act01 なんか重い、と思って目が覚めた。 いつも通り惰眠を貪った後のぼんやりとした気持ちのいい目覚めではあったのだけれど―自分に巻かれたふたり分の腕で、そういえば昨日は久しぶりに3人集まったからミョーに盛り上がったんだったっけ、ということを思い出した。 「…いちご、おはよ」 なんとなく目が合った目の前の一護に挨拶したら、一護は妙な顔をした。 「あぁおはよ…って、おまえ…」 一護はキツネにでも摘まれたようなポカンとした顔で自分を見ている。 「なに?」 「…えと…その、女になってんぞ?」 「はぁぁぁ?」 いきなり何だよと思わず変な声を上げたら、いつの間に起きていたのか―恋次が後ろから抱きついてきて、カラダをぐるりと回転させられた。 「ホントだ!一護かわいい…v」 「一護じゃねーってば!バカ恋次!」 「本当だって。ホラ…」 一護は恋次からひょいと自分を奪って抱き上げると、すたすたと部屋に掛かっていた姿見の前まで連れて行った。 すとんと下ろされると、当然自分は素っ裸なわけだが―‥一護と全く同じはずだった身長が縮んでいるのがあまりに衝撃的でそんなことはあまり気にならなかった。 「えぇぇぇ??なんで??」 当然ついているはずのものもないのだが、それにしたってつるつるぺたんの凹凸のないカラダだ。女の子だと言われてもこれが???となってしまう。 とりあえず霊力の具合は変わっていないようなので安心したけれど。 「…?でも、おっぱいない…」 「ああ、そういうのはな、貧乳つーんだよ」 「心配すんな、一護は貧乳でもかわいいよv」 「だから一護って言うなって!!」 とりあえず、と一護は言った。 「あっちで浦原さんに診てもらうか…」 「えー??ヤだー」 「だってなんかあったら困るだろ?」 相変わらずの心配症で、一護は自分の顔を覗きこんで真顔で言った。 「…なんもないと思うけど。まぁ俺もこんなカラダ嫌だし、わかったよ」 「恋次、向こうに出たら悪いけど浦原商店連れてってやってくれるか?」 「わかった、任せとけ!」 「ほら、じゃあちょっと行って来い。俺はここで留守番してるから」 「えぇ〜もう??」 「早い方がいいだろ。朝っぱらでも浦原さん叩き起こしてかまわねぇから」 一護はそんな勝手なことを言うと、ホラ早く!!と自分と恋次を追い出した。 * 「…」 気がつくと現実世界の一護の部屋のベッドに恋次とふたりで寝転がっていた。 「ったく、ほんとに一護はおまえのことになると見境ないな」 「めんどくさい…」 「そう言うなよ。あいつはおまえを心配してるんだから」 こちらに出るというのは一護の霊体がそのまま自分に成り代わってしまったようなもので、ベッドのそばには一護の抜け殻が転がっている。 こっちに出たってどうせふたり同時には出れないのだからと一護は言うけれど、こうして抜け殻はあるわけだから自分だけはそれなりに楽しい。一護はそんなの人形と変わんねーだろとイヤがるけれどやっぱり触ってしまう。 「わーい、一護のからだv」 「おまえさー、動かない一護にだったら自分から触れるんだなぁ」 「…そう言えばそうだ。」 「…」 とりあえずいくら霊体だからって素っ裸なのは…と恋次はクローゼットを漁った。この家はルキアがたびたび使うから、ひととおりの洋服は揃っている。 「服はあったけど…。下着どうすっかなぁ…ブラはともかくとして…。一護、ノーパンでもいい?」 「…死んでもイヤ。」 「だよなぁ…。コンビニに売ってるとは思うけど…俺が買うのも…」 恋次は困って携帯電話を取り出した。誰に頼んでいるのか、手短に状況を説明している。―まぁおそらく相手はルキアか誰かだろう。 予想は的中したらしく、電話をしてものの10分もしないうちにルキアと織姫がやってきた。 「恋次くん、下着買って来たよ!」 「おぉ、サンキュー!!」 「…お主、ほんとに縮んだな」 ルキアはコンビニの袋を自分に手渡しながらしみじみと言った。 「う、うるさいな!!」 「でもかわいいよ、白ちゃん。もうすごいかわいい彼女ってかんじになってるよ」 「どんなかんじだよ!」 コンビニの袋を開けるとシンプルなパンツが入っていたのでとりあえずそれは履いた…のだが。(当然、みんなの前で…) 「…オイ、ブラ(?…だよな、これ)も入ってんだけど。こんな貧乳に要らねーだろ?」 「お主、これから浦原に診てもらうのだろう?ブラくらいしてないと何をされるか…」 「そっ…それもそうだ!!一護ちゃんとつけとけ!(真っ青)」 「そう言われても…付け方わかんねーよ」 じゃああたしが付けてあげるよ、と織姫はAカップブラジャーのパッケージを豪快に破いた。 「ほら白ちゃん、ここ腕通して?そうそう、それで後ろこうやって留めるだけだから。難しかったら、今度前ホックのやつ買いに行こ?」 「うん…つか、なんかこれでもブカブカなんだけど」 「それが貧乳のステータスだ!気にするな!!」 「なんか気持ち悪い…」 「すぐ慣れるよv」 じゃああとは服だな、と恋次はルキアのワンピースを目の前に広げてみせた。 「別に、女のカラダだからって女物着る必要なくね?」 「何言ってんだよ、せっかくなんだから…」 「なにがせっかくだよ」 「まぁそう言うな。それとも私の服が着れんのか?」 「…」 「そうそう、白ちゃんきっと似合うから着てみなよ」 ―多勢に無勢というか、これだから現世はイヤだ。 しぶしぶワンピースに袖を通す。着心地は悪くないけれど、こんなの一護の前で着たらまた露出がうんたらとか色々言われるんだろうなぁとぼんやり思った。 「すごーい、朽木さんの服がぴったりだねぇ」 「そうだな。なかなかかわいいぞ」 「あー‥じゃあ早く行こうぜ、恋次」 「これってデートだよなぁ…畜生義骸持ってくれば良かった」 「恋次の義骸があったって、俺のはそこの一護のカラダしかねーだろ。ばーか」 「ハッ…そういえばそうだ…!」 「一護のでよければ入ってやろーか?」 「ば、ばか!せっかく女の子なのにだいなしだろ!!!」 「…。」 まだ歓声を上げている女性陣を尻目に、恋次をぐいぐいと引っ張って窓から家の外に出ると恋次は不満げな声を上げた。 「えー、せっかくだから手ぇ繋いで歩いて行こうぜ〜?」 「瞬歩でいいだろ」 「もったいない!!」 「…もうなんでもいいから、早く行こうぜ」 「瞬歩なんだったら、抱っこするけど」 「…。わかったよ、歩くから」 地面に降りてから靴がないなぁと思ったけれど、そういえば自分は浮けるのだから何も地面に足などつけなくても恋次の腕に掴まってさえいればいいのだと気付いて、恋次の腕に自分のそれを絡めた。 「ほらしっかり歩けよ。」 「ちょ…しあわせすぎる…v」 「馬鹿なこと言ってねーで、とっとと歩けって」 そうしてようやく(自分は何もしていないが)浦原商店の前まで着いた。 |
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