらい欲情した。


『優しくするから…』

 相手があんまり震えているから―つい昔の少女漫画のような台詞が口唇から零れた。―自分で言うとこれほどウソくさいというかマヌケな言葉はない。

 もっとも―最初から判っていた、彼がセックスに慣れているというのは単に男性器を受け入れることに慣れているという意味で、こういう風に愛されることに関しては殆ど未経験だった。
 言ってしまえば彼はカラダを貫かれる痛みに慣れることをセックスに慣れることだと勘違いしているようだった。
 自分はいつも彼の好きにさせていたから良く判るのだけれど、この虚は本当にセックスというのは入れて動けばいいんだと思っているフシがあった。そんな無茶なやり方をしても気持ち良くないだろうと、たまに座位からひっくり返してやろうとしたらいつでも彼は嫌がった。顔を引き寄せてキスしてやったりするとそれだけでびくっとして―‥心底どうしていいのか判らない、という顔をした。―そのたびに何度も、このまま有無を言わせず押し倒して死ぬほど抱いてやりたいと思ったことをおぼえている。
 彼は優しくされることが極端に苦手―というよりは、愛されるということをまるで知らない野良猫のようだった。こちらから触れるといつでも全力で逃げようとした。
 不特定の相手が何人もいたことは知っているけれど、たぶん誰が相手でも嫌がって―あるいは強い虚だから、最初からそういう風にはさせなかったのだろう。
 自分はもともと相手の嫌がることを強いるのは好きじゃないし、彼への気持ちを誤魔かしていたことも手伝って―‥野良猫が自然と慣れるのを悠長に待っていたらこんな結果になってしまった。―全部卑怯な自分のせいだ。
 もう爪を立てられて泣いて嫌がっても無理矢理抱き締めて―‥愛されるということがどういうことか判ってもらう必要があると思った。
 起きてしまったことの取り返しはもうつかないけれど―せめてこれからは本気で愛してやりたかったから。


『怖がんなくていいから…。なんにも怖いことはしねーから…な…?』

 口内に含んだままの突起を舌で優しく転がしてやる。セックスする時にこんな諭すみたいな言葉を使ったことは初めてだった。

『ッ―!やだっ、て…』

『ここはみんな感じるとこだから…別に恥ずかしいことじゃねぇから』

『な…なに言ってんの、いちご…』

『説き伏せてんだよ。おまえがこういう風にされんの嫌なのは判るけど、ちょっとだけ我慢してくれねぇか?おまえ怪我人だし…ぜったい痛くないようにするから…』

 もともと乱暴なセックスをする方ではない。それでも今の彼は手負いで、しかも少女のように怯えていて―いつもするようなやり方で、というわけにもいかなかった。


『ちょっとだけ、じっとしててくれな…?』

 傷のある左手に負担がかからないように気を使いながら少しずつ首や胸から触れていく。―と言っても相手は自分のカラダでツボは何となく判るわけだし、見た目通り敏感で自分が思う通りに反応してくれるから、とにかく左手にかかる衝撃を少なくしてやるというコツさえ掴んでしまえば、行為をコントロールすることは決して難しくなかった。
 左手だけは指を絡めて固定して―あとはゆっくりとキスを散らしながら、空いた方の手と舌を使って丁寧に時間をかけてカラダの線をなぞっていった。


『―!ちょっ…待ッ―』

 ―そうして、行為をはじめてかなり時間が経過してから―その細い脚に手を掛けて開こうとしたら、もちろん相手は嫌がって暴れた。―そんな反応をされたらますますそそられるのに、と少し思った。


『…』

 隠すように伸ばされた右手を掴んで、腿を伝う体液に触れさせてやる。
 時間をかけて上半身を愛撫している間にすっかり溢れ出してしまったのだ。


『―!』

 虚が自分の濡れ方にびっくりして思わず手を引っ込めたその隙に無理矢理両脚の間に割り込むとそこをぺろりと舐めて―‥口で愛撫した。―口でされた経験のない相手をイかせるのは簡単だった。
 ものの二分もしないうちに他愛もなく達してしまったその体液を指に絡ませて、ゆっくりと体内に侵入する。既に溢れた液で後ろまで濡れていたそこは驚くほどあっさりと自分の指を飲み込んだので、するりと二本目も挿し入れた。
 体温は低いくせにさすがに内部は熱くて、内壁がきゅうと指を締め付けてくるのが判って―気持ちいいのかなぁ、かわいいなぁ、なんてぼんやり思った。
 少しずつ深く指を埋めながら舌を使ってゆっくりとカラダを開いていくと、やはり気持ちいいのだろう―イったばかりでも早々に欲望が溢れて自分の指を伝って入口の奥まで濡らしていく。


『ヤ、ダ…いちご…そ、んなことしなくても…』

 相変わらず震えた右手で、虚は自分の頭を何とか押しのけようとしたけれどそんな力の入らない手では到底無理な話だった。

『入る、ってか?あのな、何回か言ったと思うけど…セックスってのは入れればいいってもんでもねーんだよ』

『…?俺、やり方間違ってた?』

『そうじゃなくてさ…。まぁ、セックスにも色々あるしこれが全てってわけでもないけど…。でも俺はこうしたいんだ。だから今回は俺の好きにさせて?ちゃんと繋がりたい…それだけだから…』

『…いちごは、こんな恥ずかしいやり方したいの?』

『べつに恥ずかしいことねーよ、ふつうだよ。俺はもっとおまえの奥まで見たいだけ…』

『…こ、んなとこ見たい…??』

 虚は酷く小さな声で―それでも何とかそう言った。


『見たいよ…おまえのナカまで全部…見たい…』

 白い頬が羞恥で朱く染まる。その桃色の頬にひとつちゅっ、とキスをして埋め込まれた指をゆっくり抜いた。入口は準備万端とばかりに濡れ開いて、早く欲しいと自分を待っているのが触れているだけでも判る。
 こちらもそろそろ侵入を開始しようと―‥虚が感じているところを見ているだけですっかり高まってしまった自分のそれを出して見せてやった。


『ほら見てみろよ…おまえのココを見てるだけでこんなに…』

『―!』

 虚は耳まで赤くなって泣きそうな顔をした。

『そんなに照れんなよ、ホントにかわいいやつだな』

『だ、って…』

『―触ってみる?』

『え…』


 右手を取ってそっと自分自身に触れさせてやる。
 虚は一瞬びくっとしたけれど初めて見るものみたいにおずおずとそれに触れた。握る勇気はないらしく、指の先だけで溢れ出した体液に糸を引いてみる。

『すご…』

『だっておまえがかわいいから』

『え、えぇー‥?俺でこんなになるの…?』

『現になってるだろ。―もういいよ、これ以上おまえの手で触られたら俺もヤバイ…』

 自分の体液で濡れた相手の指先を舐め取ってやりながら、自身の先を入口に圧しあてて―そのまま身体を押し進めた。


『―んッ』

『チカラ、抜いてて…』

『あっ―!』

 ぐちゅ…、といやらしい音がして自分のそれは一気に虚の肢体内に飲み込まれた。


『や…すごい音、してる…』

『エロいカラダ…ほら、もう全部入ってるぜ…』

『い、いちいち言わなくていいっ―』

 吸い付くように締められて、やっぱりイイんだな、ということが判った。―カラダは正直だ。


『…痛くねぇか?』

『痛くないけど…あっ…こんなに脚開いて…恥ず、かしい…』

 この虚はこういう芝居がかった台詞が自然と出る。戦っていても、こうしてカラダを繋いでいても。―多分意識しているわけじゃないんだろうけれど。
 どこで覚えたのか―‥たぶん自分が何の気もなしに見たAVとかなんだろうけれど。

『…そのうち慣れるから気にすんな』

 AVみたいなこと言うなよ―と思いつつ、正直こちらもたまらない。冷静に返事をしているつもりだけれどカラダは高められた欲望には逆らえず―虚の体内の自分自身が存在感を増すのが判る。


『―ア…っ!』

 相手も敏感に反応して自分をきゅっと締め上げた。
 深く入っているそれをゆっくりと引いて―焦らすみたいに緩慢な動作で、また奥まで埋め込んでやる。


『…気持ちいいか?』

『やっ…そんなに深くッ―‥』

『ここもすげぇ硬くなってる…』

『んッ…!やめッ―そこっ―』


 張り詰めた胸の先をちょっと舐めただけで虚はびくんと大袈裟にカラダを震わせたので、次は少し強めに吸ってやる。
 硬く尖った突起はいやらしく濡れて、刺激を与えるたびに虚の口唇からはぁはぁと熱い息が漏れた。
 こんな風に普通に抱き合ってしたことはなかったから、背中に爪を立てられる感覚が新鮮だった。
 もっと声を上げて啼いてしがみついて―‥気が狂うくらい乱してやりたいと思っている自分がいることに気付く。


『なぁ、気持ちいい?』

『しつこいッ―‥』

『俺は気持ちいいよ…おまえのナカが熱くて…』

『んっ…いちごのもすげぇ熱い…もぉイきそう…』

『いーよ、ホラ…』

『あああっ―やッ…』

 奥の方を早いペースで突いてやると、相手は泣きそうな声を上げて絶頂を迎えた。


『いちごがすごい………くから…』

『俺もイきそうなんだけど…いい?』

『ん…』

 こくんと頷くその仕種があまりに可憐で、しかも達したばかりの敏感な粘膜にぎちぎち締められて―‥堪らずに相手の奥深くに欲を吐き出してしまった。


『あ…いちごのすごい…、熱……』

 本当にAVみたいなことを言うなぁ…と思いつつ、まぁ気にせずに口唇を塞いで抱き締めた。


『ずっとこうしたかった…』

『…え!?ナカダシを!?(※なぜかカタコト)』

『違ぇよバカ!…おまえをこうやって抱きたかったってことだよ!』

『こう…?今まで何回かしたのとどー違うの…?やり方が違うことくらいは…わかったけど…』

『違いっつーか気持ちの問題だよ。なんか愛し合ってるってかんじするだろ?―俺はこうやって抱かなきゃ、抱いた気がしないから…』

『あぃ………』

 いちごあいしてる、―といつも病気みたいに言っているくせに自分が言われるのは苦手らしく、虚はあからさまに瞳を逸らした。


『そーだよ、おまえを愛してる…』

 そこにつけ込んで逃げ道を塞ぐみたいに顎を持ち上げると、無理矢理目を合わせて言い聞かせるみたいに囁いてやる。白い頬をかあっと桃色に染める様は何度見てもかわいいな…と、思いながらキスをした。
 角度を変えて深く口付けながら相手の体内に埋め込んだままの自分自身を引き抜くと、接合部からドロ…と栓を失った白い液体が溢れ出して虚の太腿を汚した。


『―あ…』

『悪い、だいたい我慢出来るタイプなんだけど今日は無理だった…。こんなにおまえの中に出したら妊娠しちまうな…』

 まだ生温かい体液が零れ落ちるそこに指を差し入れて、自分の出したものを外に出してやる。
 体内はさっき以上に熱くてひくひくと自分の指を締め付けた。
 引っ掻くようにして内部に溜まったものを出してやると、指に絡み付いたもはやどちらのものかも判らない体液がボタボタと伝い落ちて―たまらなく卑猥だった。


『あッ…いちっ―』

『…全部出すからちょっと我慢してろよ』

『ちょっ…まだだ、め、だってっ…そんっ…』

『…んなイイ声出すなよ、またしたくなるだろ…』

『だってイったばっかなのに、いちごが指なんか入れるから……感じるだろ…』

『バカ…』

 声を上げる口唇をもういちど塞いで、再度抱きすくめるみたいに押し倒した。


『おまえ見てるとほんとに…我慢出来なくなる…』

『…いちごって、こんなにえっちだったっけ?』

 虚は生理的な涙を浮かべた大きな瞳できょとんと首を傾げた。
 一糸纏わぬ白いカラダは、自分が残した愛撫の痕と体液のみで飾られて非常にいやらしくて綺麗だと思った。


『だからそれはなぁ…。―まぁいいや、これからおまえを本気で俺のものにしてやるから…途中で気絶すんなよ…?』

『は?じゃあ今したのはナニ?』

『今のはまぁ儀式的な。…つーか、普通に一回目。』

『そんな何回もするものなの?もう俺のカラダは全部いちごのものになったとおもうけど…。あんなに…されたの初めてだし…』

『まだだよ…せめておまえのカラダから他の誰の痕跡も消えて無くなるまで―』

『でも他のやつなんて、やったっつってもほんとにちょっとだけだし。いちごとそう変わらないよ。いっつもやってたのはアーロニーロくら…いやなんでもない。それに他のやつにはあんなハズカシイ触らせ方とか、絶対させなかった…し…』

『そういうことじゃなくてさ。俺以外のやつが一度でもおまえに触れたってだけで嫌なの。この手も指も―‥おまえを彩るすべてを俺だけのものにしないと気が済まない…』


 もう隠す必要もないので包み隠さず思うままに言った。―言いながら、今自分は嫉妬に狂った怖い顔をしているんだろうなぁと思った。
 彼を抱く時に他の男の気配がするととにかくとても苛々してじりじりと焼けつくような気持ちになった。幾ら気付かないフリをしても、じわじわと胸の奥を焦がすそれは嫉妬と名前の付いた感情だと―‥この虚を抱く度に思い知らされるだけだった。


 ―この子は俺自身なのだから、間違いなく俺だけが独占していいはずだと―‥そんな傲慢なことをずっと―今ですら、本気で考えている。



『俺だっていちご以外のやつなんかと好きで寝てたわけじゃないよ。いちごが構ってくんなくて淋しかったからで…まぁ…今思うとそれも悪いけど…』

『そんなことは判ってるよ。おまえを責めてるわけじゃなくて。今回のことも含めて…悪いのはぜんぶ俺なんだ。―だから俺の手でおまえを全部―‥取り返さなきゃ気が済まない…』

『…いちご、そんなに独占欲強かったっけ?』

 虚は不思議そうな顔をした。彼から見たら今は自分の全てが信じられなくて、全てに戸惑っているに違いなかった。
 こんな時にどれだけ畳み掛けたところで逆効果だと―判ってはいたけれど、取り憑かれたみたいに口が止まらなかった。


 ―だってずっと独占したかった。
 心の奥の扉に鍵を掛けて誰にも見せないように閉じ込めておきたかった。己の表面にすら、出したくなかった。
 そこが光の射さないほの暗い世界だと知っていても―閉じ込めておきたかったんだ。


『そーだよ、俺は嫉妬深いんだよ。―ごめんな、まだ離してやれない…』

『ちゃんと繋がりたいだけって言ってたくせに、ウソツキ。―まぁ、いちごならいいけど…』

 そういえばそう言ったなぁ、と流石に反省した。
 遠回しにもう十分―、と相手が言っていることも判っていた。
 確かに怪我人相手に何度もするなんて正気の沙汰ではない。どんなに優しく丁寧にしたところでじわじわと身体を貪られたら疲労するに決まっているのだから。
 だけどこの時は制御出来るような精神状態じゃなかった。
 やっと想いを告げて高揚していたし、ちゃんと意識が戻ってくれて死ぬほど嬉しかったし。
 でも何よりも、初めて見た死覇装の下の白い裸体のいやらしさが強烈だった。誓って言うけれど、自分はこんなにもエロいカラダはしていない。―‥と、思う。
 胸まで飛び散った白濁液をぺろりと舐めると、虚は過剰にカラダを震わせて小さく声を漏らした。―そんな声を聞いたらもう我慢出来なかった。



『おまえの声…すげぇ感じる…。もっと―もっと啼いて…?』

『―!?』

 今まで辛うじて口に出すのはやめておいたその願望が遂に口をついて出てしまった。
 余程驚いたのか、虚は弾かれたように顔を上げた―‥その口唇を捕らえて夢中で貪った。


『おまえが思ってるよりずっとずっと―‥俺がどれだけおまえを愛してるか、どれだけおまえを欲しがってたか…これから全部教えてやるから…』

 こんな己だけの世界だからこそ言えるような、おおよそ自分らしくない宣言をして―‥痛々しいくらい残った胸の痕跡に謝罪するように軽くキスをした。









*


『ねぇ、いちご…』

 宣言した通り、己のねちっこさに自分でも呆れ果てるくらい抱いて、欲望のままに死ぬほど啼かせて―‥それから泉で軽くカラダを洗って(もちろんナカのものもきれいに出した)、更に傷の包帯を替えてやって―やっとのことで眠る体制に入っていると、腕の中の虚が掠れた小さな声で自分を呼んだ。


『どーした?傷が痛むのか?それとも俺が入ったトコロが痛い??』

『ち、違う!!!じゃなくて…こ…このまま寝るの?寝にくくない??』

 ―例の如く、抱かれて眠ることに慣れていないらしい。
 でも、自分が啼かせたせいで掠れた声を聞いていたら痛々しくて、このまま抱いていてやりたかった。結局また自分のワガママになるわけだが―ちょっとでも離したくなかった。


『全然。だいたい俺は三日も四日もおまえを羽交い締めにして寝てたし』

『じゃあいちごも腕、疲れてるだろ?ふつーにしててくれたらいいから』

 虚は至極もっともらしい言い訳をつけて、上目遣いでちら、とこちらを見た。どこで覚えたのか、こういうことは本当に上手い。
 そういえば先程意識が戻った時も人の気も知らないでしつこく離せと言われたことを思い出した。あの時も、しばらく離す気になんかならなくて随分苛めてしまった。
 三日も四日も意識がなくて、本気で心配したのに。意識の戻った彼に自分よりちょっと高いこの声で起こされて―泣きたいくらい嬉しかったことも…恐らくこの虚は知らないのだろうけれど。


『確かに、好きなように寝かしてやりてーのはやまやまだけど。…でもおまえが俺に慣れるまではこうしたい』

『いちごに…?』

『そう俺に。―俺に触れられることに…』

『…』

 軽くキスをして、腕の力を少し緩めた。


『…離してはくんないんだ』

『だって、抱いてたいんだよ。左手は潰さないように俺が支えててやるから。気にしないで寝ろ』

『いちご、こんなにゴーインだったっけ…』

 虚は本日何回目かの疑問を口にしてじっと自分を見た。

『だから、それはおまえだから…。…ま、そうだな、強引だよ。それに疲れてるから嫌でも眠れるだろ。無理させてごめんな、でも我慢出来なかった…』

 ちょっと不満げな虚の額にふわりとキスを落として言った。
 彼にはさも都合のいい言い訳のように聞こえているのだろう。病み上がりのところ非常に悪いとは思ったけれど、嘘はひとつも言っていない。


『おやすみ、愛しい俺…』

 さらに恥ずかしい言葉を紡いで、腕に抱いた小さな温もりに再び口付ける。―触れるだけの軽いキス。
 俺、と呼んだら虚は少しだけ頬を染めた。一護…、と自分の名前で読んだら死ぬほど嫌がったのに、これならいいのかな、と思う。


『―うん。オヤスミ、いちご…』

 虚はか細い指で自分の着物を握り締めて小さな声で返事をしてから、一言だけ付け加えた。


『これで俺、ほんとにいちごだけのものになったの―‥?』


 ―だから、この日なのだ。
 キミのココロもカラダも―ひとつのカケラも残さないように全部自分が奪い尽くした日。

 ―だから、結ばれたのはこの日。はじめて愛し合ったのはこの日。



『…そぉだよ。これでおまえは死ぬまで俺だけのものだ…もぅ誰にも触らせない…』

 まるで馬鹿な男みたいなことを言っているなぁ、と頭の隅の方でぼんやり思ったけれど、腕の中の虚がぞっとするくらい嬉しそうに微笑ったのでそんな考えは吹き飛んでしまった。
 この世間知らずの虚はまるで酷く年若い女の子みたいに、こういうわざとらしい束縛なんかを喜んだ。
 こんな病んだ愛の言葉じゃなくて、好きだと言った時に今みたいに嬉しそうに笑ってくれるようになったらいいなぁ…と、自分より少しだけ体温の低い虚を抱いて眠りながら思ったことを覚えている。

























「…」

 なんだか昔の夢を見たなぁ…、と目を開けた。―目の前の白い虚はあのときと同じ寝顔で眠っている。ここ自体が己の夢の世界みたいなものなのに、そこでもしっかり夢を見るのだからおかしなものだ。

 あれだけ嫌がっていたくせにあっさり一緒に眠ることに慣れてしまった虚は、自分から細い腕を回して抱き着いて眠っている。
 いつまで経ってもかわいいなぁ―となんだか不思議な気持ちでふわふわの銀色の髪の毛を撫でた。
 雪のように白い肌には自分が彼を愛した証拠―鬱血した所有の印があちこちに散らばっていて、昨日もこんなにしたっけ…、と思った。最初のうちは愛撫に慣れて貰おうと思ってやっていたのだけれど、いつの間にか妙に習慣になってしまった。

 それにしても抱き心地がいいなぁ―なんて思いながら、抱き枕みたいにぎゅうっと抱いた。熟睡しているところを申し訳ない気もしたけれど、昔の夢なんか見たら我慢出来ない。


 ふと思い返して絡めていた左手の傷跡を見てみる。
 真っ白な肌に美しいほど見事に入った一直線の傷に忠誠を誓うみたいに軽くキスをした。
 この消えない傷でこの虚を縛っているのは自分の方―‥よく判っている。
 口唇でこのカラダに残す儚い愛の証よりも、自分が彼を傷つけてつけさせたこの消えない刻印の方が強いような気がして時々怖くなったりした。
 非の打ちどころがないとすら思えるきれいな白い肌に唯一ついているこの傷を消せるものなら消してやりたいといつも思っているのに。
 まるで消えない所有の印のようだと―彼が自分のものである証拠みたいな気がすると心のどこかで考えてしまうことが自分で許せなかった。


「ぃちご…」

 ―どんなにか昨日も声を上げさせたのか、掠れた高い声で目を覚ました虚が自分を呼んだ。


「朝っぱらからどーかしたの…?」

 ―鼓膜に響く甘い声。自分は情事の直後だってこんな声は出ないだろう。この自分の身体のどこからこんな声が出るのだろうといつも思う。


「…なんでもないよ」

「怖いユメでも見た?」

 虚はちょっと笑って、背中に腕を回した。体温の低い虚の指先の―ちょっとだけ冷たい感触。

「…そうかもな。」

 そう返事をしてまだ寝ぼけ半分の紅い口唇を塞いだ。―ぺろ、と隙間から舌を差し入れて相手のそれもぺろりと舐めてやる。こうしているとねこみたいだなぁ、とかぼんやり思った。


「おまえさぁ、いっつも甘いよな…口唇とか舌とか、他のトコも…」

「いちごはいっつもそーゆーことゆうけど、いっつも恋次にもおんなじこと言ってるし騙されないんだから」

「そぉだっけ…。しょーがねえだろ、好きなんだから…」

 指を絡めて白い首筋にもキスしたら相手はちょっとびくんとした。


「…そーゆぅの、気のせいっていうんだよ。俺といちごは色以外―あ、この傷もか。とにかくそこ以外まったくおんなじで、どこも違わないはずなんだから」

 虚は左手の傷を突き出して、呆れた顔をした。
 出されたものを律儀にぺろりと舐めてから―またちゅ、とキスを落とす。


「この傷さ、消してやりたいんだけど」

「…それは前も聞いた。」

「でもさ、そう思う反面―おまえがホントに俺のものである証拠っていうか…そういう風に感じることもあるって言ったら怒る?」

「―別に。いちごのために切ったから、むしろある意味そうなのかも。でもやったのは俺だし、いちごはそんな気にすることないっていっつも言ってるのに」

 ―それより、と真面目な顔で虚は言った。


「いちご、そこまで俺に執着してるの?こんな傷なくても俺はいちごが好きなのに。―その逆は知らないけど。」

「どう見てもしてるだろ…。まだ判んねーのか?つか俺もこんなの無くても、最初からおまえが好きだってこないだも言っただろ。こんなに抱き締めても伝わらないなんて悲しいぜ」


 だって、と虚は笑った。

「俺人間のことあんまり判んなくて。―もちろん、死神もそうだけど」

 ―そういう問題ではない気がする、と思った。


「こんなにキスして触れて、―あれだけおまえのナカに入っても判らない?」

「うん」

 虚はきっぱり言ってふわりと笑った。…とても自分だとは思えない、可憐で儚げで―他の誰にも見せたくない、永遠に独占していたい笑顔だった。


「いーの、わかんなくても…いちごのそばにいられればそれで」

 そんなことを言いながら華奢な腕をくるりと自分に巻いて、本当にねこか何かが甘えるみたいに丸くなって自分の腕の中に納まった。
 お互い素っ裸だから当然だけれど、体温が直に伝わって暖かい。

「勿体ねーな…こんなに好きなのに」

「そーでもねぇよ、片想いみたいで楽しいし。俺がいちごをアイしてればいいよ」

 こんだけやっておいてなにが片想いだよ、とか思わず言いたくなるけれど。―だいたい、片想いだと思い込んで手首まで切ったのは誰だったか。
 口に出すかわりにぐいと抱き寄せて、ぺろりと口唇を舐めながら囁いてやる。


「相変わらず勝手なやつだな…。でもおまえが何て言っても―俺はおまえが好きなんだ、ずっと…」

「―いちごのウソツキ」

 虚はちょっと笑って、いつも通りの返事をした。
 それでも好き、と告げるたびにキミがちょっと嬉しそうにふわりと笑うから。―多少なりとも進歩したと思うのは傲慢だろうか。
 この腕の中でキミがそんな風に笑ってくれるなら―ほかのことは全部どうでもいいと本気で思っている。






 ―ほんとうはあいしてる。ずっとずっと―‥初めて会ったときから。











↓言うまでもなく、あとがき反転↓(読まry)
落ち着いてサリンさん!!…と言いたいよね。(他人事)
14のEROんところだけ引っこ抜いた…はずだったが、相変わらず果てしない矛盾っぷり\(^o^)/
よいこは読み比べたりするんじゃないよ!!(おま…)
読み比べたやつは殴る( #゚д゚)=○)゚Д)^^^^^^゚(えええええΣ(´∀` ))
つーかなんだこのERO\(^o^)/(まったくすぎ…)
なんかEROの描写がもはやそこはかとなくおんなの…いやなんでもない。俺は何も言ってない。(…)
あーでも黒崎さんや白い子なら女体化もありかも…(マテ)俺は女体だいすきだからな!!(開き直り)
阿散井さんの女体化は恐ろしすぎて考えたくもありません。(ヒデエ)
あと、言うまでもない気もしますがサリンさんは乳首がだいすきです。(きっぱ)
更にこれも言っておくが、俺は
ただ甘ったるいだけのエロが好きだ。(きっぱ)(…)他のものは書かん。(キッパリ)(…)
それにしても私はなんて夢見がちな女なんだ\(^o^)/(笑えん)
おまいはちゃんと25巻(…だったと思う)を読んだのかと問いたいwwww
読んだよ!!!
100回くらいな!!!(※本当)(読みすぎ)

てかこれもよっぽどうpするのはよそうと思ったんだけど\(^o^)/(10000000回目)
そう言いながら毎回結局上げてる自分って…なんなの…_| ̄|○(知らん)
駄菓子菓子脳内妄想をカタチにしたいという欲求に抗えず…_| ̄|○(ガクッ)
しかも…いざ書いてしまうと…もったいなくて…(…)
なんか、平和的じゃないカプをひたすら平和的に書くという点に於いてはほんとに変わらないな、私…(虚ろ)
(世間と)テイスト違いもいつものことだが…毎回毎回いっそかわいそう…(オノレが)

なんか色々言い訳をしたいのだが…もうむりというか…(虚ろ)
とりあえず、黒崎さんはカカイルのカカシみたいなこんな駄目っぽい攻ではない…_| ̄|○(ガクッ)(おまえカカシにあやまれよ)
あと、作中で黒崎さんが俺はこんなんじゃない!!!っていっぱい言ってるけど、それは黒崎さんの勘違いだということだけここに記しておきます。
あのこも受けたら白い子といっしょみたいになるんです。
(このシリーズでの)黒崎さんは受けたことないからわかんないだけです。(きっぱ)(そんなことを言い切られても…)

…まぁ、POEM書き放題という点では字書きで良かったと思います。(言いたいことはそれだけか)
もういいよ、ポエムに生きるよ私は。(むしろそれは前からだろ)
タイトルがあんまりだとか知らぬ!!!!(゚Д゚)クワッ
【愛玩】(サ行変格)‐大切にしてかわいがること。(@Excelのリサーチ機能)
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