Sun&Moon
「―覚悟、したのか?」


 何故だかいつも悟ったように微笑う、一護の笑顔がとてもとても―泣きたくなるほど好きだった。もちろん今だって。


 静かに頷いた恋次の髪が強い風に靡いて、彼岸花みたいに赤い曲線を描く。花火みたいだ、と一護は思った。


「…そか。じゃあ、来いよ」


 窓を開けて差し出された手を素直に取ると、触れた一護の温もりに安心した。
 ‥一護の手。手だけじゃない、その瞳も口唇も、そのカラダのずっとずっと奥まで―彼を全て奪い尽くすために今日ここへ来た。







 ―窓の鍵を開けておくからと。帰り際に言われた。
 一護が自分の世界に帰る前に。
 規律を破って、自分と結ばれる覚悟があるなら来いと―彼はそう言った。


 こんなに誰かを好きになったのは生まれて初めてなのに。―相手は生きている人間だった。
 自分たちは死神なんて大層な名前がついてはいるがとどのつまりただの魂魄体で、その名の通り生きながら死んでいるようなものだ。自分たちに命はない―あってないようなものだ。
 限られた時間だからこそ美しく輝く―そんな生気に満ちたあの世界を守るためのただの駒。気の遠くなる悠久の時の中で、ただ煌めく命を―美しい生きモノたちを…見守っているだけにすぎない。
 尸魂界にあるものはみんなみんな―向こうの世界の出来の悪い模倣物。材料なんか、自分たちですらもみんな同じもの。立場が違うどころの話じゃない。
 ―それなのに、相手はこの世界の中で誰よりも強くて誰よりも気高い魂を持つ生身の人間だったのだ。
 何度か剣を交わして―ちょっと斬られただけで心までバッサリ斬られてしまったみたいに。恋次は彼に―黒崎一護に、夢中になってしまった。

 ―だから。
 本当は見ているだけでも良かった。何があっても、見ているだけのつもりだった。
 ほんの少しだけでも彼の行く道の手助けが出来たらと。自分は彼に比べたらたいして強くもないしあんなにも光輝く強い意志なんて持ち合わせていないけれど、そばにいれば盾にくらいはなれるつもりだったから。
 そうして、時が経ってもう共に戦えなくなったとしても、彼が誰かと恋をして、家庭を持って―幸せに生きていく姿を遠くから見ているだけで満足だと思っていたのに。





『俺ん家―判る?』

『…たぶん』


 あの丘で、小さな声で返事をしたのを覚えている。今日みたいに風が強くて、でも透き通るように天気は良くて―‥彼らが現世へ帰ったあの日。


『じゃあ―窓の鍵開けとくから抱きに来いよな』


 本当はこの時、ばっさりと酷い言葉で切り捨ててでも突き放すべきだったのかも知れない。そのくらい、幾ら恋次でも判ってはいた。


『…俺、恋次が好きだ』


 でも夢のように告げられたその言葉はあまりにも甘すぎて、突き放すことなんて到底出来るはずも無かった。
 生涯見ているだけと決めた覚悟なんか、一護も自分が好きで―この自分が彼を手に入れることが出来るという甘い誘惑の前ではまるで最初っから無かったものみたいに意味を為さなかった。


『…じゃあな、待ってる。テメーに俺と恋をする覚悟があるならの話だけど』


 ―この時も一護は悟ったみたいに笑っていた。







「意外だな、恋次が規律を破るなんて」

 窓を閉めながら一護が言った。


「おまえ意外とマジメだからさ…バレたら尸魂界を敵に回すようなマネ、しないと思ってた」

 呟くような小さな声は少しだけ震えていて、恋次はこの酷く年下の少年が本当は不安だったのだとようやく気付いた。


「一護…!!」

 耐えられなくなって、その細い腕を手繰り寄せて抱き締めた。
 思っていたよりずっと細くて女の子みたいに頼りないそのカラダは力を入れたら折れてしまいそうでくらくらした。
 こんなことならもっと早く、好きだと言えば良かった。自分がいちばん大切なのは尸魂界でも護廷十三隊でも―そんなものなんかじゃなくて一護なんだって、ちゃんと伝えれば良かった。


「俺もおまえが好きだ…一護…!!」

「そんなこととっくの昔に判ってんだよ!!遅ぇよ!!!」

 一護は初めて聞く痛々しい声を上げて恋次の背中に腕を回した。


「だって、護りたいのは尸魂界の規律なんかじゃなくておまえだったんだ…。死神の俺なんかとこうなったら…おまえが幸せになれねーと思ったから…」

「それじゃルキアの時と同じじゃねーか!!!そんな言い訳聞きたくねーんだよ、恋次のバカ!」

 泣きそうな一護の声を聞いていると本当にもう我慢出来なくなって、その桜色の口唇に噛み付くみたいに口付けながらそのまま側にあったベッドに押し倒した。
 今まで心の奥底に封印して厳重に鍵を架けて仕舞っておいた欲望が破裂するみたいに飛び出して―もうおさまりそうにもない。


「俺は―‥ずっとてめーをこうしたかったんだ…一護…」

「…最初からそう言えよ」

 一護は潤んだ瞳で不満そうに言ったけれど―それでも幸せそうに微笑んだ。























 ベッドの脇の小さな窓から月が見えている。
 シーツに包まってその腕の中に自分よりひと回り小さい一護を抱きしめながら、恋次はぼんやりとその月を眺めていた。
 ちょうど今夜は半月であるそれは一護の斬魄刀を思わせた。
 あの大きな刀を操るこの腕はこんなに細くて頼りなかったのかと―絡め合っていたその細い指先に思わず口付けると一護はくすぐったそうに笑った。


「…大丈夫か?悪い、無理させて…」

「馬鹿言うな。これでもおまえよりは頑丈だよ、バカ恋次」

「…あ、そ」

 そうは言うけれど、これが一護の身体にかなりの負担を強いる行為だということは判っている。そもそも、本来男同士でやるべきことではない。
 白い肌のあちこちに散らばった所有の印が痛々しいくらいで、付けた張本人である恋次の心に刺さる。


「やっぱり俺、後悔しそう…」

「なんだよ、覚悟して来たんじゃなかったのかよ」

 一護はむっとして口唇を尖らせた。


「覚悟だけじゃどうにもならないこともあるだろーが。こうなった以上もういつおまえがルキアみたいに処刑とかいう話になってもおかしくな…」

「…てめー、つまりビビリなんだよな。てかその場合処刑されるのは俺じゃなくてどっちかってゆーとおまえの方じゃね?」

「なんとでも言え」


 恋次は腕の中の一護の耳元に口唇を寄せて、言い聞かせるみたいに呟いた。


「‥一護。おまえは意志が強いし実際俺らの誰よりも強いけど―でも、何でもかんでもひとりで背負おうとすんなよな」

「…」

「俺も今はおまえに比べたら全然ショボいしおまえの壁くらいにしかなれないけどよ…でももっと強くなって―‥絶対おまえを護れるようになるから…だからあんまりひとりで無茶するんじゃねえ」

「恋次…」

「せめて俺が強くなるまで待ってから無茶してくれ…今はほんとに、壁にしかなってやれない」

 きつく抱き締めると一護は嬉しそうに微笑った。


「…恋次さ、やっさしーよな。さっきもきっとすげー気ィ使って優しくシテくれたんだろ?」

「…」

「でもさ、俺あんまり気にしないんだ。おまえが強いとか弱いとか…壁でもなんでも、おまえがそばにいてくれたら何でもいい」

「一護…」

「おまえがそばにいてくれたら―‥それだけで俺は強くなれるから…」


 長い人生の中でこんなにも残酷で―こんなにも甘美な殺し文句を吐かれたことは無い。
 とりあえず一護が自分の提案を受け入れる気はまったくないということだけは痛いくらいに判って恋次は軽く絶望したけれど、一護の甘い言葉はそれ以上に幸福な力も持ち合わせていた。


「あーそうですか。じゃあ俺がおまえの盾になって死んでも泣くんじゃねーぞ!!」

「いや、泣く」

「ワガママ言うなよ…」

 思いっきり顔を顰めた恋次を見て一護はケラケラ笑った。


「だから泣かないで済むように俺がおまえを護るから心配すんなよ」

「俺の立場も少しは考えてくれ…情けなすぎる…」

「考えてるよ」

 一護はいつもの真っ直ぐな瞳できっぱりと言った。


「こーなった以上おまえは責任持って、俺が死んでそっちに行くまで―死んでも待ってろ」

「!」

「多分80年くらいはかかるだろーから…それまで絶対死ぬな」

「一、護…」

「おまえの責任は俺を護ることじゃなくて―俺が行くまで生き延びることだぜ、恋次」

 流石一護だ、というくらい堂々とそう言うものだから、恋次は操られたみたいにカクカクと頷くことしか出来なかった。


「…誰も嫁に貰ってくれとは言わないからよ。それだけ誓って??俺を待ってるって…」

 そう言って一護は頬を染めた。
 こんな時だけ目を反らすその仕種が可愛くて思いっきり抱きしめたら、一護はびっくりしたようでびくりと反応した。


「いや、おまえはもう俺の嫁だ!!今決めた!!!」

「…はぁ??」

「判った、死んでもおまえを待ってて嫁にする!!!卑怯だとか負け犬だとか罵られても己の命を護ることだけ考えるぜ!!!」

「…。(それもどうかと…)」

「金貯めてもっと広い家買っとくな。ふたりで住めるくらい。―あともちろん、腕も上げとく。朽木隊長を1000回倒せるくらい!」

「…。(無理では…)」

「俺がおまえのナカに侵入った瞬間におまえは俺の嫁になったんだ。阿散井一護って名乗ってもいいぜ」

「ダッサ…」

「人の苗字ダサいとか言うな!!」


 ―不思議だと恋次は思った。いつでも一護の言葉は魔法のように希望に満ちている。自分だけじゃない、他の誰であっても立ち向かう力を―‥立ち上がる勇気を与えてくれる。自分が白哉と戦った時のように。
 太陽よりも眩しくて―月の光よりも優しい不思議な存在。



「…愛してる、一護」

 そう告げるとその瞳は幸せそうにちょっと揺れた。
 目の淵に滲んだ涙をぺろりと舐めて、その口唇を塞ぐ。深く貧ると少し甘い声が洩れた。


「もっとシて恋次…俺が壊れるくらい…」

「一護…」


 甘い甘い初めての夜は、まだまだ当分―終わりそうにもない。









***

これもなかなかひどい…w
私が恋一書いたらこんな風になるのか。勉強になった。(オイ)
あばらいさん受じゃあとても書けないような描写とか出来て超楽しかった\(^o^)/
ただあばらいさんは攻としてはヘタレすぎます先生!!!!!
受の黒崎さんに護るとか言われてるあばらいさんって一体ww\(^o^)/
むしろヘタレ攻ってのはそのくらいの方がいいのかも知れんが私はいまいちヘタレ攻モエではないのでね…w
ヘタレ受ならだいすきなんだけど!!(…)
もっとこう超かっこいい攻なあばらいさんとか書きたかったのに、どうしても(あばらいさんが鬼のヘタレという)現実から目を背けられずにこうなってしまったww(…)
おのれ私もまだまだ修業が足りない!!!
このリベンジはまた必ず!!!!(せんでいい)
黒崎さんをもっとこう!!こうね!!!!(?)
あのこはたまには護られなきゃいけない!!!(はぁ)
あー恋一のエロも書きたいなぁ〜www
こんなに楽しめるとは本当にリバ大好きっ子でよかった!!(えがお)
つか『死神が生きていた頃の記憶があることはまずない』(@浦原)…らしいですがその辺は愛の力でカヴァーしてもらおう\(^o^)/(…)
2008/03/24 (Mon) 1:07




↓なんか長くなってウザかったからあとがき反転↓(むしろ読まなくてヨシ)
かなり寝ぼけて書いた割にはまぁまぁかなwww(そうか???)
これ打ちながら何度も寝落ちそうになったよwww
とりあえず恋一が書けてたのしかった!!\(^o^)/
ほんとあばらいさんでは死んでも出来ない表現とかwwww(シツコス)
黒崎さんなら阿散井さんの腕にすっぱり…はぁはぁはぁ(夢見がちなやつ…)
すっ飛ばしたえろも機会があればwww(そういう場合大概ない)
まーでも恋一でも一恋でもワタシいっつも同じこと書いてるよね!!!自覚はあるよ!!!
あと待ってるとか言っちゃってるネタ多すぎだから!!!
あんまり自己完結はよろしくないのでなるべく避けたいんだけど、
とにかく私の頭は無理矢理にでもハッピーエンドを作り上げてしまう造りなので、
(しかも障害がてんこもりにあるカプほど何とかしてどこかに逃げ道を探そうとする習性がある)(…)
最終的には自己完結で落ち着いてしまうんだよな。。。_| ̄|○
やっぱりすぐ飽きるのはこの辺が原因(以下略)
とりあえずほんとあばらいいちごはあんまりだ…
(くろさきれんじは…そうでもないなwww)(バカなこと言ってる場合じゃないから)
ちなみにこれ最初はフツーに一恋だったんだけど、
一恋の初体験は100回くらい書いたよなぁ…(書いてない)とか思って恋一になったらしいよ(何故他人事)
しかしこの話のあばらいさんのヘタレ具合はすごい(真顔)
守るんじゃなくて生き延びるのかよ!!!それでいいのかよ!!!(おまえが書いたんだよ)
ほんともっとカッコイイ攻に書きたかったのにどうしても現実を無視できなかった!!!!\(^o^)/
おのれ…俺はもっとずっと、盲目な女だったのに!!!!!(城海の時とか
己の書きたいことを書くためなら、どんなにキャラの性格を捻じ曲げようが別人28号にしようが、
痛くも痒くもなければ良心も痛まない鋼鉄の意志
を持っていたのにww(城海の時とか
これが老いというやつですかwwww\(^o^)/
このリベンジは…必ず!!!!!!
あとえろも…必ず!!!!!(はぁ)
もーほんというと阿散井さんが超男前で黒崎さんが超乙女なやつとか本当は書きたいんです。
なんかもう死ぬってくらい甘くてしあわせなやつ…ウフフ…(こわい)
いつか絶対に書いてみせる!!!(はぁ…)
あー、一恋一ってオイシイなぁ。。。。(楽しそうだな、あんた)
つーか例の如くヒスな黒崎さんを書くのは楽しかった。(ヒス好きすぎ)
そんであばらいさんは黒崎さんの壁になれたらいっそ光栄なんじゃないかとおもうけどwww(…)

080324