08:はじめてで最後 これきりでもいいから―とか何とか言いくるめて、こちらに帰って来る前にいちどだけカラダを繋いだ―と思う。 ―と思う、というのは、あんな殆ど天国のような場所とこちらでは連絡の取りようもないわ(いや自分もこれでも代行なわけだしその気になれば取れるのかも知れないけど)あの時は夢中で何がなんだかというか―‥ともかく、まだそれから1ヵ月も経っていないのに現実味がないというか、何だか夢か幻のように感じられるからだ。 これっきり―なんて刹那的な言葉を選んだのは、いっそ同情でもいいから受け入れてくれというほど欲しかった縋るような気持ちから出たものだったのだけれど。 相手は意外と従順で、呆気なく自分の手に落ちた。 後はもう夢中で―時間ギリギリまで抱くだけ抱いて、とりあえず突然事を進めたことだけ謝って、そのまま帰って来てしまった。 ―告白すらしていないような気がする。 (ホントに俺、恋次を抱いたんだっけ…) あんなに抱いたはずなのに現実感がない。あまりにも遠すぎる距離のせいだろうか。 繋いだ指の感触とか、視界に焼きついた赤い髪とか、彼のものとは思えない甘い喘ぎ声とか―行為の端々ばっかりを欠片でも拾い集めるみたいに思い出す。 ジグゾーパズルの外枠だけを埋めているような気分だ。 でも大人しく自分のものになった恋次を思い出すと、まさか両想いだったのかな…とか変な期待が沸いて来る。ここ暫く考えていたけれど、別に同情で抱かれたって感じでもなかった気もするし、あの行為自体が夢ではないというのならその可能性も有り得ないことはないというか。 ―男同士なのにそんな都合のいいことがあるはずはない、とは思うけれど。 もちろん一度だけでいいなんて本気で思うはずもなく―いや、結ばれる前は確かにそう思っていたのだけれど―いちど抱いてしまえば、その味が忘れられなくなって―もっともっと欲しくなることくらい判っていたはずなのだ。 (こんなことなら、何か約束とか、してくれば良かったかな…。とりあえず…明日浦原さんにでも連絡取る方法、相談してみっか…) 何となく勇気が沸いて来て―そうと決まれば!!と眠る気満々で電気を消してベッドに潜り込んだ。 シンと静まり返った真っ暗な部屋の中で数分が経過して、一護が今にも夢の世界に旅立とうかという頃― ―ドン! (…?) 殆ど眠りかけていた一護の頭は、何が起きたのか良く判らない。 (何、の音だ―‥?) うつらうつらしながら暫く考えて、どうやら誰かが自分の部屋の窓ガラスを思いっきり叩いているということに気がついた。目を擦りながら起きて窓に向かう。冷静になって考えてみると、2階にある自分の部屋の窓ガラスを叩くなんて虚でなければ死神の類しかいないのだが(もっとも虚が大人しく窓を叩くとも思えないが)、眠すぎてまったく気付かなかった。 ―うっすらと開けた瞳の先に、なんだか見慣れた影が映る。 「何だよ恋次!!!!こんな時間に!!!うるせーぞ!!!!!!!」 ガラリと窓を開けて、今の今まで自分が考えていたことすらさっぱり忘れていつものノリで叫んだ瞬間―‥相手はものも言わずに部屋に飛び込んで来て、一護がすっ転ぶことも構わずにその勢いのままで抱きついて来たので―当然、一護は恋次を受け止めたまま部屋の床に尻餅をつく羽目になった。 「…ちご…!!!ッ…一護!!!!!!!!」 もの凄い力で抱きつかれて、頭がクラクラした。そのおかげでようやく眠気が吹き飛んで、ついさっきまで随分恋次に焦がれていたこととか、彼に会うのが初めて抱いた時以来だということを思い出した。 夢ではないかと一瞬疑ったが、窒息しそうな勢いで抱きつかれているところを見るとそうでもないらしい。 「ぃ…や、だ」 恋次は物凄く急いで来たのか激しく息を切らせていて、真夏なのにガタガタ震えていた。 「やっぱり嫌だ!!…あれきりなんて嫌だ!!!!」 そう言い放つと既に潤んでいたその瞳から大粒の涙が零れ落ちた。 「…落ち着けよ、何泣いてるんだよ」 どうやらあの時のことを言ってるらしいということは判ったが―‥一護はその言葉の意味よりも恋次が泣いていることにびっくりして、慌てて頬の涙を拭ってやると恋次はその手を払いのけた。 「てめーこそ何落ち着いてるんだよ!!!…やっぱり、あれっきりだけの話だったのかよ!!あんなにしたくせに!!!!」 捨てられた女のような台詞だと何となく思ったので、流石に反省した。やっぱりもっとちゃんと、言葉で伝えて来るべきだった。 だが好きで落ち着いているわけではなくこれでも今日まで色々考えたりしていたしそういう性格なのだというか、だいたいこういう場合に自分までが取り乱したのでは埒があかないというか―まぁそんなことを今の恋次に諭してもしょうがない。 とりあえず落ち着かせないと、と思って窓とカーテンを閉めると震えている身体を抱き締めた。久しぶりなので少しだけ緊張したけれど、カラダの相性がいいらしいことは最初の時に判っていたし、あるべきところに収めたという感じでむしろ自分の方が落ち着く気すらした。 そのまま前髪を掻き分けて額にちゅ、と口付けてやる。 「…おまえがそんなに取り乱してるとこ、初めて見た。ごめんな、ちゃんと言わなくてさ。」 「ちゃんと、って…」 「だから、好きだってこと。まさかお前も俺のこと好きなんて思わなかったから、一度だけでも俺のものに出来たらそれでいいつもりだったんだ…。戻ってから何となく、もしかしてお前も…って思ってさ、どうしようか考えてたところなんだけど…先越されちまったな」 「…なんで俺が好きでもない男に大人しく抱かれるって思うんだよ!!!」 「そのへんは悪かったよ。そう考えるとやっぱり最初からちょっと自惚れてたのかもしれねーな。おまえが俺を拒むはずないって…。…でも正直嬉しい。おまえ、ルキアの時ですら泣いたりしなかったのにさ」 一護は笑って恋次の目の淵に貯まった涙を舐めた。 「でも良く来れたな。まさか無断か?」 「…ちゃんと許可取ってきた。―でも下りるまで結構時間かかって。おまえの周り、女たくさんいるし…男も石田とかいるし…いても立ってもいられなくなって許可が下りて早々飛んできたから、隊長にも報告してねー」 恋次は乱暴に涙を拭くと、ちょっと小さな声で言った。女はともかく石田っていったい…と一護は思ったがとりあえず黙っていた。 「…いーよ。白哉には言わなくて」 一護は抱き締めたまま恋次の髪を撫でた。 「俺の周りの女だとか石田だとかいうよりむしろお前の周りの死神が心配だ。男女問わず。」 「…そうか??」 恋次は間の抜けた返事をしたが、やっと落ち着いたようで一護の背中に腕を回した。―石鹸のような、ふわりといい匂いがする。 「…恋次さ。許可下りて早々―とか言っといて、しっかり風呂まで入って来たんだ。周到じゃん。どーりで、何で髪おろしてるのかなーって思ってたけど…」 いい香りのする髪を梳きながら言ってやると恋次の頬が真っ赤に染まった。 「ちっ…違う!!たまたま風呂上がりに許可が…!!」 「まぁどっちでもいいけどさ、抱かれに来たってことは事実だろ?」 腕を引いてベッドに導いた。久々に重ねた口唇の感触で、だんだんあの日の記憶が甦る気がした。 恋次の細い腰とか、彩られた一面の刺青とか、泣きながらしがみつかれた両腕の強さとか―‥パズルの内側がやっと埋まってゆく感覚。 「…まぁ、そうかも」 一連のドタバタですっかり気が抜けたようで、恋次は好きにしろとばかりに一護に身体を預けた。 「ちゃんと大事にするから」 「…何それ」 「こないだ言ってなかった分。あと、何だっけ?」 「…だから」 「―愛してる」 アイシテルなんて恥ずかしい言葉を真実といえ、真顔で言えたことに自分でも驚いたけれど。恋次がちょっと幸せそうに微笑んだのでそれもいいということにする。 ―本当はあれっきりにしておいた方が、お互いのためだったということも知っているけど。 これで自分も恋次も、もう逃げられない。 でも自分の腕の中で眠る恋次を見て―それはある意味幸せなことのような気すらした。 ―もう逃げられないという、酷く甘美な約束。お互いの手が断ち切ることの出来ない鎖で繋がれたみたいに―もう離れられない。 |
少コミみたいな話だ\(^o^)/(言いたいことはそれだけか)
はじめてで最後とか語感が凄く私好みで、取っておきたい気持ちもあったんだけど、
真夜中に窓から飛び込んで来てヒスってる阿散井さんをどうしても書きたかった\(^o^)/(…)
自分男のヒステリーとか大好物ですから\(^o^)/(そういう問題では…)
友人に話したらドン引きみたいな実在のヒス男でも私はスキスキトキメキキス的に'`ァ'`ァする\(^o^)/
己の変態さに絶望\(^o^)/(お前の変態ぶりなんかどうでもいい)
つーかおまいは明らかにやりすぎだって感じもするが…なんか、ぶっちゃけ阿散井さんはこのくらい女々しい気がするよ。(真顔)
あの子はもう黒崎さんに女の子みたいに扱われてそれに普通に喜んでればいいよ。うん。
しかし何度も言うようだが毎回同じようなことを書いてる自分オワタ\(^o^)/
同じならともかく矛盾してる点とかあるし\(^o^)/キニシナイ!!(゚∀゚)
しかもうっかり壁紙が羽根とかまじうけるwww(…)
080302
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