act04


 白い虚はまだ信用出来なそうに大きな瞳で自分を見上げている。
 ―でもその場しのぎで言っているわけじゃなくて本当に、こんなかわいいこからピッコ●大魔王が生まれるわけがないと本気で思った。
 その心も容姿も―本当に妖精か何かみたいに無垢できれいなのに、自分のことを悪魔の化身みたいに思っているなんて勿体ないといつも思うのだが…まぁ、実際に子供が生まれたらこの子も少しは納得するだろう、と思ってそれ以上は言わないことにした。
 少しは自分が花のように愛らしいことを自覚してもらわないと―こちらはこんなにも長く付き合っているというのに気が気ではないのだ。


「…」

 それにしてもちいさなカラダだ。全てのパーツが女の子仕様になって華奢で小さく―でも目は大きくなって見事な銀色の睫毛もちょっと長くなっているし、口唇も小さな少女のように赤い。元々、自分とこの子は同じ体型のはずなのに昔から妙にちいさく思えたりしたものだけれど―本当に小さくなってしまった。
 胸も控えめに膨らんでいる(ような気がする)程度だけれど、とにかくとてもかわいい。自分はずっとこの子のことを大好きで、外見とか性別とかそんなことを気にしたことは一度もないけれど(だいたい、男の姿の時から十二分にかわいかった)―それでもいてもたってもいられないくらいのレベルでかわいかった。
 ―それでも、こんなにちいさなこのカラダにはもう新しい命が宿っているのだ。


「…言いたいことはそれだけ?」
「…」

 虚は黙って頷いた。


「じゃあ、もっと触ってもいい?」
「…」

 また何も言わずに白い虚は黙って目を伏せたけれど―こういう時は、つまり勝手にすればと言いたいのだ。さすがにもうこの子の言いたいことはだいたいわかるようになった。


「とはいえ、妊娠中だからなぁ…」
「…?関係あるの?」
「一応さっき調べたんだよ、ホラ。」

 虚の手を引いてPCの前まで行くと、インターネットで調べた妊娠中の性行為の特集が組んであるページを見せた。


「何見てんのかと思えばそんなの見てたのかよ…」
「だって、大事なことだろ?」
「そもそも俺、そのへん人間と同じ考え方でいいの?」
「わかんねーけど。浦原さんもあんまり激しくするなって言ってたんだろ?」
「…うん。でもまぁ、いちごのえっちはねちっこいだけでそんなに激しいってわけじゃないっつーか…」
「失礼だな」
「不満?じゃあ『ヤサシイけどしつこい』にする。」
「どっちでもいいよ、まぁとにかくおまえもいちおう読めよ」
「えー‥」

 虚はとても嫌そうな声を出した。

「ホラ、ここ」

 モニタの文字を指差して、声に出して読み上げる。


「『妊娠中は挿入が深くなりすぎないこと』って書いてあるだろ?」
「!?」

 虚はとても驚いた―というかギョッとしたようで目を見開いた。

「…深く入れないエッチってどんななの?中途半端に入れるの?」
「そりゃあ、そんなに深く入れなくても繋がってることには変わりないしイけなくもないだろ。つまりは、子宮を刺激するなってことだろ?」
「でもそれじゃあなんかエッチしてる意味ない気がする…」

 随分とかわいいことを言ってくれるので、抱き寄せて額にキスをした。


「それはわかるけど…。でも俺はこうやって抱き締めてるだけでもしあわせだよ」
「その割にはいちごエッチばっかりするじゃん」
「だって、おまえがかわいすぎるんだもん」
「…」

 メチャクチャなことを言うなと言いたいのだろう、虚は呆れたみたいに眉を顰めたけれど―そんな仕草ですらかわいくてたまらなくて、抱き締めたまま口唇を重ねた。
 考えてみたら―本当に今朝からろくにこの子に触れていないし、そんな筈もないのにまともにキスしたのも久しぶりのようにすら思えた。(昨日は三人だったせいもあるけれど)
 エッチばかりすると言われたけれど、確かにいつでも欲しくてたまらないのは事実だなぁとぼんやり思った。

「はっ…」

 合間に漏れる甘い声に簡単に理性を奪われそうになる。
 こんな小さなカラダを、自分が欲のままに抱いたりしたら壊すのではないかと―今まで何度も思ったけれど、今回ばかりは本当に壊してしまうような気がして少し怖い。


「おまえに負担かかんないように、いちばん上等なベッドがあるてっぺんの部屋行こうか?柔らかさは庭のと似たようなもんだけど広さはあそこがいちばんだし、余裕あるだろ」
「…どこでもいいよ」

 少々投げやりな返事を聞いてから手を引いてエレベーターに向かう。いつもなら抱いて瞬歩で駆け上がるのだがなんだか少しの無理もさせたらいけないような気がしたから。エレベーターの存在は認識していたが、殆ど初めて使ったくらいの勢いだ。

「気軽に抱えなくなったね、ほんとに気ィ使ってるんだ〜。まぁ俺はこっちの方がいいけど」

 抱っこがいつまで経っても気に入らないようで、虚はそんなことを言った。手を繋ぐのは好きらしく、絡めた華奢な指がきゅっと力を入れてくるところまでかわいい。

「だって俺は男だから、お嫁さんを大事にすることしか出来ねぇもん」
「…いつ結婚したっけ」
「おまえだってさっきお嫁さんって自分で言っただろ」
「…さっきはちょっと動揺してたから。でもいちごに会ったらだいぶ落ち着いたよ」
「ホント?」
「…ホントだよ。」

 こうやってこの子がだんだん、自分を頼ってくれるようになったことがとても嬉しいと思う。そっと繋いだ指先を引き寄せて爪にちゅ、とキスをした。


 部屋に着いたのでとりあえずベッドに座ったら、虚がいきなり服を脱ごうとしたので慌てて腕を掴んだ。

「ちょ…いきなり脱ぐなよ、もったいない!」
「何だよ、やっぱり女がいいの?」
「そういう意味じゃねぇよ!!男の時は男でいいの!!!」
「…ふーん」
「せめて俺に脱がせて!」
「…」

 白い虚をベッドにそうっと寝かせると、死覇装の黒い帯に手を掛けてするすると解く。そうしてゆっくり前を開いてみると、着物の隙間から透き通るような白い肌が顔を覗かせて―ちいさな胸を覆う真っ白なブラが見えた。

「やっぱ精神世界だけあって下着まで自動装着なんだな」
「…ほんとだ、気付かなかった。ほんと、井上が言った通りすぐ慣れるもんなんだな」
「これ、ルキアと井上が買ってきてくれたヤツ?」
「たぶんそうだと思う。白かったような記憶が…(うろ覚え)」

 今日の朝、しっかり全裸のところを見たはずなのだが―やはり下着姿は相当そそられるものがあると思った。
 丁寧に見える部分にキスを落としてゆく。昨夜愛した痕をなぞるように愛撫すると虚はぴくんと反応した。


「―おまえはほんとにきれいだな。きっと、おまえ自体がきれいなんだろうな…」
「何恥ずかしいこと言ってんだよ…」
「きっとそうだよ。おまえはきれいなもののかたまりだから」
「っ―」

 何か言い返そうとした虚の口唇を塞いでしまう。こういうことを言うと全力で否定するのはわかっているから。
 深く口付けながらブラジャーの後ろのホックを外して上にずらすと、小ぶりな胸が姿を現した。桃色のこれまた小さな突起もかわいらしい。―これだけですごく興奮した。

「…ちっちゃくてかわいい胸だね」
「うるさいな…ほんと、どうせ女になるんだったら胸くらいでかくてもいいのに」
「そんなことねーよ、おまえはこのくらいちっちゃい方がなんか納得する。カラダちっちゃいのも納得するっていうか…まぁ、おまえならなんでもいいんだけどな」

 小さな突起にちゅうと吸い付くと虚はひゃんと声を上げた。

「…感じるところは変わってないな」
「―!」
「ちっちゃいけど柔らかくて、ほんとかわいい」
「柔らかくてかわいいとか意味わかんない…」
「いいんだよ、かわいいから。」

 自分でも我ながらくどいと思うくらいかわいいと言っているので、さすがにもう言い返す気力も失せたらしい。


「今日は…っていうか生まれるまで、ちゃんと入れられるかわかんねーけど…。ちゃんとイかせて、いっぱい気持ちよくしてやるからな」
「いちご、意外と奉仕するのが好きなの?俺もするよ」

 虚はまじめな顔で言った。―随分、積極的になってくれたものだと嬉しいのだけれど。

「いつもならお願いするけど、ほんとおまえは無理するなよ」

 ―そこまで言って、そういえば…と気付いた。


「そもそもそれ以前に…女のカラダなんだから入れるとこが違うな…」

 白い虚はいまごろなに、という顔で自分を見た。





090915UP


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